投資信託のトレンドが分かる!
2024年5月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2024年5月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「前月同様、大幅な資金流入超」
資金流出入額は約1兆1,950億円の流入超となり、前月(約1兆3,740億円の流入超)と同様、大幅な資金流入超となった。
資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、「外国株式型」(約8,510億円)、「エマージング株式型」(約2,200億円)、「国内株式型」(約1,000億円)となった。「外国株式型」の月次流入額は主要株価指数が回復したこともあり、前月(約7,410億円)対比で流入額が増加した。一方、「国内株式型」は株価の変動が乏しく、前月(約3,550億円)対比で流入額が減少した。
資産別の資金流出では、流出額の大きい順に、「不動産投信型」(▲約450億円)、「国内債券型」(▲約130億円)、「その他」(▲約110億円)となった。当月は、日銀の国債買い入れ減額や早期利上げの観測が高まったことにより、国内金利が上昇したことなどが国内債券型や不動産投信型の資金流出超に影響したと考えられる。不動産投信型は11ヵ月連続で資金流出超となった。
個別ファンドでは、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ)(約2,010億円)が1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ)(約1,610億円)、次いで3位には「アライアンスB・米国成長株投信 D」(アライアンス)(約1,030億円)がランクインした。流入上位ファンドの顔ぶれに大きな変化はなかった。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「海外株式は前月から反発」
5月の金融市場は、米国のインフレ鈍化や半導体大手企業の好決算により、海外株式が上昇した。一方、国内金利が前月に続いて上昇したことで、国内債券、国内リートはマイナスとなった。
株式市場は、主要国を中心に上昇した。月上旬の米国株式は、雇用統計や消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が高まり、NYダウは4万ドルを超えて過去最高値を更新した。月下旬はFRBが利下げに慎重な姿勢を示したことから上昇幅を縮めた。一方、米半導体大手企業の好決算により、ナスダック総合指数は底堅く推移した。
欧州株式は、月上旬は欧州中央銀行(ECB)による6月の利下げが意識されたことや、欧州企業の決算が好感されたことから、ストックス欧州600指数は過去最高値を更新した。月下旬は米欧の堅調な経済指標を受けて利下げ観測が後退し、株価は上昇幅を縮めた。
日本株式は、月上旬は国内企業の2024年度事業計画において、保守的な為替予想や原材料費、人件費等のコスト増加による減益見通しが示されたため、株価は下落した。その後、米CPIが鈍化したことや、米国のハイテク株高につられて上昇した。月下旬は、国内長期金利が上昇し、銀行株等は買われたが、半導体株は下落に転じるなど、業種によってまちまちな結果となった。最高値を更新する海外株式と比較して上値の重い展開が続き、日経平均株価は38,000円~39,000円のボックス圏内で推移し、横ばいとなった。
債券市場は、国内金利は上昇し、米国金利は低下した。米国10年国債利回りは、月上旬は雇用統計やCPIが市場予想を下回り、インフレの鈍化が示されたことで、低下した。月下旬はFRB高官の発言や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が利下げに慎重な内容であったことから、低下幅が縮小した。日本10年国債利回りは、月間を通して上昇した。月上旬は日銀の国債買い入れ減額観測から金利が上昇した。月下旬は日銀による早期の利上げ観測が高まったことや、米国金利の上昇につられて、上昇幅を広げた。
為替市場は、米ドル・円はやや円高、ユーロ・円は円安となった。米ドル・円は、月上旬は政府・日銀による為替介入とみられる動きから、一時的に円高・米ドル安に振れた。その後も米国の経済指標の下振れにより円高・米ドル安となる局面もあったが、月下旬は、FRBが利下げに慎重な姿勢を示したことから、円安・米ドル高に戻る動きがみられた。
ユーロ・円は、月初は一時的な円高・ドル安につられて、円高・ユーロ安に振れた。その後は、ユーロ圏の経済指標が良好な結果を示し、景気の底入れが期待されたことや、賃金上昇率が上振れしたことなどから、月間を通じて円安・ユーロ高で推移した。
これらを背景に、当月は国内債券、国内リートを除く資産のリターンがプラスとなった。欧米での利下げ観測の高まりから、月前半に主要株価指数は最高値を更新した。一方、日銀の金融政策正常化観測が高まり、国内金利が上昇したことで、国内資産は海外資産に劣後するリターンとなった。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数は前月と同程度、設定額は減少」
当月の新規設定は16本と前月(17本)と同程度の水準であったが、設定額は約560億円と前月(約1,140億円)から減少した。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2024-05(限定追加型)」(三井住友DS)(約480億円)、次いで「スマート・コントロール世界株式戦略ファンド」(三井住友トラスト)(約30億円)となった。
1位の三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2024-05(限定追加型)は、信託期間約4年の間に満期を迎える世界各国の米ドル建ておよびユーロ建ての債券を主要投資対象とし、対円で為替ヘッジを行い満期まで持ち切ることで、円ベースで安定したリターンの獲得を目指す。2位のスマート・コントロール世界株式戦略ファンドは、定量運用に強みを有するマン・グループ傘下のニューメリック社が運用し、主要国の時価総額上位約1,000銘柄に対し個別銘柄の値動きの特徴をモデル分析し、ポートフォリオのリスク低減と運用効率の向上を目指す。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、5月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)