失業手当が延長される?
公共職業訓練を受けると、失業手当が100万円増えるのは本当か
提供元:Mocha(モカ)
定年退職後、生活費を補てんするために再就職を希望する人もいるでしょう。そんなとき、スキルアップを目指して公共職業訓練を受けるという選択肢もあります。
公共職業訓練は失業手当を受給しながら講座を受講でき、場合によってはスキルを磨きながら失業手当を増やせるかもしれません。今回は、定年後に受けたい公共職業訓練について解説します。
公共職業訓練とは、どんな制度?
公共職業訓練とは、主に雇用保険の基本手当(失業手当)を受給している人が、再就職に役立つスキルや知識を習得できる公的制度です。失業手当をもらいながら、就職に必要なスキルを身に付けることができます。また、公共職業訓練の受講期間中に失業手当の受給が終了する場合は、講座修了まで受給期間が延長されます。そうなれば、失業手当の受給額を増やすことも可能です。
公共職業訓練は、国や都道府県の訓練施設や、都道府県が委託した民間教育訓練機関で実施されます。その内容は、ものづくり系(機械、電気、建築、造園、塗装、ファッションなど)、情報系(JAVA、プログラミング、Webデザインなど)、福祉・医療系(介護サービス、医療事務など)、事務・サービス系(OA事務、財務、総務、旅行、宅建など)など多岐にわたり、さまざまな講座が用意されているのでチェックしてみましょう。
●公共職業訓練の受講料
公共職業訓練は、テキスト代など一部は実費負担が必要ですが、講座は基本的に無料で実施されます。
●公共職業訓練で支給される手当
訓練施設に通うために公共交通機関や自動車などを利用する場合、通所手当(条件あり・最高4万2500円まで)が支給されます。
また、ハローワークが再就職に必要だと判断し、受講を指示する講座を受ける場合、失業手当とは別に、1日500円(上限40日)の受講手当が支給されます。
さらに、訓練を受ける際、家族と別居して受講する場合、寄宿手当(月額1万700円)が支給されます。
●訓練期間
訓練期間は講座にもよりますが、おおむね3ヵ月~2年間です。
●受講には選考試験がある
公共職業訓練では、申し込み後に筆記試験が実施され、試験に合格すると訓練を受けることができます。また、講座によっては筆記試験の後、面接が実施される場合もあります。
公共職業訓練を受けるには失業手当に一定の残日数が必要
公共職業訓練を受講するには、失業手当の所定給付日数に一定の残日数が必要です。所定給付日数とは、雇用保険の基本手当(失業手当)を受給できる日数のことで、雇用保険の被保険者期間に応じて決まっています。
定年退職の場合、所定給付日数は以下の通りです。
<公共職業訓練の所定給付日数>
また、下記は定年退職後、公共職業訓練を受ける場合に必要な所定給付日数の残日数です。
ちなみに定年退職の場合、失業手当の給付制限はありません。
<公共職業訓練を受ける場合に必要な所定給付日数の残日数>
公共職業訓練を申し込む際には、所定給付日数の残日数を確認しましょう。
公共職業訓練により失業手当が100万円増えるかも
公共職業訓練を受講すると、受講中に失業手当の所定給付日数が終了しても、講座修了まで受給期間を延長できます。そのため、場合によっては失業手当を100万円以上増やせることがあるかもしれません。
ではここで、失業手当が100万円以上増えるケースを見てみましょう。
【事例:Aさんの場合】
・勤続20年以上、60歳で定年退職
・失業手当の所定給付日数:150日
・基本手当日額:7,294円
・公共職業訓練の受講期間:6ヵ月(180日)
・所定給付日数の必要な残日数:31日以上
・Aさんの訓練開始日における所定給付日数の残日数は40日
Aさんが失業手当を受給できるのは150日ですが、受講期間が180日なので失業保険の受給額を増やすことができます。そこで、どれくらい増やせるのか試算してみます。
Aさんは受給期間を40日残して180日間の講座を受講するので、下記の期間、受給期間を延長できます。
受講期間180日-残日数40日=140日(延長となる期間)
延長期間が140日の場合、受給できる失業手当は以下の通りです。
受給延長期間140日×基本手当日額7,294円=102万1160円
つまりAさんは60歳で定年退職後、公共職業訓練を180日間受講することで、失業手当を102万1160円も増やすことができます。
このように、ケースによっては失業手当を100万円以上増やすことも可能です。
公共職業訓練をフル活用しよう
公共職業訓練は、失業手当を受給中の人が再就職に役立つスキルや知識を習得できる制度です。基本的に無料で受講でき、場合によっては交通費などの手当ももらうことができます。訓練中に失業手当の受給期間が終わっても、講座修了までは延長して失業手当をもらえるので、場合によっては受給額を増やすことも可能です。
定年退職後も働くことを希望する場合は、再就職に役立ち、失業手当も増やすことができる公共職業訓練を利用してみてはいかがでしょうか。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 前佛朋子]
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