独立系運用会社シンプレクス・アセット・マネジメントが市場に放つ“エンゲージメント型”ETF

【後編】シンプレクスAM「投資信託を活用していた個人投資家がETFに注目し始めている」

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東京証券取引所でアクティブETFの上場がスタートした2023年9月7日、「PBR1倍割れ解消推進ETF」「政策保有解消推進ETF」「投資家経営者一心同体ETF」という3つのアクティブETFを上場した独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメント。

前編では、シンプレクス・アセット・マネジメント マネージング・ディレクターの棟田響さんに3つのアクティブETFが誕生した経緯を伺ったが、後編では投資家の反応やこれからのETF市場について、聞いていく。

ETFならではの「透明性」はメリットであり難しさでもある


――日本で初めてのアクティブETFですが、上場や運用に際しての苦労はありましたか?

「組み入れ銘柄などを日々開示していくなかでいかにマーケットメイクできるか、という点は手探りで、一番苦労したところですね」

――公募投資信託は組み入れ銘柄や資産配分の開示が義務付けられていませんが、ETFはデイリーで内訳を開示しなければいけないという違いがありますよね。中身が見えていると、機動的な売り買いがしにくいということでしょうか?

「そうですね、手の内をさらした状態で運用していくことになるので、流動性が薄い銘柄を組み入れたり集中投資をしたりすると、マーケットメイクしづらくなるんです。これまでのETFのようなインデックス連動型の運用であれば、株式指数の構成銘柄と同じ内容ですし、どのタイミングで売買するかが見えやすいのですが、アクティブ運用となると機動性や流動性が重要になるので、いろいろな対策を考えましたね」

――アクティブETFの取引が始まったばかりではありますが、有効な対策は見えてきましたか?

「現状は、ある程度流動性のある銘柄を選定し、組み入れる銘柄数を増やすという対応をしています。マーケットメイクの方法は、証券会社と何度もディスカッションしながら進めています」

個人投資家の関心がアクティブETFに向いた理由


――前例のないアクティブETFの組成には数え切れない苦労があったと思いますが、上場から1カ月以上が経ち、「PBR1倍割れ解消推進ETF」の純資産総額はかなり伸びていますね。2023年10月末時点で、166億円を超えています。

「かつて当社が上場してきたETFと比べて、段違いに伸びている銘柄といえます。上場から1カ月で純資産総額100億円を超えたETFは初めてです。初日の売買代金を見て、目を疑いましたね。ここまでは想定していませんでした」

――それだけ注目されているということですよね。購入しているのは、個人投資家が中心ですか?

「個人投資家が中心ではありますが、意外と機関投資家も買っている印象があります。知り合いの地方銀行からも『買ったよ』という話を聞きましたね。アクティブファンドはトラックレコード(過去の運用成績)がないと機関投資家に買ってもらいにくいので、上場した時点で買っていただけたのは意外でした。

個人投資家も、思っていた流れとは違いましたね。既にETFを買っていた層は株式投資もしている方がほとんどだったので、アクティブETFも同じだろうと考えていたのですが、ふたを開けてみると、投資信託を買っていた層がアクティブETFを買ってくれているようなんです」

――なぜ、投資信託からアクティブETFへと流れているのでしょうか?

「私なりの分析ではありますが、投資信託を買っている層からすると、インデックス連動型のETFはあまり面白味を感じられなかったのかもしれません。その点、アクティブETFは運用方針に個性があるので、面白いと感じてもらえたようです。『証券会社にPBR1倍割れ解消推進ETFを紹介してもらい、初めてETFを買いました』といった声をいただいています。

投資信託のコストと比較して購入に至っているケースもあるようです。例えば、アクティブファンドの信託報酬は1.5~2%ほどなのに対し、当社のアクティブETFは0.99%。購入時手数料もアクティブファンドだと3%程度かかりますが、アクティブETFは一部のネット証券ならゼロ、窓口でも1%以下なので、コストの低さが魅力となり、個人投資家の方々に届いているといえそうです」

――新たな層にETFが届いたのは、大きな一歩といえそうですね。

「これまでまったくリーチできなかった個人投資家の皆さんにアクティブETFを使っていただけたのは、ETF市場にとっても大きな変化だと思います。いままで、ETFは分散投資の材料のひとつにしてもらえたら十分という思いで提供してきた部分がありましたが、アクティブETFの登場によって、ETF自体が投資対象となるのではないかと感じています」

個人投資家が増えることで面白さが増すであろうETF市場


――シンプレクス・アセット・マネジメントでは2009年からETFの運用を行っていますが、日本のETF市場の変化は感じていますか?

「金融機関が機関投資家としてETFを購入するケースは、今後も増えていくと感じています。そこにプラスして、これからは個人投資家もETF市場に参入してくるのではないかと、感じているところです。

過去10年くらいを振り返っても、ETF市場に大きな変化はなかったと感じているのですが、先ほども話したように投資信託を買っていた層がアクティブETFを買い始めているので、この動きがさらに進むとETF市場が大きく変わるのではないかと思います。ETFを取引する個人投資家が増えて市場が大きくなると、エッジが効いたアクティブETFを企画しやすくなるので、楽しみですね」

――既に新しいアクティブETFの構想はあったりしますか?

「具体的なアイデアはまだないので、まずはいま上場している3本のアクティブETFをしっかり運用し、存在感を高めていけたらと思っています。ただ、アクティブETFの面白さは新しいアイデアを形にしていけるところなので、他社さんの銘柄を見たり、セミナーなどで個人投資家の皆さんの生の声を聞いたりしながら、世の中が求めているものに応えられるETFをつくっていきたいという思いがあります」

――上場された3つのアクティブETFもエッジが効いていると感じるので、今後も期待しています。最後に、まだETFを買ったことがない個人投資家に向けて、メッセージをお願いします。

「投資信託は売買を申し込んだ翌日の金額で約定しますが、ETFはいまの金額で約定できますし、指値(希望する売買価格を指定する方法)での売買もできる使いやすく便利なツールです。経験がないとためらってしまうかもしれませんが、株式やETFでの投資をしたことがない方にも、ぜひ使ってほしいと思っています」

ETF市場を大きく変えるきっかけになるかもしれないアクティブETF。上場されているアクティブETFをチェックし、自分の考え方とマッチするものがあったら、投資対象として検討してみてはいかがだろうか。

(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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