プロが語る!資産形成のすゝめ

建設業も襲う「2024年問題」

最先端のITを駆使した「建設DX」に活路

提供元:ちばぎん証券

TAGS.


2024年の株式市場は、日経平均株価が年初から約10%上昇するなど大変好調なスタートとなりました。「デフレ経済からの完全脱却」、 「資本コストや株価を意識した経営への転換」など、今度こそ「日本が変わる」ことへの期待感が背景となっています。

QUICKが市場関係者を対象に実施した1月の株式月次調査では、日経平均株価が年内に過去最高値を更新するとの回答が5割に達したとのこと。その成否はともかく、株価の上昇は年金資産の拡大などを通じて多くの国民に恩恵をもたらすだけに、今後も堅調な相場が続くことを願いたいものです。

ただし油断は禁物。堅調な時には好材料ばかりに目が行きがちですが、懸念材料がなくなったわけではありません。堅調な時こそ懸念材料にもしっかり目を配っておくことが大切でしょう。現在、好材料と捉えられている「賃金上昇」と表裏一体の「人手不足」も市場が警戒する材料の一つです。この「人手不足」問題、今年は折に触れてクローズアップされる可能性があります。

2019年4月施行された「働き方関連法」。これにより年間の残業時間の上限は「原則360時間」、特別な事情があり労使が合意した場合でも「720時間」となりました。その際、特例で物流や建設業界などに対し5年間の猶予期間が設けられましたが、その猶予期間が4月に期限を迎えるのです。

労働時間が削減されれば、人手不足に拍車がかかり事業そのものにも支障をきたす―所謂「2024年問題」です。宅配便などで日常生活になじみが深い物流業界の動向はよく取り上げられますが、建設業界においてもその影響は非常に大きいと考えられます。

総務省の「労働力調査」によると、2022年の建設業界の就業者数は479万人で、ピークであった1997年の685万人から約3割減少しています。併せて高齢化も進み、就業者のうち55歳以上が占める割合は35.9%。全産業と比べ4.4ポイント高く、逆に29歳以下は11.7%で同4.7ポイント低くなっています。建設業界にとって人手不足は積年の課題であり、2024年問題がさらに追い打ちをかける形となっているのです。

こうした環境の下、建設各社が進めているのが「建設DX」。最先端のIT技術を駆使して人手不足を克服し、併せて建設現場での生産性・安全性の向上、コスト削減等を実現しようというものです。建設業界が今後も健全に発展していくことができるかどうか、「建設DX」への取り組みがカギを握ると言っても過言ではありません。そこでここでは「建設DX」を巡る具体的な動きをいくつか紹介したいと思います。

2021年7月、コマツ、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)、ソニー、NRIの4社は「建設DX」を支援するための新会社を立ち上げました。コマツは2015年から測量用ドローンや半自動の建機を活用して施工を効率化する「スマートコンストラクション」を展開していますが、新会社ではこれをさらに高度化。コマツがもつ建機の自動化技術にNTTコムの通信技術、ソニーの画像センサー、NRIのソリューション開発など、各社の知見、ノウハウを組み合わせ、建設現場の可視化デバイスやプラットフォーム、アプリケーションなどの開発をすすめています。

2023年7月、NTTコムと竹中工務店、清水建設は建設DXの実現に向けた協業を開始しました。建築現場において日々行なわれる工程管理、リソース(機材・労務・材料)手配、作業指示などに必要な施工管理情報を、工程表の計画から作業日報に至るまでデジタル化。これらを連携させることにより、工程と作業をつなぐ施工管理業務全体の生産性を引き上げる狙いです。ちなみに清水建設は、経済産業省と東証が選定する「DX銘柄」に建設業としては初めて3年連続(21~23年)選定されるなど、「建設DX」のトップランナーの一社とも言える存在です。

2023年10月、鹿島は全自動施工システムを本格導入した秋田県「成瀬ダム」の工事現場を公開し話題になりました。材料製造から施工までを自動化した世界初の次世代建設生産システムで、AIによってリアルタイムで作成された作業計画に基づき、建設機械が自律的に作業を行うというものです。安定した品質を維持できるとともに、少人数で遠隔管制することにより生産性が飛躍的に向上しました。人が立ち入ることができない災害復旧工事にも適用するとのことで、今後様々な現場での活用が見込まれています。「たとえば」というには少し話が飛躍しますが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とは同システムを月面での拠点建設に用いる共同研究を進めています。

華々しい都市再開発事業はもちろんのこと、自然災害が頻発する日本において避けて通れない災害復旧工事や国土強靭化事業など、その担い手は建設業です。その建設業を直撃する「人手不足」問題は市場の重大な関心事でもあります。ただ、先端技術を結集した「建設DX」で展望が開けるとすれば、日本にとって構造的な懸念材料と捉えられる「人手不足」も新たな物色の切り口になり得るのではないでしょうか。

(提供元:ちばぎん証券)

用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード