ROE(自己資本利益率)とは?目安や計算方法・ROAの意味も解説

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ROE(自己資本利益率)とは、自己資本を元手に、企業がどれだけの利益を得たのかを数値化したものです。企業の売上やコストによって、値が変動します。

本記事では、ROEとは何かを説明した上で、混同しやすいROA・ROIとの違いについても解説します。

自己資本とは

ROEを理解するには、まず自己資本の知識が必要です。自己資本とは、基本的に株主が出資したお金を指します。

貸借対照表上では、一般的に「純資産」が自己資本です。貸借対照表の「総資本」のうち、「純資産」(自己資本)がどれくらい占めているか示した指標として、自己資本比率があります。

自己資本比率が高ければ、総資本のうち返済しなければならない負債(他人資本)の割合が小さく、一般的に健全性が高いといえます。

ROE(自己資本利益率)とは

ROEとは「Return On Equity」を略した言葉で、日本語で自己資本利益率を意味します。具体的には、自己資本を活用して、企業がどれだけ利益を得たのかを数値化したものです。

ここから、ROEの計算方法やROEからわかることを確認していきましょう。

ROE(自己資本利益率)の計算方法

ROEは、当期純利益を自己資本で割ることによって計算できます。計算式は、以下のとおりです。

・ROE(%) =当期純利益÷自己資本×100

例えば、ある会社の当期純利益が1,200万円、自己資本が1億円の場合、ROEは12%です(1,200万円÷1億円×100)。

なお、当期純利益とは対象期間において最終的に株主にもたらされた利益のことです。税金等調整前当期純利益から法人税などを引いて求められます。

ROE(自己資本利益率)からわかること

ROEを見れば、企業の経営効率を把握できます。自己資本利益率が高ければ効率よく稼げている企業、自己資本利益率が低ければ経営効率がよくない企業と判断されることが一般的です。

例えば、当期純利益4,000万円・自己資本2億円のA社(ROE:20%)と、当期純利益1,500万円・自己資本1億円のB社(ROE:15%)を比較すると、A社の方が効率的な経営をしている可能性が高いです。

ROE(自己資本利益率)の目安・平均

一般的に、10%前後がROEの目安です。ROEが10%を超えている場合、経営効率がよく投資価値のある企業の可能性があります。

なお、経済産業省の資料によると、2018年の平均ROEは9.4%(TOPIX500のうち402社)でした。2008〜2012年が1〜5%であることを踏まえると、上昇傾向にあります。しかし、米国企業(S&P500のうち366社)や欧州企業(BE500のうち352社)が10%を超えていることを踏まえると、日本企業のROEはやや低水準といえるでしょう。

参考:経済産業省「事務局説明資料 2019年11月 p.7」(PDF)

ROEとROA・ROIの違いとは

ROEと混同しやすい指標が、ROAやROIです。ROEは自己資本に関する指標であるのに対し、ROAは総資産、ROIは投下資本に関する指標である点が主な違いとして挙げられます。

ここから、それぞれの概要を確認していきましょう。

ROA(総資産利益率)とは

ROAとは「Return On Asset」を略した言葉で、日本語で総資産利益率や総資本利益率を意味します。具体的には、総資産(会社が保有する資産の合計)に対する利益を示す指標です。

ROAの目安や計算方法について、詳しく解説します。

ROAの目安

一般的に、ROAの目安は5%前後です。ROEと同様に、ROAが高ければ効率よく稼いでおり、ROAが低ければ経営効率は悪い可能性があります。

ただし、ROEが高く(低く)、ROAは低い(高い)場合がある点に注意は必要です。ROEが高いにもかかわらずROAが低ければ、大きな負債を抱えている可能性があります。また、ROEが低くROAは高ければ、借入などの資金調達手段をうまく活用できていない可能性が高いです。

ROAの計算方法

ROAは、当期純利益を総資産で割ることによって計算できます。計算式は、以下のとおりです。

・ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

ROAを計算する際の分母(総資産)には、他人資本も含まれる点がポイントです。

例えば、ある会社の当期純利益が1,200万円、総資産が2億円の場合、ROAは6%です(1,200万円÷2億円×100)。

ROI(投資収益率)とは

ROEとは「Return On Investment」を略した言葉で、日本語で投資収益率を意味します。具体的には、投下した資本に対する利益を示す指標です。

ROIの目安や計算方法について、詳しく解説します。

ROIの目安

一般的に、ROIの目安は10〜20%です。目安を上回っていれば、事業活動に投下した資本から効率よく利益を出している可能性があります。

一方、ROIが0%を下回っている(マイナス)場合は注意が必要です。ROIがマイナスの場合、資本を投資したにも関わらず利益を出していないことを意味します。

なお、投下した資本とは、対象事業の運営に関係する流動資産や固定資産などのことです。

ROIの計算方法

ROIは対象の事業から生じた利益を、その事業に対して投下した資本で割ることによって計算できます。計算式は、以下のとおりです。

・ROI(%)=(対象事業の)利益金額÷(対象事業の)投下資本×100

例えば、ある会社が特定の事業で稼いだ利益が500万円、その事業に投下した資本が8,000万円の場合、ROIは6.25%です(500万円÷8,000万円×100)。

ROEを計算する際の注意点

ROEを計算しただけでは、経営内容を判断できない点に注意しましょう。例えば、ROEが20%を超えて経営効率がよくても、借入過多で財務の健全性は低い可能性があります。投資の参考にする際は、ROE以外の指標も計算して総合的に判断しましょう。

そのほか、業種によってもROEの目安が大きく異なる点にも気をつけましょう。

ROEの数値が変動する主な要因

ROEの数値は、主に以下の要因で変動します。

・売上
・コスト
・財務レバレッジ

各要因とROEとの関係について詳しく解説します。

売上

売上の増減が、ROEの変動に関係することがあります。なぜなら、コストに変動がない状態で売上が増加(減少)すると、利益も増加(減少)するからです。利益が増えれば(減れば)分子が大きく(小さく)なるため、ROEの数値も増え(減り)ます。

そのため、新規顧客を獲得した企業や、うまく客単価を上げた企業は、ROEの数値は改善する可能性が高いです。

コスト

売上に大きな変化がない状態でコスト(費用)が増加したり減少したりすると、ROEは減少(増加)します。なぜなら、コストが増加(減少)することでROEの分子にあたる利益が減少(増加)するためです。

売上原価が増加傾向にある企業、人件費が増加している企業などはコスト増加によりROEが減少する可能性があります。

財務レバレッジ

財務レバレッジも、ROEの変動に大きく関係します。財務レバレッジとは、借入や社債などを活用することにより、総資産が自己資本の何倍になるかを示した指標です。

財務レバレッジが高まると自己資本の割合が低くなるため、ROEは上がる傾向にあります。一方、財務レバレッジが低く他人資本に依存しない企業は、自己資本の割合が高くROEは下がる可能性が高いです。

財務レバレッジは、以下の計算式で求められます。

・財務レバレッジ(倍)=総資産÷自己資本

例えば、総資産2億円で自己資本1億円のA社は、財務レバレッジが2倍です。一方、総資産2億円で自己資本5,000万円のB社は、財務レバレッジが4倍です。

どちらも当期純利益が2,000万円と仮定すると、A社のROEは20%で、B社のROEは40%と計算できます。つまり、仮に総資産・当期純利益が同じであれば、財務レバレッジが高い方がROEも高いです。

ROEとは資本を効率よく活用しているか示す指標

ROE(自己資本利益率)とは、企業が自己資本を活用してどれだけ利益を出したかを示した指標です。当期純利益を自己資本(株主が出資したお金)で割ることによって、計算できます。

一般的に、ROEが高ければ資本を効率よく活用できている可能性が高いです。ただし、投資を判断する際は、他の指標も参考にしましょう。

ROEと混同しやすい指標がROAやROIです。ROAは総資産に対する利益、ROIは投下した資本から生じた利益の割合を示しています。

ROEが変動する要因はさまざまです。企業のROEが低下していたら、売上・コスト・財務レバレッジなどに注目してみましょう。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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