【三宅香帆の本から開く金融入門】
お金の知識の「基礎」固めに最適 『みんなが欲しかった! FPの教科書3級』
仕事に必要なくても、勉強すると良い?「お金」の資格
FP3級、という資格のことをご存じだろうか?
ファイナンシャル・プランナー(ファイナンシャル・プランニング技能士)とは金融に関する専門知識をもって顧客の相談にのる職業のことで、1~3級がある。つまりFP3級とは、ファイナンシャル・プランナーの資格のなかでもっとも簡単なランクなのだ。
このFP3級、金融系の企業など、会社によっては従業員に受験を義務付けているのだが……実は会社で必要でなくとも、金融に興味のある人は勉強してみると良い資格である、といわれている。
というのも、FP3級の勉強で得られる知識というのは、一般的な社会人として生きるのに必要な「お金に関する情報」が網羅的にまとまっているからである。
今回紹介する『みんなが欲しかった! FPの教科書3級』は、FP3級の資格試験を受ける際の参考書である。これを読んでおけば、試験に必要な知識はすべて手に入るな一冊となっている。
資格試験のサポートを行う会社であるTAC出版から刊行された本で、新しく法律が改正された箇所も更新されているので、誰もが安心して読むことができるのではないだろうか。
将来の資金計画、どう見積もる?
本書の目次は「ライフプランニングと資金計画」「リスクマネジメント」「金融資産運用」「タックスプランニング」「不動産」「相続・事業承継」に分かれている。
個人的には、試験を受けなくともこの一冊を読むだけでもとても勉強になるなあ、と心底思った。
たとえば最初の「ライフプランニングと資金計画」の章で教えられる知識では、「実際にファイナンシャル・プランナーが顧客の資金計画を見積もる時にどんなふうに試算するのか」が理解できるからだ。
たとえばファイナンシャル・プランナーが顧客のライフプランニングを行う際は、まず次のものをつくる。
①ライフイベント表(これから家族にどんなライフイベントがある予定なのか、年ごとに時系列で書き出した表)
②キャッシュフロー表(現在の収支に基づき、将来の収支と貯蓄残高予想をまとめた表)
③個人バランスシート(資産と負債を対照させるための表)
この①~③をそれぞれつくったうえで、今後の資金計画を立てるのだ。資金計画は、これから子供を産む予定の人であれば「教育資金プランニング」、住居購入予定の人であれば「住宅取得プランニング」、老後のことは「老後資金プランニング」とそれぞれの状況にあわせてプランニングをおこなう。
このような表の作り方や、プランニングの計算式を、FP3級の勉強によって理解することができるのだ!
「専門家にしかできなそうな複雑な人生のお金の見積もりを、本書を勉強すれば、自分でできるようになるかもしれない(あるいは自分では難しくとも実際に将来FPに相談したくなったとき、計算式の意味がわかるかも)」ということを知り、私は面白そうかも、と思うようになった。
給与明細の見方、わかってますか?
あるいは、税金の知識を得られることも、FP3級を勉強する大きなメリットだと思う。
とくに新社会人をはじめとして、社会人になったばかりの時は、給料からいったい何が引かれて手取りの金額になっているのか、よくわからないのではないだろうか?
実際、自分が会社員だったとき、給与明細を眺めても雇用保険や住民税がいったいどうしてこの金額になっているのか、私はよくわかっていなかった。が、本書にはそれらの知識もきちんとまとまっている。
社会保険には医療保険や介護保険や年金保険、労災保険や雇用保険があり、それは会社員の場合、給与からあらかじめ天引きされている。そのため給与明細にはそれが書かれているけれど、実際に自分が金額を意識することは少ない。が、やはり知っていて損は決してないはずである。
ましてや私と同じようにフリーランスになるかもしれない人は、さらに社会保険の知識は知っておいた方がいいだろう。
あるいは新NISAをきっかけに投資に興味を持った人も、この本を読むことをおすすめしたい。金利や債券や為替の知識も、本書の「金融資産運用」分野に含まれるからだ。
お金の話の「基礎」固めに最適
と、このように本書を読めば「ひととおりお金にまつわる一般常識の知識」を得ることができる、とてもお得な一冊となっている。
資格というと怯む人もいるかもしれない(私もである)。しかし本書を理解することができれば、「お金のことはよくわからない」「お金の話が苦手」といううっすらとした金融に対する苦手意識のようなものは減るのではないだろうか。「この一冊を理解できれば、世の中の金融知識の基礎は網羅できるのか」と思えるだけで、お金に対する不安は少し、減る気がする。なんといっても、わからないのが一番不安なのだ。
この春、給与明細の詳細な箇所がよくわからなかったり、確定申告に不安を覚えたり、投資に興味を持ったりした人。ぜひ本書を読んでみてほしい。実際に試験を受けなくとも、勉強になるところは大いにあるはずだ。