なんでこんなにボーナスの手取りが少ないの?と思ったときに読む話|社会保険料と税金の控除方法を弁護士が解説
提供元:Money Canvas
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ボーナス(賞与)はまとまった収入になりますが、額面よりも手取り額がかなり少なくなることがあります。
ボーナスからは、社会保険料と源泉所得税が控除されます。支給額によっては、社会保険料と源泉所得税が非常に高額となり、手取りが大幅に減ってしまうケースもあるので注意が必要です。
本記事では、ボーナスの手取り額を計算する方法を解説します。なぜボーナスの手取りが少ないのか疑問に感じている方は、本記事を参考にしてください。
ボーナスから控除されるもの|社会保険料と源泉所得税
会社が従業員に対してボーナスを支給する際には、社会保険料と源泉所得税を控除します。
1. 社会保険料
健康保険料、厚生年金保険料および雇用保険料の従業員負担分が控除されます。
2. 源泉所得税
給与の支給額から、所得税が暫定的に控除されます。
最終的な所得税額は、年末調整または確定申告の段階で決まり、徴収済みの源泉所得税との差額があれば精算が行われます。
ボーナスの支給額は、毎月支払われる給与よりも高額となる傾向にあります。その場合、社会保険料や源泉所得税の控除額が大きくなり、額面に比べて手取りが大幅に減ってしまうことも少なくありません。
特に少子高齢化に伴い、社会保険料率は以前に比べて大幅に高額となっている状況です*1。
ボーナスからも、2003年4月から社会保険料が控除されるようになり、手取り額の目減りが顕著に見られるようになりました。
ボーナスに課される社会保険料の計算方法
ボーナスからは、社会保険料として健康保険料、厚生年金保険料および雇用保険料が控除されます。それぞれの金額の計算方法を解説します。
ボーナスに課される健康保険料
ボーナスに課される健康保険料の額は、以下の式によって計算します。
健康保険料の額=標準賞与額×健康保険料率(従業員負担分)*2
※標準賞与額:税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額。ただし、同一年度における累計額は573万円が上限となります。
※保険料率は、都道府県によって異なります。
※従業員負担分は、保険料率の1/2です。
(例)
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
税引前の賞与総額:60万1,500円
健康保険料の額
=60万1,000円×11.58%×1/2
=3万4,798円
ボーナスに課される厚生年金保険料
ボーナスに課される厚生年金保険料の額は、以下の式によって計算します。
厚生年金保険料の額=標準賞与額×厚生年金保険料率(従業員負担分)*2
※標準賞与額:税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額。ただし、月間150万円が上限となります。
※従業員負担分は、保険料率の1/2です。
(例)
令和6年度
税引前の賞与総額:60万1,500円
厚生年金保険料の額
=60万1,000円×18.300%×1/2
=5万4,992円
ボーナスに課される雇用保険料
ボーナスに課される雇用保険料の額は、以下の式によって計算します。
雇用保険料の額=賞与支給額×雇用保険料率(従業員負担分)*3
(例)
令和6年度
事業の種類:一般の事業
税引前の賞与総額:60万1,500円
雇用保険料の額
=60万1,500円×0.6%
=3,609円
ボーナスに課される源泉所得税の計算方法
ボーナスから控除される源泉所得税額の計算方法には、以下の3パターンがあります*4。
1. 原則
2. ボーナスの額が前月給与の10倍を超える場合
3. ボーナス支給の前月に給与の支払いがない場合
原則
ボーナスから控除される源泉所得税額は、原則として以下の手順で計算します。
(a)前月の給与から社会保険料等(=社会保険料と小規模企業共済等掛金)を差し引きます。
(b)算出率の表*5を用いて税率を求めます。
(c)以下の式によって源泉所得税額を求めます。
源泉所得税額=(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(b)の税率
(例)
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
事業の種類:一般の事業
扶養親族:2人
前月の給与から社会保険料等を差し引いた額:30万円
ボーナスの額面(社会保険料控除前):60万1,500円
ボーナスから社会保険料等を差し引いた額
=60万1,500円-健康保険料3万4,798円-厚生年金保険料5万4,992円-雇用保険料3,609円
=50万8,101円
税率:4.084%(甲欄の場合)
源泉所得税額
=50万8,101円×4.084%
=2万0,750円
ボーナスの額が前月給与の10倍を超える場合
ボーナスの額が、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額の10倍を超える場合は、ボーナスから控除する源泉所得税額を以下の手順で計算します。
(a)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記の「÷6」を「÷12」とする。
(b)上記(a)+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
(c)上記(b)の金額を「月額表*6」に当てはめて税額を求める。
(d)上記(c)の税額-(前月の給与に対する源泉徴収税額)
(e)上記(d)の税額×6
※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記の「×6」を「×12」とする。
ボーナス支給の前月に給与の支払いがない場合
ボーナスが支給される月の前月において給与の支払いがない場合は、ボーナスから控除する源泉所得税額を以下の手順で計算します。
(a)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記の「÷6」を「÷12」とする。
(b)上記(a)の金額を「月額表*6」に当てはめて税額を求める。
(c)上記(b)の税額×6
※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記の「×6」を「×12」とする。
ボーナスの手取り計算例
本記事で紹介した計算例を総合すると、以下の例1においては、ボーナスの手取り額は48万7,351円となりました。
(例1)
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
事業の種類:一般の事業
扶養親族:2人
前月の給与から社会保険料等を差し引いた額:30万円
ボーナスの額面:60万1,500円
健康保険料:3万4,798円
厚生年金保険料:5万4,992円
雇用保険料:3,609円
源泉所得税:2万0,750円
(控除額合計:11万4,149円)
ボーナスの手取り:48万7,351円
なお、毎月の給与やボーナスの金額が高くなれば、その分控除される社会保険料や源泉所得税の金額も増えます。
たとえば、例1から(社会保険料等控除後の)給与とボーナスの額面を2倍に増やすと、以下のようになります。
例2における控除額は、例1に比べて約3.5倍となりました。ボーナスの額面は2倍になりましたが、手取り額は70%弱の増加にとどまっています。
(例2)
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
事業の種類:一般の事業
扶養親族:2人
前月の給与から社会保険料等を差し引いた額:60万円
ボーナスの額面:120万3,000円
健康保険料:6万9,654円
厚生年金保険料:11万0,074円
雇用保険料:7,218円
源泉所得税:20万3,259円
(控除額合計:39万0,205円)
ボーナスの手取り:81万2,795円
まとめ
ボーナスの支給額が上がると、その分控除される社会保険料や源泉所得税の額が増えるため、手取りが目減りすることになります。
ボーナスを考慮した資金計画を立てる際には、社会保険料や源泉所得税がどの程度控除されるのかについても念頭に置いて検討を行いましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。
出典
*1 全国健康保険協会「保険料率の変遷」
*2 全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
*3 厚生労働省「雇用保険料率について」
*4 国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」
*5 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」
*6 国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)月額表」
(Money Canvas)
企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。
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