「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」より
【第4回】20・30代の住宅ローン、5人に1人はペアローンを利用
提供元:三井住友信託銀行/三井住友トラスト・資産のミライ研究所
(【第3回】記事はこちら)
今回は、「令和の住宅ローンの動向」の中でも、「ペアローン」の利用状況についてお伝えします。
20代・30代の住宅ローン利用状況は5人に1人がペアローン
今回の調査結果では、住宅ローンを利用して自宅を購入した人(2,964人)のうち、全年代では単独ローン利用率が72.0%、ペアローン利用率は8.9%となっており、単独ローンが多数派であるものの、年代別に利用率をみてみると【図表1】、20代・30代でのペアローン利用は約2割を占めており、全年代での比率の2倍の水準でした。
また、当初借入額では「単独ローン<ペアローン」の構図が鮮明となっており、20代・30代では、700万から1,000万円程度ペアローンの方が高額で、単独ローンと比較すると20代で138%、30代で127%の水準となっていました。【図表2】。
【図表1】住宅ロ―ンの借入形態(単独ローン・ペアローン)
【図表2】住宅ロ―ンの当初借入額(中央値)-単独ローンとペアローンの比較
「家計における働き手」の変化がペアローンを後押し
若い世代を中心に広く定着しているペアローンですが、その背景には共働き世帯の増加や、住宅費用を夫婦で「応分に負担しようという意識」と「負担できる環境」が進んだことが考えられます。
総務省の統計データをみると【図表3】、40年前(1983年)の共働き世帯数は専業主婦世帯数の約7割でしたが、30年前(1993年)に初めて専業主婦世帯数を上回り、直近2022年では1,262万世帯と専業主婦世帯数の2.3倍に達しています。
内閣府によれば女性が職業を持つことに対する意識についての2019年の調査(*)では「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」の割合は男女ともに6割前後まで上昇してきています。(*内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査(令和元年)」)
また、総務省の統計データ(「労働力調査(基本集計)」)から2021年における女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)をみてみると、25~29歳が86.9%、30~34歳が79.4%と以前よりもM字カーブの底が浅くなってきています。こういった「世帯における働き手の意識と環境の変化」がペアローン需要を支えていると分析しています。
【図表3】専業主婦世帯数と共働き世帯数の変化(1983~2022年)
一般的に、ペアローンは「共働き世帯」で利用されますが、20年、30年といった返済期間において「共働き状態」が継続することが前提になっています。利点として、
●借入額が大きくできることで物件の選択肢が広がる
●住宅ローン控除の要件を満たした場合、それぞれの住宅ローンにおいて住宅ローン控除が適用できる
●契約が別々となることから、金利タイプ(固定・変動など)、返済方法(元利均等・元本均等など)、返済期間などを個別に選択できる
などが期待できる一方で、「子育て」や「転職」といったライフイベントなどの発生時にパートナーの収入が大きく減少した場合でもローン返済を継続できるかどうか、という点を世帯の「ライフプラン」「キャリアプラン」の中で十分に検討しておくことが望まれます。
ここまで「令和の住宅ローンの動向」を取り上げてきましたが、本シリーズ最終回は「住宅ローンの返済と資産形成は両立できるか」という疑問について取り上げてみたいと思います。
(提供元:三井住友トラスト・資産のミライ研究所)