「2024年問題」によって通販の送料が上がる可能性あり!?

「四半期報告書」「働き方」「不動産登記」2024年4月1日の法改正をチェック!

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4月1日、新生活が始まるこの日は、生活の基盤となる法律が改正されるタイミングでもある。

2024年4月1日には、どのような法律が改正されるのだろうか。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんと一緒に改正内容を見ていきながら、生活への影響も考えてみた。

企業が発行する「四半期報告書」が廃止

●金融商品取引法
2023年11月20日、第212回国会で「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が可決されたことによって、2024年4月1日から四半期報告書が廃止されることとなった。同時に、半期報告書の提出は義務付けられ、半期報告書の公衆縦覧期間は3年から5年、臨時報告書は1年から5年へと延長される。

「投資家にとっては、気になる改正だと思います。四半期報告書は内容が重複することが多く、非効率的だったため、廃止となりました。報告書が少なくなることによって、情報が整理されるため、投資家にとってもより重要な情報源となるでしょう。届く書類が少ないほうが、『ちゃんと見よう』という気持ちにもなりますよね」(川部さん・以下同)

日々の通販に影響する「2024年問題」

●改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)
トラック運転者の拘束時間の上限や休息期間等が改正され、以下のように変更となる。

※拘束時間:使用者に拘束されている時間(労働時間+休憩時間)のこと(会社へ出社(始業)し、仕事を終えて会社から退社(終業)するまでの時間) ※休息期間:使用者の拘束を受けない期間のこと(業務終了時刻から、次の始業時刻までの時間)

「トラック運転者の過重労働防止につながる改正です。ただ、労働時間が短くなるということは、通販などで頼んだ荷物が届くまでに時間がかかる、時間指定に制限がかかる、送料が上がるなど、宅配サービスを利用する側の生活に影響が生じる可能性があります。物流業界も人手不足ですし、トラック運転者の健康にも配慮すべきなので、今後は時間に余裕を持って注文する、できるだけまとめて買うといった工夫が必要になるでしょう」

従業員にとってやさしい労働環境改善が進む

●労働基準法
・労働条件明示のルール変更
労働基準法施行規則の改定によって、労働者を雇う際に交付する労働条件通知書(または労働契約書、雇用契約書)に記載する項目が増える。具体的には、次の項目の記載が義務付けられる。

「すべての労働者が対象となる『就業場所・業務の変更の範囲』とは、入社時点の就業場所や業務内容だけでなく、転勤・異動する可能性のある場所や部署、業務内容も記す必要があるということです。厚生労働省は、従業員とのトラブルを防ぐため、できるだけ具体的に記載することを推奨しています」

「有期契約労働者」とは、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された労働者が対象となる。「更新上限の有無と内容」とは、契約更新の期間や回数のことだ。例えば、「契約期間は通算4年を上限とする」「契約の更新回数は3回まで」と、明示する必要がある。

「さらに、『無期転換申込機会・無期転換後の労働条件』の明示も義務付けられます。有期労働者には、『無期転換ルール』というものがあります。同じ会社で5年を超えて働いていれば、無期雇用労働者になれるという仕組みです。今回の改正により、無期労働契約の申し込みができる契約更新のタイミングで、会社側が『無期転換ルール』があることを明示することになったのです」

会社から「無期転換ルール」を説明されるようになるため、ルールを知らずに有期契約のままだったという状況を避けられるだろう。ちなみに、無期契約を申し込まず、有期契約のまま働くという選択もできる。

「4月以降に労働契約を結ぶ場合は、これらの項目が記載されているか、確認しましょう。記載されていない場合は、会社に『就業場所は今後どうなる予定ですか?』など、聞いてみるといいでしょう。また、入社後に指示された異動や転勤、契約更新の時期などが、労働条件通知書に記載された内容とかけ離れている場合は、『契約と違います』と交渉できるので、労働条件通知書は紛失しないように保管しましょう」

・裁量労働制の見直し
労働基準法の改正により、裁量労働制の導入・継続に新たな手続きが加えられる。具体的には、次の内容を労使協定や労使委員会の運営規定に追記し、決議を行う必要がある。

(1)本人同意を得る・同意の撤回の手続きを定める
(2)労使委員会に賃金・評価制度を説明する
(3)労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
(4)労使委員会は6カ月以内ごとに1回開催する
(5)定期報告の頻度が初回は6カ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回になる

そもそも裁量労働制とは、会社側があらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、従業員に賃金を支払う制度のこと。例えば、8時間と定めたら、5~6時間で業務を終えたとしても8時間分働いたことになるが、10時間かかったとしても8時間の扱いとなる。専門的な業務など、要件を満たした職業にしか認められない働き方だ。

「裁量労働制を利用して、契約した時間内には到底終わらないであろう業務を従業員に与えている会社があることも事実です。そこを厚生労働省が問題視し、今回の改正が行われるのだと思います。改正内容を簡単に説明すると、裁量労働制の内容を改めて従業員に伝え、同意を得る必要があるということです。また、従業員が同意の撤回を希望した場合、会社は受け入れなければいけません。裁量労働制で働いている人は、働き方を見直す機会になるでしょう」

日々の生活に影響するであろう法改正も

●不動産登記法
相続した不動産に関して、3年以内に相続登記の手続きを行うことが義務付けられる。2024年4月1日より前に相続した不動産も、義務化の対象となる。不動産登記法改正の施行日(2024年4月1日)または相続が発生したことを知った日のどちらか遅いほうから3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性がある。

「相続登記されずに持ち主がわからない空き家が増えているので、相続登記が義務付けられ、所有者が明確になるようにしたのだと考えられます。過去に相続した不動産も対象になるので、土地や建物を相続した人やこれから相続するであろう人は、相続登記を忘れずに行いましょう」

●障害者差別解消法
障害者差別解消法の改正により、事業者には障害がある人への合理的配慮の提供が義務付けられる。合理的配慮の提供とは、事業者が提供する設備やサービスを障害のある人も利用できるよう、対話などを通じて対応策を検討・実施すること。

「例えば、障害のある人が来店した際に、『ご家族と一緒に来てください』といった条件を付ける差別的な扱いは禁止とされています。『お求めの商品の売り場まで案内します』と同行するなど、障害のある人でもサービスを受けられる環境にすることが、事業者に義務付けられるので、障害のある人も暮らしやすい社会に近付くでしょう」

●民法
民法が改正され、女性の離婚後100日間の再婚禁止期間が廃止される。また、この改正に伴って、離婚後300日以内に生まれた子どもは、再婚した夫の子と推定されるようになる。

「女性だけでなく、男性にとっても大きな変化となる改正といえるでしょう。生活に直結する改正なので、きちんと知っておきたいところです」

さまざまな法律が改正されるが、世代を問わず影響のあるものも多そうだ。改めて法律の内容を把握することで、今後の暮らし方や働き方が変わるかもしれない。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
著者サイト:http://kawabe.jimusho.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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