長期投資を見据えてコストを抑えたいなら「ETF」がいいらしい…?
元国税職員芸人・さんきゅう倉田が注目の金融商品「ETF」を学ぶ!
個別株と投資信託の特徴をあわせ持つ「ETF(上場投資信託)」。2023年9月には、指数に連動せずに市場平均を上回るリターンを目指すアクティブETFが、東京証券取引所で売買開始となるなど、盛り上がりを見せている。
「投資経験はあるものの、ETFは名前しか知らない」と話す元国税職員のお笑い芸人・さんきゅう倉田さんが、東証マネ部!“中の人”と一緒にETFについてお勉強。その模様をお届けする。
※記事内の情報は2024年3月現在のもの。
取引所に上場されている投資信託「ETF」
東証「投資経験があるとのことですが、どのような投資を実践されていますか?」
倉田「個別株での投資がほとんどです。そのほかにも一般NISAで世界株、iDeCoで日本株の投資信託に投資していますが、投資全体で見ると投資信託の割合は5分の1くらいですね」
東証「個別株が中心なのですね。投資は、どのようなきっかけで始めたのでしょう?」
倉田「20代後半から始めたんですが、知り合いのバンカーに勧められたのがきっかけです。僕が東京国税局にいた16年前くらいは、投資について話す人はほとんどいなかったですし、NISAもありませんでした。だから、投資を考えたことがなかったんです。そのバンカーの方に勧められて、自分なりに勉強してから始めました」
東証「しっかり学ばれたんですね。今回はETFについての勉強ですが、そもそもETFのことは知っていましたか?」
倉田「名前は聞いたことがあるんですが、商品の特性などは説明できませんね」
東証「では、まずはETFの特徴から紹介していきましょう。ETFは『Exchange Traded Funds(上場投資信託)』の略で、取引所に上場している投資信託です。上場しているので、株式と同様にリアルタイムで指値での注文ができます。ただ、複数の株式や債券などに投資する投資信託なので、個別株式と比べるとリスクが低いといえます。多くの方が投資信託と聞いて思い浮かべる非上場の投資信託(公募投信)と同じく、指数に連動するインデックス型もあれば、指数に連動せずに高いリターンを目指すアクティブ型もあります」
倉田「現時点で、どのくらいのETFが上場されているんですか?」
東証「国内の投資信託は約6000本ありますが、そのうちの5%、約300本がETFです。インデックス型のETFがほとんどで、アクティブ型のETFは10本上場されています」
倉田「想像していたより多いですね。投資信託を上場する理由は、投資家が取引しやすくなるからですか?」
東証「それもあります。公募投信は証券会社や銀行(販売会社)を経由して買いますが、販売会社によって販売している公募投信が異なるので、1カ所ですべての商品を自由に買えるわけではありません。一方、ETFは取引所に上場されているため、世界中のどこからでも同じ商品を売買できます。ETFを組成・運用する運用会社にとっても、ETFは機関投資家の『たくさん買いたい』『たくさん売りたい』というニーズに応えやすいというメリットがあります」
倉田「なぜ、ETFは『たくさん売買したい』という機関投資家のニーズに応えられるのでしょう?」
東証「ETFは、構成銘柄や純資産額などの情報を日々開示することが義務付けられているので、透明性が高い商品といえます。それに加えて、誰でも同じ銘柄にアクセスできることから、商品間での競争が働きやすく、大きな金額で売買する機関投資家のニーズに応えやすいといえるのです」
「ETF」のコストが低く設定されている理由
東証「倉田さんは投資を行ううえで、コストはどのくらい意識していますか?」
倉田「かなり意識しています。投資のリターンはどうなっていくか読み切れませんが、手数料は明確にわかるので、投資先を決める軸のひとつとして必ずチェックしています」
東証「コストは利益に影響するので、とてもいい観点だと思います。実は、このコストがETFの大きな特徴でもあるんです。公募投信とETF、ともにインデックス型の商品の信託報酬(投資信託の管理・運用のための手数料)の平均を比較すると、公募投信は約0.42%(2022年末現在)、ETFは約0.33%(2024年1月末現在)と、ETFのほうが低いのです。アクティブ型だと、この差はもっと顕著になります」
倉田「それならETFのほうがいいですが、なぜ信託報酬に差が出るんですか?」
東証「ETFの運用会社が頑張っていて、公募投信の運用会社が多めに手数料を取っている、というわけではなく、それぞれの商品の構造によって差が出ているといえます。公募投信の信託報酬は、販売会社・運用会社・信託銀行(金銭や有価証券を保管している銀行)の3つで分けられます。一方、ETFは先述したように売買時に販売会社を介さないので、信託報酬は運用会社と信託銀行の2つで分けられます。1社分の手数料が不要になるため、ETFのほうが信託報酬は低くなりやすいのです。不動産売買にたとえると、仲介手数料がなくなるイメージです」
倉田「なるほど、仲介手数料がなくなると考えるとわかりやすいですね」
東証「同じ指数に連動する公募投信とETFを比較すると、差をより実感できると思います。日経平均株価(日経225)に連動する、ある人気の公募投信の信託報酬は年0.143%(税込)なのに対し、ETF『iシェアーズ・コア 日経225 ETF(1329)』は年0.0495%(税込)です」
倉田「0.1%の差はわずかに感じますが、長期投資をすると考えると結構大きいですよね。絶対にETFのほうがいいじゃないですか。ちなみに、コスト以外にも特徴はありますか?」
東証「ETFは、分配金が出るという特徴もあります。公募投信は『分配金再投資』としている銘柄が多く、保有している株式から配当が出た際は、そのお金がそのまま同じ商品の買い付けに回されます。(再投資)一方、ETFは『原則入ってきたお金から経費を除いた全額を投資家に払わないといけない』と法律で定められているので、株式などから出た配当から得られた利益100%分配金として支払われます」
倉田「再投資したい場合は公募投信のほうがラクかもしれませんが、定期的に分配金が入ってきて利益を実感できるのは、ETFの魅力といえそうですね」
東証「おっしゃる通りで、ETFと公募投信では目的が異なるといえます。これらの特徴が徐々に広まっていて、ETFの資産残高はかつて3兆円程度だったところから72兆円へと増えています。2012年頃はETFを保有している個人投資家はのべ30万人ほどでしたが、現在はのべ130万人を突破しています」
倉田「ETFの特徴を知ると、活用したいという気持ちが湧いてきますね」
日本の取引所を通じて外国株や債券、金にも投資できる
倉田「コストを重視してETFを活用する場合は、信託報酬をチェックしていけばいいでしょうか?」
東証「そうですね。特に注目してほしいのは、多くの運用会社が採用している指数に連動するETFです。例えば、日経平均株価やTOPIX、S&P500、NASDAQ100などが挙げられます。さまざまなETFや公募投信で採用されている指数の使用料は低く設定され、また商品性が単純になるので、その分信託報酬が下がりやすいといえます」
倉田「人気が高いETFのほうが、コストを抑えやすいということですね。ところで、ETFも、株式のように上場廃止となることはありますか?」
東証「上場廃止はあります。ただし、株式とは違い、資産がゼロになるということはありません。ETFは、カゴのなかに株式や債券が入っているイメージの金融商品です。ETFが上場廃止となるときには、そのカゴがなくなるだけで、株式や債券はなくなりません。一般的に上場廃止の際には、投資家が上場廃止前に取引所で売却して現金化するか、保有したまま上場廃止を迎えた場合は、運用会社がその株式や債券を売り、投資家が持っている口数に応じた現金が支払われることになります」
倉田「安心しました。そうなると、ますますETFがいい気がしますね。新しいNISAでの投資はこれから始める予定なんですが、確か『成長投資枠』でETFにも投資できましたよね」
東証「はい、今年1月の制度開始時点で247本のETF・ETNが新しいNISAの対象になっています。東証に上場されているETFなので、日本株だけに投資するものと思われがちなのですが、S&P500やNASDAQ100に連動しているものもあれば、全世界株(オール・カントリー)に投資するものもあります。債券や金に投資するETFもあるので、投資スタイルに合わせて選んでいただけると思います」
倉田「日本の取引所で外国株にも投資できるのは、かなりうれしいポイントですよね」
東証「日本でのやり取りになるので、外国株用の口座を開かなくていいというメリットがあります。市場が開いている9時から15時の間は日本円で売買できるので、為替コストなどを考えなくていいところも魅力といえます」
倉田「外国株投資にも挑戦しやすくなりそうですね。かなりETFについて詳しくなれたので、まずは新しいNISAで活用してみたいと思います!」
株式のようにリアルタイムで取引できるという特徴だけでなく、コストや分配金、外国株投資の利便性など、さまざまなメリットがあるETF。さんきゅう倉田さんがこれからどのように活用していくのか、楽しみだ。
(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/鈴木真弓)