もしトランプ大統領になったら

提供元:日興アセットマネジメント

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<ここがポイント!>

■共和党の大統領候補トランプ氏 VS 民主党現職バイデン大統領
■関税を引き上げるなら、何かを減税すると想定
■リスク面ばかり強調されやすいことに注意

共和党の大統領候補トランプ氏 VS 民主党現職バイデン大統領

本年11月の米大統領選挙に向けた野党共和党の候補者選びは、最大の山場となるスーパーチューズデー(予備選挙などが集中する日、今回は3月5日)で圧倒的な勝利を収めたトランプ氏でほぼ固まったようだ。対抗する民主党の候補者も、現職のバイデン大統領が選ばれることになりそうだ。

正直なところ、現職のバイデン大統領が引き続き大統領となれば、これといって変わることはない。下院議席の過半数を共和党から民主党が取り戻せるかどうかで、政策執行能力は変わり得るが、共和党が現在と同じ過半数を確保すれば現状程度にとどまるだろう。

仮に下院議席の過半数を民主党が取り戻したとしても、バイデン政権発足時のように、なかなか民主党内をまとめきれず、政策実行が容易になるとも想定し難い。バイデン氏が、インフレの原因とされたくないために我慢してきた消費者向けの財政拡大策は、これまでよりも打ち出しやすくなるかもしれないが、企業増税とのカップリングになりやすいため、さほど市場や経済に大きなインパクトを与えないだろう。

選挙の行方については、まだ詳細は分からない。ただし、一言で言えばトランプ氏は意外に強い。民主党、共和党それぞれの固定票がそのまま投票されれば、今回も、スウィングステート(支持率が拮抗している激戦州)での浮動票の行方が左右することになる。

これまでの調査では、トランプ氏がこのような地域でも一定の強さを持っていることが示されている。2016年の大統領選挙では、ほとんどの著名政治分析家がトランプ氏の勝利を当てることができなかったので、そもそも予想すること自体難しいのだが、トランプ氏が再選される可能性はかなり高いとみておくべきだろう。

関税を引き上げるなら、何かを減税すると想定

トランプ氏は、これまで主張している政策について、趣旨はいろいろと述べるが、その方法を曖昧にしているものが多い。これまでクリアに述べた政策の代表は、「外国製品に一律10%の関税をかける」、「中国製品については60%以上の関税をかける」というものだ。仮に、中国からの輸入品の関税を大幅に高くすれば、中国製品が多い雑貨・日用品の価格が上昇する。これをしばしば「インフレ的」と呼ぶ向きがある。しかし、ごく短期的にはインフレ的かもしれないが、6ヵ月もすれば景気悪化の理由になる。消費者の収入が増えなければ、貯蓄を使い尽くしたところでインフレはあっという間に終わり、消費不況となってしまうからだ

そこで、現時点で仮想するトランプ政権(以下、「もしトラ政権)は、同時にさまざまな減税を行うだろう。公約に掲げている、25年に失効する所得税減税の恒久化だけでは消費を引き上げる効果が足りないので、追加の所得税減税すらあり得る。もし所得税減税が困難であれば、他に消費を引き上げる消費財購入の補助金などの手段を探すことになる。

関税引き上げは、国内の消費関連企業の売上を損なう恐れもある。関税分を販売価格に上乗せすることで、売上数量が減るリスクは高い。前政権で実行された中国からの輸入品の関税引き上げでも、米国の小売業などが反対した。そこで、特に小売業などに対して、大幅な法人税の減免措置を導入することが考えられる。消費セクターの減税だけで関税引き上げによる増税分を相殺できないとなれば、幅広い企業の法人税減税を行う必要があるかもしれない。このような減税と増税を同じ金額にするような政策であれば、大統領がバイデン氏からトランプ氏に代わっても、GDP成長率の見通しを大きく変えなくて良いことになる。

【トランプ氏が掲げる主な公約】        

上記は本稿執筆時点の内容であり、すべてではなく、将来変更される場合があります。 ※各種報道をもとに日興アセットマネジメントが作成

リスク面ばかり強調されやすいことに注意

リスクは外交にある。トランプ氏はイスラエル寄りであることが明確であるから、反イランが強調されやすくなる。現時点、イランは、ガザ地区のパレスチナの解放を訴えるハマス、イエメンの反政府勢力のフーシ派、レバノンの武装勢力のヒズボラなどを支援しているが、イランが自ら米国との戦闘などに向かうようには見えない。イラン国内の政治的な不安定さもあり、追加制裁も望ましくない。しかし、「もしトラ政権」は、イランとのパイプも少ないとされ、追加制裁などでイスラエル支援を強調する恐れがある。軍事的な圧力を強める可能性は低い(「もしトラ政権」は基本的に戦争はコストが高いとみている)が、イスラエルとガザ地区統治の状況次第では、イランの軍事行動につながる恐れがある。

イランが中東の米国基地などをミサイルで狙った場合、イランによるサウジアラビアやUAEの石油輸出港への攻撃やタンカー航路の機雷封鎖などのリスクも高まってしまう。このシナリオは、日本にとって極めて大きな問題(石油供給の低迷)をもたらす。原油価格が高くなってもおカネで解決することはできるが、原油が供給されない、国内で生産できない、といった供給ショックは極めて重大なGDPの低下要因となる。米国は原油を豊富に持っているし、「もしトラ政権」は国内パイプラインの強化などを打ち出すことができるが、日本や一部の東南アジアには痛い問題となり得る。ただし、このシナリオ実現の可能性は、「もしトラ政権」になっても大変低い。イランが関わる紛争は、イランにも他国にも合理性がないので、偶発的なケースとして念頭に置くことにしておこう。

ロシア・ウクライナ紛争について、「もしトラ政権」はNATO(北大西洋条約機構)への米国関与を低下させる可能性があり、その場合は、欧州各国の軍事費増大などが起こるだろう。ただし、ロシアがNATO加盟国を直接攻撃しない限り、経済的には現状のロシア商品離れが進む程度とみている。日本や韓国への軍事費拡大要求も高まろう。

リスクが強調されやすい「もしトラ政権」のケースだが、社会分断や外交などで問題が起こりやすいとはいえ、経済的には、発言に振り回されても、ある程度は前政権時の政策から予測が可能であり、増税と減税などの調整もされるとみられる。金融市場のボラティリティは高まるが、経済的なインパクトはセクターや銘柄の選択のレベルに収まるだろう

(日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山直樹)

■当資料は、日興アセットマネジメントが情報提供を目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解および図表等は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
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著者/ライター
神山 直樹
2015 年 1 月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985 年、現 SMBC 日興証券株式会社にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999 年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、ゴールドマン・サックス証券株式会社やモルガン・スタンレー証券株式会社、ドイツ証券株式会社、メリルリンチ日本証券株式会社において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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