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~データセンターは液体冷却へ~

生成AIが電力を爆食い

提供元:岡三証券

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サーバーやネットワーク機器などを収容する施設「データセンター」の需要が拡大しており、世界のデータセンターの市場規模は2028年に4,387億ドルに達すると見込まれています。データセンターは、コンテンツの配信やクラウドサービスの基盤となるITインフラであることから、人々のネット利用時間の増加や企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)強化がデータセンター需要を押し上げています。

近年ではChatGPTに代表される文字や画像、プログラミングコードなどを作成できる生成AI(人工知能)の進化・普及により、データ処理量が爆発的に増加しています。なぜなら、生成AIは有益な回答を返すために膨大な量のデータに基づいた学習と推論が必要なためです。実際、クラウドサービスや動画配信、SNSを提供する企業を中心に、データセンターへの設備投資が拡大する見通しです。

マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、4社合計の2024年1-3月期の設備投資額は前年同月比30%増の443億ドルとなりました。今後も大手IT企業による設備投資額は増加が見込まれており、データセンター需要をけん引すると予想されます。

電力消費量が急増する見込み

そのなかで、データセンターの電力消費量の増加が問題視されています。一部調査機関によると、2026年には世界のデータセンターの年間電力消費量が2022年比で2.2倍の1,000TWh(テラワット時)以上に急増する可能性があるとされています。これは、日本の総電力消費量939TWh(2022年時点)に匹敵する量です。

電力消費量の増加はデータセンターの純増だけでなく、内部のAI向けに用いられる高性能なGPUサーバーが従来型のサーバーに比べ、発熱量、電力消費量が格段に高いことなどにも起因しています。従来のファンやヒートシンク(集めた熱を空気中に効率良く放出することで冷却を行う部品)を用いた空気冷却(空冷)で、増大する熱負荷に対応していくには限界があると指摘されており、その課題を解決する策として液体冷却(液冷)が注目されています。

液冷により電力使用効率を高める

データセンターの電力使用効率を示す指標で、データセンター全体の消費電力をサーバーなどのICT機器の消費電力で割り、数値が1.0に近いほど効率的とされる「PUE」で見ると、従来の空冷方式のPUE値が概ね1.5~1.7であるのに対し、コールドプレート(循環する冷却液により熱を奪う部品)を用いた液冷方式はPUE値を1.2程度にすることが可能です。なぜなら、水のような液体は、空気のような気体に比べて、熱伝達率・熱伝導率ともに大きいからです。そのため、液冷は空冷よりも、熱を効率的に取り除くことができ、消費電力が小さいという特徴を有しています。

切り札となる液浸冷却システム

液冷方式のうち、より高度な冷却システムとして、液浸冷却システムがあります。これは、フッ素系不活性液体やシリコンオイルなど絶縁性(電気を通さない性質)のある冷媒で満たした液浸槽の中に、サーバーなどのIT機器を浸し、絶縁性冷媒を冷却・循環させることで機器が発する熱を処理するという方法です。

液浸冷却システムには、主に、1相式と2相式の2つのタイプがあります。
1相式は、冷却液が常に液体のままで、冷却機器との設置面積が大きいため、効率的な熱伝達が行われます。もっとも、冷却液が循環するため、余熱を外部に排出する必要があります。一般的には、冷却液を外部の冷却装置や熱交換器に送り、熱交換などによって、放熱する仕組みが必要となります。

他方で、2相式は、冷却液が沸騰することで蒸気となるため、蒸気の拡散効果により、高い冷却効果が得られるなどの特徴を有しています。液浸冷却システムは省電力化に加え、従来の空冷方式より設備の使用面積が小さく、サーバールーム内の省スペース化を実現できるほか、ファンなどの設備が不要なため冷却時の騒音削減効果も見込まれます。そのため、小型のデータセンターや都市部でのデータセンター建設時にも同システムの導入が増加すると予想されます。

図表:一部主要国・地域のデータセンター電力消費量の推移

*中国は2022年ではなく、2020年推定値
※2024年1月時点、2022年は推定、2026年は予測値
出所:Statistaのデータを基に岡三証券作成
著者/ライター
近藤 尚哉
2016年に岡三証券入社。
入社以来、約7年間営業職を務めた後に、投資戦略部に配属となる。
現在は米国株のストラテジスト業務に携わり、テレビへの出演や新聞等でコメント。
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