マネ部的トレンドワード

AI活用のカギは「人がやりたいことを指示すること」

生成AIプロダクト「Graffer AI Studio」が日本企業にもたらす“生産性向上”

TAGS.

市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。今回のテーマは、「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入った「生成AI」。

生成AIと聞いて、ChatGPTをイメージする人は多いだろう。ChatGPTは、アメリカのOpenAI社が開発したAIで、利用者の質問や指示に対して文章を作成してくれるもの。チャット形式の文章生成AIは、企業の生産性を上げるカギになり得る。

ビジネスの場で活用されている生成AIサービスのひとつ「Graffer AI Solution」は、TOPPANグループやかんぽ生命、東邦ガス、近畿大学などで実際に導入されている。なぜ、生成AIが生産性を上げるのか、その理由を「Graffer AI Solution」を開発・提供しているグラファーの代表取締役・石井大地さんに聞いた。

顧客のニーズに応える機能を実装していく生成AIプロダクト

グラファーが提供している「Graffer AI Solution」は、生成AIを業務に取り入れ、実際に活用していくための3つのソリューションで構成されている。

(1)生成AIプロダクト「Graffer AI Studio」
企業や団体が、実際に業務で活用する生成AI。安全に利用できるよう、IPアドレス制限や監視ログの取得など、高いセキュリティを確保している。

(2)生成AI活用伴走支援
生成AIの活用法について悩んでいる企業に対して、課題分析やゴール設定を実施し、生成AIを活用できるように支援するサービス。

(3)生成AI研修・人材育成
企業が導入した生成AIを従業員一人ひとりが中長期的に使っていけるよう、研修や人材育成のコンテンツを提供するサービス。

画像提供/グラファー 「Graffer AI Studio」のイメージ画像。基本的な使い方はChatGPTなどと同様。

「『Graffer AI Solution』のメインとなるのは、プロダクトの『Graffer AI Studio』です。ChatGPTのようなチャット形式の生成AIですが、ただ文章を生成するだけでなく、伴走支援している企業からのニーズをもとに開発した機能を追加し、業務の効率化につながりやすい設計にしています」(石井さん・以下同)

「Graffer AI Studio」の主な機能は、次の3つ。

●チャットサービス
基本となるチャット形式の生成AI。大規模言語モデル(LLM)が複数搭載されており、OpenAI社が提供するChatGPT-3.5やChatGPT-4.0以外に、Azure GPTやClaudeなども利用できる。AIとの対話を他者に共有できる機能や、指示のフォーマットを設定できるテンプレート機能も備わっている。

●一括処理アプリケーション
複数の文章をAIに読み込ませ、一括で同じ指示を出し、一気に文章を生成できる機能。原稿の作成や文章の要約、翻訳作業などと親和性が高い。

●ナレッジベース
社内規定などの特定の文書をAIに登録することで、AIとの対話を通じて必要な情報を検索できるようになる機能。
※2024年2月現在はプレビュー版を提供中

「『Graffer AI Studio』では多様なLLMを選択できるため、業務によって、利用料の安いものでシンプルな業務に使う、画像の分析を行うために高度なモデルを使う、といったように使い分けができます。最近は日本語用のLLMや業界に特化したLLMが開発されているので、実用化された際には取り入れて、選択の幅を広げていきたいと考えています」

もうひとつ、「Graffer AI Studio」の大きな特徴といえるのが、高度なセキュリティ。IPアドレスを制限して社内だけで使えるようにしたり、従業員の利用履歴をマネージャー層が確認できたりと、安全に使える設計になっている。

「もともと当社は、自治体向けのデジタル行政サービスからスタートしました。地方自治体は新しいシステムのセキュリティに対して厳しいので、私たちも注力してきた経緯があります。今回の生成AIでも、自治体向けサービスの基盤を引き継ぐことでセキュリティのレベルを上げていますし、そこが評価され、大企業や大学などに導入していただいています。企業では社外秘の情報もたくさん扱うので、セキュリティ面は重要なポイントだと感じています」

ビジネスマン必見! 5つの「生成AI」活用事例

生成AIを業務に取り入れることで、効率化につながることはイメージできるが、どのような場面で役に立つといえるだろうか。

「生成AIチャットでやることというと、メールやプレスリリースの文面の作成が思い浮かびますが、どの企業にも共通する部分なので、すべての企業が始めたら差はつきません。重要なのは、その企業の本業にかかわる部分を生成AIで効率化することです。営業や研究開発を効率化し、これまで100人でやっていた仕事が50人でできるようになったら、かなりのインパクトがありますよね。人手不足で人材確保が難しいいま、業務の効率化は企業にとっての課題といえます」

企業がこれからの時代を生き抜くためには、AIの活用は避けて通れないといえそうだ。では、企業はどのように生成AIを活用していけばいいのだろうか。具体的な事例を聞いた。

●A社の事例「顧客対応履歴の分類」
A社では、営業部門が顧客とやり取りしたメール、ひと月2000件分の内容を人の目でチェックし、問い合わせ内容などに応じて分類し、それに基づいて対策を立てて営業効率を上げていた。2000件すべてを人が見るのはとてつもない時間がかかるが、この業務を生成AIに任せると、2000件が2分で分類できた。

「A社の事例で重要なのは、AIが分析しやすいようにメールの文面を加工するという工程を踏んだことです。問い合わせの内容に関係ない『お世話になります。』といった文章を省き、文面が長すぎる場合は一度AIに要約させたうえで分類するというステップを踏むことで、効率化につながりました。ただAIを使えばいいわけではなく、効率化するための工程を人が考えることが大切です」

●B社の事例「音声ファイルをもとに報告書を生成」
卸売業のB社では、営業担当者が販売店を回り、自社の製品の陳列方法などを分析し、報告書にまとめていた。オフィスに戻って報告書を書く時間と労力を削減するため、販売店を回る際に陳列の様子を口頭でボイスレコーダーに残し、音声ファイルをAIに読み込ませ、自動で報告書を生成するという方法が検証されている。実現すれば、報告書を書いていた数時間分の効率化に加え、音声に残すことでより正確な情報を盛り込むことができるようになる。

●自治体Cの事例「アンケート回答の分類」
一括処理アプリケーションを活用した事例。役所の利用者に行政サービスに対するアンケートに協力してもらい、その回答が肯定的なものか否定的なものか、分類する業務があった。肯定と否定に分けるために必要なプロンプト(指示や質問)をAIに与えたうえで回答を読み込ませ、一気に分類させるという検証を行ったところ、10件の回答の分類が9秒で完了した。

●D社の事例「キャッチコピーの生成」
一括処理アプリケーションを活用した事例。不動産情報を取り扱うD社では、多数の物件のキャッチコピーを人力で考えていた。キャッチコピーをつくるために必要なプロンプトをAIに与えたうえで、各物件の日当たりや階数などの情報を読み込ませ、キャッチコピーをまとめて生成する方法を実証している。

●E社の事例「社内からの問い合わせの対応」
ナレッジベースを活用した事例。E社のバックオフィス業務の大半は、従業員からの社内規定に関する問い合わせだった。効率的に対応していくため、出張申請や育休の取得方法などの社内規定文書をAIに読み込ませ、従業員用のFAQチャットを用意。従業員がチャットに質問を書き込むと、登録した社内ドキュメントから質問の内容に該当する箇所を参照できるようにした。

「ナレッジベースをうまく活用するには、2つのポイントがあります。ひとつはデータを事前に加工しておくこと。文書がPDFやスキャン画像などで保存されている場合は、AIが読み込みやすいように加工し、正確な情報を登録しなければいけません。もうひとつは、最新のデータであること。社内規定が更新されるたびにAIの登録データも更新するというオペレーションを組み、実施していかなければ、正しい情報の提供はできません」

人が目指すのは「AIのマネージャー的存在」

事例からもわかるように、生成AIは自動的に業務効率化を図ってくれるわけではない。人が指示を出すことで、AIは業務を実行してくれるのだ。

「AIに何をさせたいのかがはっきりしていないと、うまく活用できません。その企業の業務のどの部分がAIに委ねられるか、明確にする必要があるので、『Graffer AI Solution』の伴走支援を行っています。紹介した事例はあくまで一例で、すべての企業にマッチするわけではありません」

企業の伴走支援を行うなかで石井さんが感じていることを聞くと、「まだ多くの企業はAIを触ってみるフェーズにいる」という答えが返ってきた。

「日本企業の8~9割はAIを使ってみようという学習検証フェーズにあり、残りの1~2割が業務効率化を目指してAIを取り入れ始めているところです。いずれ生成AIがビジネスに浸透し、AI前提の社会になったら、ビジネスモデルが大きく変わるフェーズに入ると考えています」

例えば、現在のコンサルティングサービスは、数人のコンサルタントが数カ月にわたって市場調査などを行い、その結果をレポートにまとめて顧客に提案する。しかし、AIであれば、1週間ほどで世の中の情報を調べてくれるだろう。そうなるとコンサルティングサービスの構造が変わり、リサーチ機能だけを安く提供する会社が現れ、情報の分析はコンサルタントではなく各企業の経営企画部門などが自主的に行うようになるかもしれない。

「経営層は、いずれAI前提になると考え、ビジネスを変えるチャレンジをする必要が出てくるかもしれません。従業員は、人でなければできない業務を考え、実践していく時代になるでしょう。先ほども話したように、AIは指示がないと動けないので、実現したいことを言語化したうえで的確な指示を出せる人が必要です。また、AIが生成した文章やプログラムなどをチェックする人も欠かせません。つまり、マネージャーのような立場になることができれば、うまくAIと付き合いながら業務を効率化していけるといえます」

各企業で生成AIの導入が進み始めている。自分にできることやAIにさせたいことを考え、実践していくスキルが、これからの社会では必要になりそうだ。まずは生成AIに触れ、その性質を知るところから始めてみよう。

(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード