もしかしたら間違っているかも?
年金記録「漏れ」「誤り」で損する6つのケース
提供元:Mocha(モカ)
みなさんは、自治体のウェブサイト等に書かれている「年金記録を確認しましょう」といった案内を他人ごとだと思っていませんか。年金記録の「漏れ」や「誤り」は身近に潜んでいるだけに、そのまま無視をしていたら、老後に大きく後悔するかもしれません。
そこで今回は、どのようなケースで、年金記録の「漏れ」や「誤り」が発生しやすいかについて解説します。対処法もあわせて紹介するので、本来受け取れるはずの年金額を確実にもらうためにも、ご自身が対象ではないかをこの機会に調べてみましょう。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(1):「消えた年金」の対象になっている
「消えた年金」という言葉を覚えている人も多いかもしれません。誰のものか分からない約5,095万件の年金記録(未統合記録)の存在が、2007年に明らかになりました。「年金記録問題」として世間を震撼させてから約20年。この間、持ち主を探すための周知が行われてきましたが、いまだに約1,726万件(2023年9月時点)の年金記録が持ち主不明のままです。
●かつては複数の年金番号を持っているのが当たり前だった!?
1997年1月から、「基礎年金番号」とよばれる10桁の番号が、公的年金に加入している人に割り振られています。基礎年金番号は、生涯を通じて一人一つ。例えば、国民年金に加入していた大学生が就職で厚生年金保険に加入しても、新たな番号が付与されることはありません。個人情報や加入記録は基礎年金番号に集約されているので、将来年金の支払いを円滑かつ確実に行えるというわけです。
実は、1996年12月以前は、加入している制度ごとに7~12桁までの番号(年金手帳記号番号)で管理されていました。したがって、1人が複数の年金手帳記号番号を持っていることが普通だったのです。当然、それらすべてが基礎年金番号に結び付けられるはずでしたが、何かしらの事情で放置されたままだったことが「年金記録問題」の背景です。
●まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金記録を確認
毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」や、インターネットで年金記録を確認できる「ねんきんネット」を使って、まずは心当たりのない「未加入」期間がないかを確認しましょう。「ねんきんネット」には「持ち主不明記録検索」機能も搭載されています。
ちなみに、未統合記録が見つかる人の約9割は、次の3つのパターンのいずれかに該当しているようです。「まさか」と思うようなものばかりですが、気になる点があれば、「ねんきん定期便・ねんきんネット専用ダイヤル」、もしくは年金事務所にすぐ相談してください。
<記録のもれが多く発見されるパターン>
1.転職が多い
(例)若い頃に勤めていた記録が見つかった結果、年額98万円から234万円に。
2.姓(名字)が変わったことがある
(例)結婚前の旧姓の記録が見つかった結果、43万円から154万円に。
3.いろいろな名前の読み方がある
(例)名前の読み方が誤っていた記録が見つかった結果、年額0円から137万円に。
日本年金機構「年金記録の再確認をお願いします」より
被保険者期間や保険料の納付状況など、年金記録が事実と異なっている場合には、年金事務所に「訂正請求書」を提出することができます。2022年度の処理件数は4,242件で、記録訂正率は90.9%。制度別の処理件数では、厚生年金保険が全体の約95%(4,046件)を占めている点に注目です。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(2):厚生年金保険の記録がない
ここからは、厚生年金保険の「漏れ」や「謝り」のケースを5つ紹介します。厚生年金保険の加入歴がある人は、ご自身の年金記録に違和感がないかを調べてみましょう。
まずは、厚生年金保険の記録がないケースです。
すべての法人事業所および常時5人以上の個人事業所(農林水産業やサービス業等の業種を除く)は、厚生年金保険に加入し、70歳未満の従業員を被保険者として届け出る必要があります。
厚生年金保険に加入できるのは正社員の人だけではありません。法人の代表者や役員、試用期間中の人、外国人のほか、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である短時間労働者(パートタイマー・アルバイト等)もまた、被保険者となります。
4分の3を満たしていなくても、2016年10月から、従業員数が501人以上の企業に勤める短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上など一定の要件を満たしている必要)も加入できるようになりました。2022年10月からは、101人以上に適用範囲が拡大されているので、加入漏れがないかを今一度確認しましょう。2024年10月からはさらに、51人以上に拡大されます。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(3):加入日が就職日より後になっている
厚生年金保険の被保険者資格を取得する日、つまり加入日は、事実上の使用関係が始まったときです。したがって、入社時点で加入要件を満たしていない人を除いて、基本的には入社日(就職日)が加入日となります。
加入日を誤る代表的なケースが、試用期間の取り扱いです。先ほども紹介したとおり、原則として試用期間中も厚生年金保険の加入者となるので、加入日に不自然な点がないか確認しましょう。なお、2年以上前の保険料は、時効の関係で納付することはできません。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(4):資格喪失日が退職日より前になっている
被保険者資格を取得するのは入社日(就職日)ですが、資格喪失日は「退職した日の翌日」です。例えば、2024年3月31日に退職した人は、2024年4月1日に資格を喪失することになります。
被保険者期間は、被保険者でなくなった月の「前月まで」なので、このケースでは2024年3月までが被保険者期間となるはずです。しかし、前の勤務先が誤って「3月31日」としてしまっていると、被保険者期間が2024年2月までとなってしまいます。過去に月末退社をした人で、加入記録に不自然な点がある人は、資格喪失日を確認しましょう。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(5):標準報酬月額が誤っている
保険料額や将来もらえる年金額のベースとなる「標準報酬月額(1~32等級)」も、誤りが多く見られるようです。基本給はもちろんのこと、通勤手当や役職手当、扶養手当、住宅手当、超過勤務手当、現物で支給される食券など、労務の対象となるすべての報酬が、報酬月額には含まれます。標準報酬月額が著しく低い場合には、報酬月額に含まれていない手当等がないかを確認しましょう。
また、基本給や住宅手当、家族手当などの固定的賃金が大きく変動してから3ヶ月を過ぎても標準報酬月額が変わっていない場合には、勤務先が届け出をしていないケースが考えられます。
年金記録の「漏れ」や「誤り」のケース(6):賞与の支払い記録がない
賞与(役員賞与を含む)やボーナス、期末手当、年末手当、夏(冬)季手当といった、年3回以下の回数で一時的に支給されるものも、「標準賞与額」として保険料額や将来もらえる年金額のベースになりますが、見落としがちです。
これら賞与等が支払われた場合、勤務先は「賞与支払届」を提出しなければなりません。しかし、2010年度に全国で実施された厚生年金保険及び健康保険の事業所調査によると、「賞与支払届」の提出が漏れていたことに対する指導が最も多く行われています。したがって、保険料は賞与等から天引きされていても、年金記録に正しくその情報が反映されていない可能性も考えられるので、金額も含めて確認を行いましょう。
年金記録は1年に1回確認しよう
今回は、年金記録の「漏れ」や「誤り」でよくある6つのケースについて、解説を行いました。最初に紹介した「年金記録問題」は、世間を震撼させた大事件でしたが、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」など、この事件をきっかけに年金の「見える化」が大きく進んだことは間違いありません。
これらの「見える化」アイテムを用いて、最低でも1年に1回、年金記録を確認することが、老後の安心に向けた第一歩です。年金事務所も上手に活用しながら、人生100年時代の準備を確実に進めていきましょう。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 神中 智博]
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