海外に転勤・赴任すると新NISAはどうなる?
海外赴任中に新NISAで法令上保有できるのに、対応している金融機関はほんの一部
提供元:Mocha(モカ)
新NISAを利用している人の中には、今後、海外に転勤・赴任する人もいるかもしれません。しかし、新NISAが利用できる人の条件は「日本に住んでいる人」。これから海外転勤・赴任があったら、新NISAの資産はどうなってしまうのでしょうか。
今回は、海外転勤・赴任があった場合のNISAの扱いを紹介します。
5年以内の海外転勤・赴任ならNISAは使える!
新NISAを利用できる方の条件は、「日本にお住まいで、口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の方」です。なお、「日本にお住まい」の条件は、2023年までの旧NISAでも2024年からの新NISAでも同じです。
かつては、海外転勤・赴任する際にNISA口座の資産をすべて課税口座に払い出す必要があり、帰国後も以前利用していたNISA口座に資産を戻すことはできませんでした。つまり、海外転勤・赴任をする場合は、非課税の運用が続けられなかったのです。
しかし、2019年度の税制改正により、最長5年の海外転勤・赴任であれば、条件付きながらNISAの資産をNISA口座で保有できるようになりました。
<海外転勤・赴任でも5年間はNISA口座で保有可能>
海外転勤・赴任中のNISA 4つの注意点
海外転勤・赴任している間もNISA口座の資産を持ち続ける際には、次の4つの注意点を押さえておきましょう。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点1:NISA口座で資産を持ち続けるには手続きが必要
海外転勤・赴任してからもNISA口座で資産を持ち続けるには、出国日前日までに、NISA口座を開設している金融機関に「継続適用届出書」を提出し、帰国後には「帰国届出書」を提出することが必要です。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点2:帰国後の手続きを忘れずに
帰国届出書を提出すれば、帰国後も引き続きNISA口座を利用できますが、5年後の12月31日を過ぎても帰国届出書を提出しない場合、NISA口座は自動的に廃止され、課税口座に払い出されてしまいますので、手続きを忘れないようにしましょう。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点3:新たな投資はできない
海外に住んでいる間は、新NISAを利用した新たな投資はできません。積立投資している場合も、帰国するまで新規の積立はいったんストップとなります。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点4:「やむを得ない理由」でない場合は使えない
海外にいてもNISA口座を保有できるのは、あくまで「会社から転勤を命じられて出国しなければならない」といった場合のみです。たとえば、会社関係なく「個人的に留学する」という場合には、NISA口座を持ち続けることはできません。
ほとんどの金融機関が海外転勤・赴任に非対応…
しかし、以上はあくまで制度上の話。NISAの資産は「制度上」海外転勤・赴任があっても保有できるのですが、この制度が利用できるかどうかは金融機関によって異なります。そして、残念ながらほとんどの金融機関が海外転勤・赴任に非対応です。
たとえばSBI証券では、非居住者となる場合にはNISA口座の廃止手続きが必要に。特定口座の資産と合わせて一般口座に払い出す必要があります。一般口座では、国内株式・国内債券しか保有できません。
また、マネックス証券でもNISAは継続できず、長期間の出国の場合には口座解約が必要になっています。保有残高を売却できない事情がある場合は休眠口座にして口座を維持することはできますが、この場合もNISAの資産は売却、あるいは課税口座への払い出しが必要になります。
海外転勤・赴任に対応している金融機関には、次のところがあります。
<海外転勤・赴任に対応している金融機関>
●楽天証券
楽天証券の場合は、国外の滞在期間が1年未満であれば手続き不要で保有できます(ただし、米国の場合、「連続して滞在する日数」または「出国年の滞在日数+前年の滞在日数の1/3+前々年の滞在日数の1/6の合計」が183日以上の場合には手続きが必要)。
国外の滞在期間が1年以上5年未満の場合は、手続きをすることで総合口座・特定口座・NISA口座を保有できます。ただし、保有できる商品は日本株式と個人向け国債のみ。その他の商品は売却する必要があります。
また、常任代理人を選任する必要があります。楽天証券の常任代理人サービスを利用する場合、契約手数料は0円ですが、年間基本報酬が10銘柄までは9万9000円(税込・実費別)、10銘柄以上は1銘柄ごとに9900円かかります。
●野村證券
野村證券でも「非課税口座継続適用届出書」を提出することで、非課税口座継続適用届出書の受入日から最長で5年後の年末までNISA口座内の株式や投資信託を非課税で保有できます。なお、特定口座は廃止され、資産は一般口座に払い出されますが、出国前・帰国時に手続きをすることで帰国後に資産を再度特定口座に組み入れることができます。
●みずほ証券
みずほ証券でも「非課税口座継続適用届出書」を提出することで、提出した日から最長で5年後の年末までNISA口座内の株式や株式投資信託を非課税で保有できます。
このように、制度上は海外転勤・赴任をしてもNISAの資産を保有できるようになっていても、対応している金融機関は少なく、多くの金融機関ではNISAの保有が「実質不可」になっていることに注意しましょう。もしも海外転勤・赴任を予定しているのであれば、対応している金融機関を利用した方がよいでしょう。
なお、海外転勤・赴任の際に、「海外に行ってもバレないだろう」などと、手続きをしないでいることを金融機関が見つけたら、NISA口座が廃止され、資産が強制的に売却されてしまいますので、必ず手続きしましょう。
[執筆:マネーコンサルタント 頼藤太希]
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