標準偏差とは?求め方や平均との関係もわかりやすく解説
標準偏差とは、データの特徴を示した数値のひとつです。計算することで、対象のデータが平均値からどれくらい散らばっているかがわかります。
本記事では、標準偏差の意味や求め方、役立つ場面などについてわかりやすく解説します。
標準偏差(シグマ)は投資に関係する
標準偏差(シグマ、σ)は投資との関係が深い指標です。標準偏差を確認すれば、対象の金融商品のおよそのリスク・リターンを把握できます。
標準偏差を投資に適用した指標がボラティリティです。ボラティリティは標準偏差を使い、値動きの荒さの度合いを示しています。
一般的に、ボラティリティ(もしくは標準偏差)が大きい金融商品ほどハイリスク・ハイリターンで、ボラティリティが小さい金融商品ほどローリスク・ローリターンです。
標準偏差を求めるには平均値と分散が必要
標準偏差について理解する上で、平均値と分散の知識が欠かせません。まず、それぞれの概要を解説します。
平均値とは
平均値とは、対象のデータの数値をすべて加え、その個数で割った値です。例えば、X地域に5つの会社(A〜E社)があり、それぞれ従業員数が50人・35人・40人・33人・82人いる場合、平均値は以下のように求めます。
・(50+35+40+33+82)÷5=48
つまり、X地域の会社の従業員数の平均値(平均従業員数)は48人です。
平均値を計算すれば、データ全体の特徴を把握できます。ただし、外れ値(極端に大きい値・小さい値)がある場合に、実態と異なる数値が算出される点に注意が必要です。
なお、外れ値の影響を受けにくい値として、中央値や最頻値があります。平均値・中央値・最頻値の違いについては、以下の記事を参考にしてください。
平均値と中央値の違いとは?それぞれの求め方や最頻値の意味も紹介
分散とは
分散とは、対象データの散らばりの度合いを示す指標です。分散が小さいほどデータの数値が平均値中心に集まっており、分散が大きいほど数値が平均値から離れていることを意味します。
分散を計算するまでの流れは、以下のとおりです。
1. データの平均値を計算する
2. 偏差(へんさ)を計算する
3. 偏差を2乗する
4. 3の結果を合計する
5. 4を個数で割る
偏差とは、対象データの数値と平均値の差のことです。数値が平均値を下回っていて「マイナス」の偏差を「プラス」にするため、2乗しています。
X地域にある会社の従業員数(A社50人・B社35人・C社40人・D社33人・E社82人)で、分散を計算してみましょう。
まず、平均値は48です(前の見出し「平均値とは」参照)。続いて、偏差はそれぞれ2・(-13)・(-8)・(-15)・34と計算できます。
最後に、各偏差を2乗した数値を合計し、個数で割りましょう。
・(4+169+64+225+1,156)÷5=323.6
よって、X地域にある会社の従業員数の分散は323.6です。
標準偏差の意味
標準偏差とは、データのばらつきを示したものです。標準偏差を見れば、対象データの偏差の目安がわかるでしょう。
分散もばらつきを示した指標ですが、偏差を「2乗」してから合計しているため、元のデータと単位が異なっています。そこで「2乗」されている分散の平方根をとることで、元のデータの単位に揃えたのが標準偏差です。
例えば、X地域にある会社の従業員数の分散(323.6)の平方根をとれば、標準偏差を計算できます(約18)。平方根をとる際は、電卓で分散の数値を入力してから「ルート」ボタンを押しましょう。
なお、標準偏差が小さければ対象データのばらつきが小さく、標準偏差が大きければ対象データのばらつきが大きいことを意味します。
標準偏差の求め方
標準偏差の求め方は、以下のとおりです。
1. 平均値を計算する
2. 偏差を計算する
3. 分散を計算する
4. 分散の平方根を計算する
つまり、1〜3の手順でまず分散を求めてから、その平方根を計算すれば標準偏差を算出できます。
A社のある年度の月商データ(以下図表)を使い、標準偏差を求めてみましょう。
1. 平均値を計算する
各月の月商を合計して、個数(今回は12か月)で割ることで平均値を計算できます。
・(100+50+75+83+55+66+77+14+85+103+76+56)÷12=70
つまり、A社の平均月商(月商の平均値)は70万円です。
2. 偏差(へんさ)を計算する
偏差は各月商から平均値を計算することで求められます。例えば、1月の偏差は「30」(100ー70)2月は「ー20」(50ー70)、3月は「5」(75ー70)です。
なお、偏差の合計は必ず0になります。そのため、分散や偏差値を計算する際にはあらかじめ偏差を2乗しなければなりません。今回各月の偏差を2乗すると、「900・400・25・169・225・16・49・3136・225・1089・36・196」となります。
3. 分散を計算する
分散を計算するには、まず偏差を2乗した値を合計しなければなりません。
・900+400+25+169+225+16+49+3136+225+1089+36+196=6,466
続いて、合計をデータの個数(今回は12か月)で割ります。
・6,466÷12≒539
よって、A社のある年度の月商データの分散は「539」です。
4. 分散の平方根を計算する
分散まで求めれば、後はその平方根を計算するだけで標準偏差がわかります。電卓で、「539」と入力してから「ルート」ボタンを押してみましょう(先に「ルート」ボタンを押す電卓もあります)。
ここまでの計算で、23.21……という値が出たでしょう。つまり、A社のある年度の月商データの標準偏差はおよそ「23」です。
標準偏差が役に立つ場面
標準偏差が役に立つ主な場面は、以下のとおりです。
・標準偏差で投資リスクを判断する
・標準偏差を売上の分析に使う
・学力を示す試験等の偏差値を計算する際に標準偏差を使う
それぞれ解説します。
標準偏差で投資リスクを判断する
標準偏差を理解しておけば、投資でリスクを判断する際に役立つでしょう。証券会社によって、株式銘柄の情報を示した画面に標準偏差が記載されていることもあります。
仮にX社の標準偏差が「10」で、Y社の標準偏差が「100」であれば、Y社の方がX社よりも株価の変動が大きいです。そのため、一般的にY社の方がハイリスク・ハイリターンの可能性があると判断できます。
なお、標準偏差はあくまで過去のデータです。現時点で数値が小さい銘柄でもその後大きく変動する可能性がある点に注意しましょう。
標準偏差を売上の分析に使う
標準偏差は、ビジネスで売上を分析する際にも役立ちます。
仮に2店舗を展開する会社があるとしましょう。直近3か月の売上高は以下のとおりです。
一目見ただけでも、F店とG店の特徴は大きく異なることがわかります。しかし、平均月商はどちらも400万円です。
一方、標準偏差を計算すれば、F店が約41、G店が約460で10倍以上も差があることがわかります。標準偏差を確認することで、なぜある店は売上にばらつきが生じているのか考えるきっかけになるでしょう。
試験等の偏差値を計算する際に標準偏差を使う
試験終了後に示される偏差値も、標準偏差を使って算出されています。
一般的に、偏差値を試験等の偏差値を計算する際の式は以下のとおりです。
・(試験の点数-平均点)÷標準偏差×10+50
試験等の偏差値を計算する際、最後に50を加えている点がポイントです。試験の結果が平均点と同じ場合は、偏差値「50」になります。
標準偏差はExcelでも計算できる
標準偏差は、Excelでも計算できます。ここまで説明したように、標準偏差を求めるには平均値・偏差・分散の算出など手間がかかるため、Excelを活用して手早く処理しましょう。
算出方法は、表示したいセルに「STDEV.P()」と入力し、カッコ内にデータの範囲を入れるだけです。
なお、詳しい説明は省略しますが、データが一部しか存在しないケースでは「STDEV.S()」のコマンドを使います。
標準偏差を投資に役立てる
標準偏差とは、データのばらつきを示した値です。投資リスクの判断や、売上の分析などさまざまな場面などで役に立ちます。
手計算で標準偏差を求める場合は、まず平均値や偏差、分散を計算しなければなりません。しかし、表計算ソフトのExcelを使えば、誰でも簡単かつ素早く標準偏差を計算できます。
さっそく身近なデータの標準偏差を計算し、ビジネスや投資に活用してみましょう。
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。