ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者様にインタビュー

デンソーの福利厚生制度:各職場に健康推進リーダーを配置し、職場の特色に合わせて、健康増進活動を推進!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在の制度までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者様にセキララに語っていただきました。

今回は、先進的な自動車技術、システム・製品を世界の主要カーメーカーに提供する、世界トップレベルの自動車部品メーカー「株式会社デンソー」のユニークな福利厚生制度をご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社は、これまで健康経営銘柄や健康経営優良法人に何度も選ばれており、健康経営に力を入れていらっしゃいます。健康経営を導入された背景について教えていただけますか?

2016年頃から社員の高年齢化が顕著になってきたことに加えて、食事、運動などの健康的な生活習慣に関する社員の意識や行動変容が横ばいもしくは微増の状況でした。

社員1人1人が心身ともに健康で、イキイキと笑顔で活気あふれる会社を目指すためには、社員の健康増進を経営課題として取り組む必要性がありました。

そこで、2016年に社長より「健康宣言」を発表するとともに、健康マネジメント体制の構築として、健康推進部(保健師、看護師などの専門職を含む)をはじめとした関連部門で「健康協議会」を発足しました。国内・海外グループも含めて、グループ会社全体で健康活動を推進しています。

――具体的にはどのようなお取り組みをされているのでしょうか。

弊社の特徴的な取り組みとしては、職場の健康増進活動の一環として、2017年から各職場に健康を推進する「健康推進リーダー」を配置しています。リーダーには、自主的に健康について考えて、社員が行動するきっかけや健康に関する知識を学べる場を提供するなど、楽しく健康増進活動を行えるように尽力してもらっています。

リーダーの選任については、各職場に任せているのですが、より組織軸の活動を強化できるように 課長職以上もしくは、それに見合う部員を引っ張っていけるような方でお願いしています。

さらに2022年からは、健康推進リーダーだけではなく、部門長を健康責任者に任命しています。部門長から部員に対して、健康に関する考えや取り組みの後押しをしてもらいたいとの思いから考えた施策です。

――各職場に健康推進リーダーを配置しているのは、面白い試みですね。

そうですね。職場ごとで働き方やコミュニケーションも違いますし、抱えている課題も違います。健康推進リーダーが中心となり、職場ごとの特色に合わせて運動を重視したイベントや健康に関する講話を開催しています。

全社共通の取り組みとしては、「歩数対抗レース」を毎年6月と11月の年2回開催しています。歩数対抗レースは、任意の申込制で、参加者でチームを組んでもらい、チーム対抗としています。弊社では、オリジナルで「デンソー健康ステーション」というアプリを作っていまして、歩数の登録もできるようになっています。

歩数対抗レースの期間が終わった後も独自で継続して開催する職場もあり、職場の特色や工夫を加えて行なっています。任意の申込ではありますが、職場によっては、全員参加しているところもあります。

――歩数対抗レースで上位に入ると景品などはもらえるのですか。

もらえます。弊社オリジナルで作っているタオルや、労働組合も何かしらの景品を出しています。

――景品があるとモチベーションが上がりますよね。他に特徴的な施策はありますか。

「生活習慣スコア」という、会社目標にもなっている、健康に対するKPIを導入しています。

生活習慣スコアとは、個々の生活習慣の実施状況と健康診断のデータを点数化して指標化したもので、弊社独自のオリジナル指標なのですが、それを社員に通知しています。

スコアの内訳は、食事、運動、飲酒、睡眠・休養、喫煙といった「健康行動」を80点、BMIや血圧、脂質、血糖、こころといった「健康データ」を20点合計100点の健康スコアとしています。

健康行動の配分を多くしていまして、社員に健康行動の内訳にある食事や運動などの項目についてできるところから改善するようお願いしています。
また、同年代の平均スコアも表示していますので、その方と同じ年代の方がどれくらいの点数を取っているのかを知って、自身の立ち位置を確認するこができます。さらに、前回と今回の推移をグラフ化していますので、前回と比較してご自身の体がどういう状態にあるのかを見ることができます。

他には、結果を踏まえて、「取り組んでいただきたいこと」として、コメントも表示していますので、これを参考に取り組むことができます。

導入時のスコアは、全社平均で70点だったのですが、それを初期値としまして、毎年目標値を設定しています。先ほどお話した職場の健康づくり活動の推進等の成果もあり、毎年少しずつ改善しています。

生活習慣スコアを導入したことで、数値で成果を確認できますし、全社や各部での経年変化も把握できますので、それによって課題が明確になりました。私たちにとっても対策、立案をしやすくなってきました。

ラジオ体操指導士によるレクチャー

――社員の方の反応はいかがですか?

生活習慣スコアは、2017年から導入しているのですが、導入当初は、あまり認知されていませんでした。最近は、社内のアンケート結果を見ても認知度は格段に上がってきたと感じています。

各職場でも健康推進リーダーが、スコアの数値を見ながら、どこが弱いのか、弱点を把握して、改善のための取り組みを企画して、健康推進に向けて活動をしてくれています。

私は弊社の各工場にある健康サポートセンターで看護師として勤務しています。社員や健康推進リーダーなどと、近い距離でお話ができる立ち位置にいますので、社員の健康に対する意識の変化をリアルに感じ取ることができています。

例えば、以前よりも、歩数対抗レースに前向きに取り組んでいる様子が窺えるようになりました。また、健康推進リーダーがご自身の職場のメンバーの健康面での弱点を補強するために、私たちに健康講話をご依頼してくるなど、メンバーの健康を第一に考えて前向きに健康推進活動に取り組んでいるのがわかるようになりました。社員たちとの会話の中で確実に健康意識が上がっているなと感じます。

――素晴らしい!地道に活動を続けてきたことの成果ですね。話は変わりますが、他社様の取材の際に健康活動への参加率を上げることの難しさをよく聞くのですが、御社はいかがでしょうか。

弊社でも健康活動への参加率を上げることには苦労しています。

2021年からデンソーグループ全体の社員を対象に、共通の健康関連セミナーを年に5、6回開催していますが、当初はなかなか周知も進まず参加人数も少ない状況でした。

当社は工場で製造業務をしている社員が多くいますが、そうした社員1人1人に対して、健康活動の情報が行き届かないことがあります。また、元々健康意識が高い社員は、その意識を継続してもらえれば何の問題もないのですが、健康意識が低い社員に健康に興味を持ってもらうのが難しいですね。

ですから、社内の媒体をフル活用してPRしたり、健康推進リーダーを通じてPRを行ったり、少しでも皆さんに興味をもってもらえるように、セミナー内容は、食事やメンタルヘルス、女性特有の健康課題といったバラエティに富んだ内容にしたりすることで、少しずつ参加人数を伸ばしてきたところです。

――健康意識が低い方へのアプローチは本当に大変ですよね。

そうですね。ただ、先ほどお話したようなPRを頑張ってきた結果、今年度に関しては、オンデマンドも含めて、1セミナーあたりの聴講数が5000人くらいになっています。

聴講数が伸びていることに加えて、セミナー自体の満足度も非常に高い評価になっています。それぞれのセミナーで、5段階評価で4.0以上の評価を獲得できています。

さらに、セミナーを受けたことで、知識を得るだけではなく、アクションにまでつなげられるといった前向きな回答ももらっていますので、コツコツと地道に続けることの大切さを実感しています。

――歩数対抗レースや生活習慣スコアの導入、セミナー開催など、素晴らしい施策をたくさんされていますが、ご担当者様の一押しの施策があれば教えていただけますか。

昨年度から試験的に「健診前チャレンジ」という取り組みを始めました。こちらは、30代社員を対象にした、40歳以降で始まる特定保健指導の該当率を下げる取り組みです。

30代の社員が健診を受ける2カ月前に健康サポートセンターのスタッフと面談をして、食事や運動などの改善活動をした後に、健診を受けるという流れです。

目的は、特定保健指導の該当率を下げることなので、特定保健指導に該当する社員に声がけをして、この活動に参加してもらっています。

弊社はこれまで若年層への取り組みを実施してきませんでした。ですから、若年層は、看護師や保健師と1対1で面談する機会がなかったので、この取り組みに対して非常に好意的に受け止めてもらえています。そのことにより、面談から食事や運動といった対策までスムーズに実施できています。

――とても良いお取り組みですね!お取り組みの成果はいかがですか。

健診まで2カ月間の活動にはなるのですが、大体1カ月間で1キロくらい痩せましょうと本人にお伝えしていまして、ほとんどの方が達成しています。

嬉しいことに、半数くらいが次の健診で特定保健指導の該当から抜け出しているような状況になっています。

このような成果がでているのは、面談で自身の健診データの推移を提示するだけではなく、同年代のBMIや血圧などと比較したデータを見てご自身の立ち位置を確認し、さらには社内で独自に作った将来予測もお伝えしていることにあると思います。現在の生活習慣から換算した3年後までのデータ推移を社内で独自に作っていまして、それを見て、そのようになってはいけないと危機感を持つ方が多いのではないかと思います。

また、健康診断で問診もとっていますので、問診の回答状況を見ながら、例えば、現在、有酸素運動を月に1回しかしていない状況だけど、週に1,2回行うと何キロ痩せるというところまで提示しています。そうすると、生活習慣を少し変化させることでこれくらい体重が減るんだということがリアルに実感できるので、皆さん、生活に取りいれてもらえているのではないかと思います。

――生活習慣を変えたらどうなるか、将来の予測まで見せてくれるんですか!それはすごいですね!

単に健診結果のデータを見せるだけだと、数値的に引っかかっているんだということで終わってしまうと思います。同年代での立ち位置や将来予測を提示することで、このままではいけないという危機感が生まれると思うんですよね。

とはいえ、資料だけでは実際に改善行動にまで結びつかないと思います。そこで行動の後押しになっているのが、自分が所属している拠点の健康サポートセンタースタッフと顔を合わせて面談するということです。

アンケートを取ったところ、一番満足度の高い取組が「面談」でした。
これまでも社内で特定保健指導を実施してきましたが、行動に繋がらない方もかなり多くいました。詳細なデータに加えて、実際に看護師や保健師と顔を合わせて面談することで、かなり多くの方が行動につなげ、結果を出しているので、私たちスタッフもとても嬉しく思っています。

今後は、2024年に30代への「健診前チャレンジ」の全拠点の展開、それ以降は、20代や40代まで対象者の範囲を拡大していきたいと思っています。

――本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

社員1人1人がイキイキと元気に働けることが、会社としての生産性を上げることにつながると思っています。
我々は、自動車部品メーカーになりますが、これまで以上に社会に貢献できる製品・サービスを提供できるように、健康から土台づくりをして、会社全体で成長していければと思っています。今後とも応援よろしくお願いします。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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