投資信託のトレンドが分かる!
2024年4月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2024年4月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「前月同様、大幅な資金流入超」
資金流出入額は約1兆3,760億円の流入超となり、前月(約1兆1,630億円の流入超)と同様、大幅な資金流入超となった。
資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、「外国株式型」(約7,410億円)、「国内株式型」(約3,550億円)、「エマージング株式型」(約2,010億円)となった。「外国株式型」の月次流入額は、新NISA制度が開始された2024年1月から3月には9,000億円前後で推移していたものの、主要株価指数が6ヵ月ぶりに下落したこともあり、前月(約8,570億円)対比で減少した。一方、「国内株式型」は4ヵ月ぶりに下落した押し目買いなどにより、前月(約1,220億円)対比で流入額が大きく増加した。
資産別の資金流出では、流出額の大きい順に、「外国債券型」(▲約170億円)、「不動産投信型」(▲約110億円)、「国内債券型」(▲約70億円)となった。当月は、米国の利下げ観測が後退する中、金融政策決定会合後の日銀総裁の発言が円安容認とも受け取られたことで円安が進行し、利益確定売りの増加などが外国債券型の資金流出超に影響したと考えられる。不動産投信型は10ヵ月連続で資金流出超となった。
個別ファンドでは、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ)(約1,810億円)が1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ)(約1,510億円)、次いで3位には「アライアンスB・米国成長株投信 D」(アライアンス)(約980億円)がランクインした。流入上位ファンドの顔ぶれに大きな変化はなかった。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「国内外の株式は4ヵ月ぶりに下落」
4月の金融市場は、インフレの根強さが意識されたことで米国の利下げ観測が後退し、内外株式は4ヵ月ぶりに下落した。このほか、中東における地政学リスクの高まりを背景に、金価格は大きく上昇した。
株式市場は、主要国を中心に下落した。
月上旬の米国株式は、消費者物価指数(CPI)が上振れたことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が後退し、株価は下落した。月中旬は中東情勢の緊迫化や一部半導体企業の業績不透明感などにより下落した。月下旬は一部ハイテク企業の良好な決算を受けて上昇する局面もあったが、雇用関連指標が予想を上回ったことでインフレの根強さが意識され、株価は下落して終えた。
欧州株式は、米国株式同様、長期金利の上昇や中東情勢の緊迫化で株価が下落した。ただし、欧州中央銀行(ECB)が引き続き6月の利下げ開始を示唆していることは株価の下支え要因となった。
日本株式は、月上旬は中東の地政学リスク上昇やそれに伴う原油価格の上昇により、リスク回避の動きが強まり、株価は下落した。月中旬は、半導体セクターの業績見通しの不透明感や米長期金利上昇による米ハイテク株安に引きずられて下落した。その後、イランとイスラエルの緊迫感が更に高まった際には原油価格高騰によるスタグフレーションも意識され、日経平均株価が1,000円超下落する日もあった。月下旬は、一部企業の決算が堅調だったことや、為替市場における円安進行から株価は上昇したが、月間では4ヵ月ぶりの下落となった。
債券市場は、米国金利、国内金利ともに上昇した。米国10年国債利回りは、月間を通して上昇した。製造業景況感や雇用統計、CPIが予想を上振れたことで、インフレの根強さが懸念された。FRBパウエル議長は利下げの先送りを示唆したが、一段の利上げについては否定的な見解を示した。
日本10年国債利回りは、月上旬はFRBの利下げ観測後退に伴う米長期金利上昇や日銀の追加利上げ観測から、上昇した。月中旬はFRBの利下げ観測が一段と後退したことで上昇幅を広げたが、月下旬は日銀が金融政策の現状維持を決定したことから、小幅に低下した。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに大きく円安が進行した。米ドル・円は、月前半は米CPIが上振れたことで、 FRBの利下げ観測後退から円安・米ドル高が進行した。月後半は日銀植田総裁の発言が円安容認と受け止められ、一時160円を超える円安・米ドル高となった。しかし、月末には政府・日銀による為替介入とみられる動きから、円は買い戻された。
ユーロ・円は、月前半は日欧の金利差や地政学リスクなどが要因で、方向感の定まらない展開となった。月後半は日銀の追加利上げ観測が後退したことから、急速に円安・ユーロ高が進行した。
これらを背景に、当月は主に海外資産のリターンがプラスとなった。株価や債券価格は下落したものの、外国為替市場で円安が進行したことがプラスに寄与した。また、日銀金融政策決定会合で現行の金融政策の維持が決定されたことなどを背景に国内リートもプラスとなった。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数は前月から減少、設定額は増加」
当月の新規設定は17本と前月(24本)から減少したが、設定額は約1,140億円と前月(約850億円)から増加した。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「フィデリティ・新興国中小型成長株投信」(フィデリティ)(約770億円)、次いで「みずほサステナブルファンドシリーズ-LO・サーキュラー・エコノミー」(AM-One)(約190億円)となった。
1位のフィデリティ・新興国中小型成長株投信は、新興国の国内経済の成長から恩恵を受ける中小型株式を主要投資対象とし、同社アナリストの徹底的な銘柄調査・分析に基づき幅広く分散投資を行う。2位のみずほサステナブルファンドシリーズ-LO・サーキュラー・エコノミーは、世界の企業の中から、サーキュラーエコノミー(資源を循環的に利用しつつ付加価値を生み出すことを目指す、循環型の社会経済システム)の実現に寄与する事業に取り組み、成長が期待される企業の株式に投資し、約40銘柄~60銘柄のポートフォリオを構築する。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、4月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)