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2024年2月号「投資環境レポート」

2024年のリスクシナリオ

提供元:野村アセットマネジメント

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野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

2月の投資の視点は、「2024年のリスクシナリオ」です。

<注目点>

●2024年はインフレ率低下に伴い利下げの余地が生まれる年になろう。しかし、利下げの性格と累積利下げ幅の大きさによって投資へのインプリケーションは異なる。深刻な景気後退を回避できるメインシナリオでは、予防的利下げが想定され、累積利下げ幅は小さなものにとどまろう。

●メインシナリオから逸脱するリスクは、(1)インフレにとどまる、(2)深刻な景気後退、(3)スタグフレーション、(4)生産性革命を過小評価する、4つに大別される。

●中長期的な観点からは、リーマンショック以来の低金利と潤沢な流動性による緩和的金融環境が大きな転機を迎えていることに注意が必要だろう。

予防的利下げがメインシナリオ

本稿では筆者の2024年の米国経済を中心にメインシナリオを概観し、そこから逸脱するリスクを検討しよう。

大幅かつ急激な利上げにもかかわらず意外な堅調さを見せた米国経済は、家計の余剰キャッシュの減少に伴って利上げ効果が浸透し、減税効果の剥落なども相まって景気は減速。それにつれてインフレ率も低下し、2024年は利下げ余地が生まれよう。

しかし、利下げの性格によって累積利下げ幅の大きさと投資へのインプリケーションは異なる。米国民間部門のバランスシートを見ると、債務の伸びが抑制的であった一方、コロナ対応で政府から移転された資金が高水準の現預金の形で保有されていることが、著しい特徴である。

この膨大な現預金の存在が、昨年の急激かつ大幅な利上げにもかかわらず景気抑制効果の顕在化を遅らせた主因であり、抑制的な債務と相まって来るべき経済の調整がソフトランディングにとどまると考える理由である(図2参照)。また、中国が景気の安定化にかじを切り始めていることも世界景気が底割れするリスクを限定的にしよう。

このメインシナリオでは、急いで大幅に進める必要はない予防的利下げで十分であり、累積利下げ幅も小さなものにとどまろう。景気後退が回避され予防的利下げが行われた1995年や98年のケースでは、利下げは3回、累積利下げ幅は0.75%ポイントであった。

債券利回りの低下幅が相対的に限られる一方、深刻な景気後退が回避されため株式、クレジット、新興国債券などに投資妙味があろう。また、米金利の低下は円高要因だが、小幅な予防的利下げにとどまる限り、その程度は限られよう。

インフレにとどまるリスク

メインシナリオに対するリスクを成長率と失業率に応じた4つの経済状態の類型に基づいて考えよう(図1参照)。米国を例にとると、昨年は潜在成長率を超えた成長と目標を超えたインフレ率となり、模式図右上のインフレーション領域にあった。24年がメインシナリオであるソフトランディングなら、これが原点に近づくことになる。リスクは、4つに大別される。

第一のリスクは、景気の減速が遅れるないし再加速し、インフレ領域にとどまることである。目先はこのリスクが最も大きい。昨年秋以降は早期かつ大幅な利下げが市場に意識され、長期金利の低下、株高など金融環境が大きく緩和した。

雇用や所得が堅調さを保つ中での長期金利低下は、金利感応度の高い住宅投資や自動車などの耐久財消費を下支えする要因であり、株高は資産効果を通じた景気刺激要因だ(図3参照)。インフレ率低下が足踏みをすれば、その分利下げ開始時期は後ずれないし利上げを再開することになる。

深刻な景気後退のリスク

第二は深刻な景気後退に陥るリスクである。失業率の顕著な上昇を伴うハードランディングとなれば、大幅利下げが正当化され、債券投資が有利になる一方、株価はいったん大きな調整を余儀なくされよう。

警戒すべき深刻な景気後退への引き金は、コロナショックへの対応として発動された財政拡張と金融緩和の組み合わせがもたらした潤沢な流動性の下でレバレッジをかけた主体が、高金利と量的金融引き締めによる過剰流動性減少の下で破綻し、金融システム問題に発展することである。

こうした歪みは、家計や企業部門では目立たない一方、政府債務は著増している(図4参照)。欧州周縁国など景気悪化に脆弱な高債務国や、すでに苦境が伝えられている商業用不動産部門、低金利下で注目が集まった低流動性資産などは、金融システム内の弱い部分として注意すべきだろう。

2024年2月号「投資環境レポート」の続きは、こちらからご覧ください。

当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社の見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。

(提供元:野村アセットマネジメント)

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