ヘッジファンドとは?意味や特徴に加えて投資信託との違いを解説
ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を用いることで、市場価格の上下に左右されずに一定の利益を追求するファンドを指します。一定の資産がある富裕層を主な対象としている点が投資信託との違いです。
本記事では、ヘッジファンドとは何かを説明してから、メリットやデメリットについても紹介します。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドとは、「ヘッジ」(hedge)と「ファンド」(fund)を組み合わせた言葉です。ここから、ヘッジファンドの意味や購入方法、注意点などについて詳しく解説します。
「ヘッジ」と「ファンド」の意味
ヘッジとは、「回避する」や「逃れる」などを意味する言葉です。一般的に、投資の世界ではリスクを避ける効果のことを指します。
ファンドとは、「資金」や「基金」を意味する言葉です。投資の世界では、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめて、専門家が金融商品に対して投資・運用する商品(投資信託)のことを主に指します。
ヘッジファンドの意味
ヘッジファンドは、さまざまな取引方法を用いることにより、市場価格の上下に影響されずに、一定の利益を追求することを目的とするファンドを主に指します。投資対象は株式・債券・為替などさまざまです。
なお、20世紀中盤に米国でアルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズ氏がヘッジファンド会社を設立したことが、ヘッジファンドの始まりと一般的にいわれています。
ヘッジファンドと投資信託の違い
ヘッジファンドと投資信託の主な違いは、最低投資金額です。投資信託は商品によって数百円や数千円からでも購入できるのに対し、ヘッジファンドは一般的に数百万円から数千万円必要とされています。
また、投資対象の範囲も投資信託と異なります。投資信託の主な対象が株式や債券であるのに対し、ヘッジファンドは株式や債券に加えて様々な資産に幅広く投資します。また先物取引や信用取引など、多彩な取引手法を用います。
さらに、投資信託は不特定多数の投資家に対して勧誘する「公募」であるのに対し、ヘッジファンドは主に少数の投資家に向けた「私募」である点も違いです。
ヘッジファンドに投資する方法
ヘッジファンドに投資する流れは、主に以下の通りです。
1.投資対象の条件を考える
2.ファンドについて調べる
3.目論見書(投資家向けに交付する文書)を請求し、確認する
4.ヘッジファンドを申し込む
ヘッジファンドに投資するには、証券会社経由で購入する、プライベートバンクに投資を一任して購入する、投資助言会社のアドバイスを受けて直接購入するなどの方法があります。
ヘッジファンドに投資する際の注意点
ヘッジファンドに投資する際の注意点は、以下の通りです。
・手数料がかかる
・一定以上の資産がある富裕層が対象
それぞれ紹介します。
手数料がかかる
ヘッジファンドに投資する際に、手数料がかかる点に注意しましょう。
一般的に、ヘッジファンドにかかる主なコストは、管理報酬や成功報酬などです。そのほか、購入時の手数料や解約手数料がかかることもあります。
投資信託と比べて、コストは高くなることが一般的です。ヘッジファンドによっても異なりますが、成功報酬が利益に対して2割前後かかるケースもあるでしょう。
一定の資産がある富裕層が対象
ヘッジファンドは、基本的に一定以上の資産がある富裕層を対象にしている点にも注意が必要です。
すでに紹介した通り、ヘッジファンドは「私募」のため、限られた人しか投資・運用できません。また、最低投資金額は数百万円〜数千万円とハードルが高いです。
株式や投資信託などと異なり、資産形成のために手軽に購入できる商品ではないことを理解しておきましょう。
ヘッジファンド運用のメリット
ヘッジファンド運用のメリットは、以下の通りです。
・専門家に任せられる
・相場の下落局面でも利益を狙える可能性がある
各メリットについて、紹介します。
専門家に任せられる
専門家に任せられる点が、ヘッジファンドのメリットとして挙げられます。投資家に代わって専門家が運用するため、投資に関する知識に自信がない初心者でも始めやすいです。
また、専門家が経済・投資に関する情報を収集しているため、本業が忙しく最新のデータを集められない人や、相場をこまめにチェックできない人にも向いています。
相場の下落局面でも利益を狙える可能性がある
相場の下落局面でも、利益を狙える可能性がある点もメリットです。
ヘッジファンドは、先物取引や信用取引も行っています。先物取引も信用取引も「売り」から始められる点が、相場の下落局面にあるときでも利益を期待できる理由です。
そのほかにも、ヘッジファンドはどのような局面でも利益を出すことを追求し、さまざまな投資戦略を試みています。
ヘッジファンド運用のデメリット
ヘッジファンド運用のデメリットは、以下の通りです。
・すぐに現金化できない(流動性が低い)
・投資信託と比べて情報が少ない
・元本割れのリスクがある
それぞれ詳しく解説します。
すぐに現金化できない(流動性が低い)
すぐに現金化できない点、流動性が低い点はヘッジファンド運用のデメリットです。
一般的に、国内株式や投資信託は取引が成立してから数日後に代金決済日を迎え、現金が口座に入金されます。一方、ヘッジファンドは売買する機会の少ないファンドのため、現金化までに時間がかかるでしょう。
ヘッジファンドによって、解約時期が決まっていたり、入金までに数カ月間かかったりすることもあります。
投資信託と比べて情報が少ない
投資信託と比べて、公開される情報が少ない点もデメリットです。
投資信託の場合、運用報告書で投資対象や割合などが説明されます。運用報告書とは、投資信託の決算ごとに保有者に対して交付される書類です。
一方、ヘッジファンドは大まかな投資方針・投資戦略のみしか公開されないことがあります。そのため、具体的にどの銘柄に投資しているのか判断できないことがあるでしょう。
元本割れのリスクがある
株式や投資信託などの金融商品と同様に、元本割れのリスクがある点もヘッジファンド運用のデメリットです。たとえ専門家に任していても、市場環境や各ヘッジファンドにおけるファンドマネージャーの手腕によって、元本割れする可能性はあります。
また、ヘッジファンド自体が破綻するリスクもある点に注意しなければなりません。
ヘッジファンドの投資戦略
最後に、ヘッジファンドの投資戦略をいくつか紹介します。主な投資戦略は、以下の通りです。
・グローバル・マクロ戦略
・株式ロング・ショート戦略
・イベント・ドリブン戦略
・アービトラージ(裁定取引)戦略
各戦略の概要を紹介します。
グローバル・マクロ戦略
グローバル・マクロ戦略とは、世界をマクロな視点で分析して、広範な金融市場で投資する手法です。なお、マクロとは「大規模な」ことを指します。
個々の企業の状況ではなく、経済指標を用いて国や地域の金融市場を分析したり、政治情勢・経済イベントなどを考慮したりする点が特徴です。運用成績は、ファンドの運用者の手腕によって大きく左右されます。
株式ロング・ショート戦略
株式ロング・ショート戦略とは、割安な株式を購入して、割高な株式を信用取引などにより売却する戦略のことです。ロングは「買い」、ショートは「売り」を意味します。
株式ロング・ショート戦略では、同じ業種の銘柄を組み合わせることが一般的です。リスク軽減につながる手法とされていますが、状況によって「買い」も「売り」も損失を抱えるケースもあります。
イベント・ドリブン戦略
イベント・ドリブン戦略とは、特別な出来事に注目して投資する手法です。M&Aや経営破綻などが主に注目されます。
イベント・ドリブン戦略の代表例のひとつが、ディストレスト戦略です。ディストレスト(distressed)には、困窮したという意味があります。
ディストレスト戦略は、経営不振などを理由に割安になっている企業の株式・債券を安く購入し、業績が回復して価格が上昇した際に売却して利益を得る手法です。
アービトラージ(裁定取引)戦略
アービトラージ(裁定取引)戦略とは、同じ銘柄で取引所や市場によって価格が異なる場合に、割安な方の購入と割高な方の売却を同時に行い、割安な方が高くなった際に売却、割高な方が下落した際に買い戻す戦略のことです。そもそも、アービトラージは、値動きの関係や影響(相関性)が高い2つの商品の価格差を利用して、利益を出す手法を指します。
主なアービトラージ戦略は、割安な転換社債を購入する一方で、同じ銘柄の株式を同時に売却する転換社債アービトラージです。転換社債とは、一定の条件下で株式に転換できる権利のついた社債のことです。
ヘッジファンドとは一部の人が資産運用できるもの
ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を用いることで、市場価格の上下に左右されずに一定の利益を追求するファンドのことです。専門家に任せられる点や、相場の下落局面でも利益を狙える可能性がある点が主なメリットとして挙げられます。
しかし、ヘッジファンドは一定の資産がある富裕層向けの商品である点に注意が必要です。これから投資を検討している方は、まず株式や投資信託から始めてみてはいかがでしょう。
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。