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「魅力ある日本企業を探索しよう!初心者でもわかる企業分析術~会社四季報から~「今後の有望成長企業群編」」

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本年1月からいよいよ新しいNISAが始まりましたが、これを機に資産形成を考えている方や既に始めた方のなかには、投資先の選定に悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、株式投資・企業分析のバイブルとも評される「会社四季報」の編集委員として、長年に渡り数多くの企業を取材・分析してこられた田宮寛之氏に、「成長企業を見つけるための5ポイント」と「グローバルニッチトップ企業」をキーワードに、「今後の有望成長企業群」についてお話しいただきました。

本講座はJPX公式Youtubeチャンネルから視聴可能です。

なお、本記事(本講座)は、情報提供を目的としたものであり、特定企業や特定銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。

成長企業を見つけるための5ポイント

成長企業を見つけるにあたって、着目したいポイントは上記の5つです。次の章から1つずつ解説していきます。

①世界的な人口増加

人口は経済に非常に大きな影響を与えます。世界の人口は年々増加しており、2022年には80億人を突破しました。国連の予想では2050年に97億人に達する見込みです。人口が増加することは、ポジティブな側面もあれば、ネガティブな側面もありますが、そのネガティブな側面に対応するという観点からもビジネスチャンスが存在します。

例えば、「水」を作るビジネスです。

地球は水の惑星と言われていますが、その水のほとんどが海水であり、真水はわずか0.01%に過ぎず、人口増加が進むにつれて真水はより貴重な資源となります。そこで、真水が不足する前に作ってしまおうという取り組みが「水」を作るビジネスです。

真水資源が豊富な日本ではあまり聞きなじみがないかもしれませんが、世界的には大きなビジネスになっています。特に中東では、海水を真水にする工場が多く設置されています。中東は陸地面積の大半が砂漠であり、その陸地は海で囲われており、真水資源は豊富とはいえません。そこで中東各国は真水精製工場を設置し、そこで精製した真水を生活に利用しています。

かつては海水を気化させることで真水を精製していましたが、現在では海水をフィルターでろ過することで塩分を取り除き真水を精製しています。この海水をろ過する際に使用するフィルター分野で日本企業は圧倒的な強みを有しています。

具体的にどのような会社がこの分野で強みを有しているのかというと、日東電工(6988)、東レ(3402)、東洋紡(3101)の3社でフィルターの世界シェア5割近くを占めています。

また、フィルターだけでなく、海水を工場に運搬するにあたり、海水の汲み上げに必要なポンプを製造している会社として、荏原製作所(6361)や酉島製作所(6363)があります。

さらに、工場そのものを建設するプラントメーカーと呼ばれる会社として、日立造船(7004)があります。同社は世界に約50か所の真水精製工場を作ってきた実績があり、真水精製工場だけでなく化学工場や半導体工場など多岐に渡る工場設立の実績があります。ちなみに、日立造船という会社名ではありますが、日立製作所のグループ会社ではなく、現在は造船業でもありません。

世界的な人口増加に着目すると、その他にも食糧不足の懸念も考えられます。この観点からは、農作物の生産に関連したビジネスも成長があるのではないでしょうか。

例えば、農業機械に関するビジネスが挙げられます。農業機械と耳にすると日本の農村部における小規模ビジネスのイメージがあるかもしれませんが、日本の農業機械メーカーはグローバルに展開しています。

この分野で国内最大手のクボタ(6326)は売上高が3兆円を超えていますが、その売上高の約80%は海外です。ちなみに売上高が3兆円を超えている上場会社は、約3900社のうち約60社しかありません。

また、農薬や化学肥料といった分野にも着目できます。日本では農作物を作るにあたり、無農薬や有機肥料などが注目されがちですが、新興国や発展途上国の農家では有機栽培のみでの大量生産は難しく、農薬や化学肥料が必要不可欠となっています。

農薬分野では日本農薬(4997)や日産化学(4021)、化学肥料分野では多木化学(4025)や片倉コープアグリ(4031)などが注目されます。

しかし、農業機械や農薬、化学肥料が整っていても、農作物の種子の品質が優れていければよい作物は育ちません。

そこでご紹介したいのが、サカタのタネ(1377)です。この会社は野菜や果物の種子を製造している国内トップメーカーであり、世界170か国で同社が製造した種子が販売・栽培されています。同社で特に有名なものがブロッコリーです。ブロッコリーは日本に限らず世界でも人気のある作物ですが、世界中で栽培されているブロッコリーの種子の6割を同社が製造しています。また開発という点では、アンデスメロンを同社が開発しました。

②国内の少子高齢化

日本の人口は年々減少しており、2024年4月1日現在で日本の人口は1億2400万人(前年比▲55万人)となっています。これはこの1年間に鳥取県の人口(54万人)と同程度の人口が減少したということです。とある試算によると、2056年には1億人を割れるとも言われています。

さらに、65歳以上の高齢者の比率も高くなっており、人口減少と高齢化が同時に進行しているため日本では様々な問題が生じています。よく話題になるのは年金や社会保障ですが、それだけでなく、国内で物やサービスが売れなくなることも非常に大きな問題です。

これらを鑑みると、一見日本企業は将来性に不安を抱えているようにも思えますが、前述のように世界で見れば人口が増えています。そこで、今後の日本企業は海外展開を加速することが考えられます。その海外展開先の国として着目したいのが、アフリカ諸国です。

現在、アフリカでは人口が爆発的に増加しているだけでなく平均年齢も低く、また2000年代から経済成長が著しく進んでいます。国連の予想では、2050年には世界の人口の約4分の1がアフリカ人になるとされています。アフリカの経済成長性を示す事実として、携帯電話普及率があります。日本の携帯電話給率は137%ですが、ケニアの携帯普及率は113%となっており、日本と比較しても遜色ない程度まで携帯電話が普及していることがわかります。

このように経済が成長しており人口も増加しているということは、ビジネスの対象として優れたエリアであると考えることができます。ここで注目したい業界が自動車関連業界と化学業界です。

自動車関連業界では、豊田通商(8015)に注目してみましょう。同社はアフリカでオートマークという中古車販売店を展開しています。日本車は耐久性に優れているだけでなく高性能であると言われており、価格が安価となる中古車はアフリカで人気が高く、製造から10年以上経過した日本車が多く普及しています。

また、化学業界としてはカネカ(4118)という化学繊維を作っている会社に注目です。化学繊維はアフリカでは女性用のエクステンションに使われています。アフリカでは非常に高いエクステンション需要があり、アフリカ女性の2人に1人がカネカのエクステンションを使用しています。

ここまでは海外展開に目を向けていきましたが、国内で少子高齢化が進行するにつれて、重要になるのがコンビニ関連のビジネスです。これは少子高齢化の進行や女性の社会進出が一般的になってきたことなどから、いわゆる中食産業も更なる需要が高まることが予想されるからです。お弁当やお惣菜は百貨店やスーパーでも購入できますが、営業時間が長く店舗数も多いコンビニで購入するという方が今後は増えるのではないでしょうか。

そこで、コンビニ弁当に関連している上場会社をいくつか見てみましょう。

わらべや日洋ホールディングス(2918)はお弁当やお総菜製造を主業としていますが、この大半をセブンイレブンに販売しています。また、同様にシノブフーズ(2903)では製造しているお弁当やお総菜の大半をファミリーマートに販売しています。

その他に、お弁当やお惣菜を入れる容器も重要です。お弁当は電子レンジで温めることが前提であるため容器の耐熱性が重要であるほか、密閉性も重要になります。このような品質を満たす容器製造主業としている上場会社もあります。エフピコ(7947)はお弁当総菜容器の業界シェアは3割とナンバーワンの会社です。

③環境問題の深刻化

世界経済の成長とともに、CO2の増加や大気汚染も非常に注目されています。

これらに対応する事業として着目したいのが、鉄道ビジネスです。自動車メーカーはCO2や有害物質をなるべく排出しないように自動車の開発を行っていますが、鉄道は自動車と比較するとCO2排出量は少ないと言われています。

また、鉄道は渋滞がないという点も大きなポイントです。インドや中国では渋滞の深刻化が社会問題となっており、これらの国での鉄道ビジネスが今後期待されています。実際にアメリカのテキサス州では日本の新幹線に類するものの導入する計画があり、インドでは既に日本の新幹線の建設計画が進んでいます。

今後世界的に鉄道の普及が進むとなると、鉄道車両が注目されることが予想されます。鉄道車両メーカーの日立製作所(6501)や川崎重工業(7012)も業界を代表する会社ですが、今回注目したいのが鉄道車両の部品メーカーです。

ナブテスコ(6268)は新幹線の自動ドアのシェア100%の会社です。東洋電機製造(6505)はパンタグラフを製造しています。また、鉄道が走る上で必要な信号機製造メーカーとしては、日本信号(6741)や京三製作所(6742)、大同信号(6743)などが挙げられます。その他に、鉄道業界で不可欠となっている自動改札機はオムロン(6645)が製造しています。

ここまで、環境問題の悪化を和らげるという視点で会社を見てきましたが、これ以外にも、環境問題の深刻化による異常気象に関連したビジネス、すなわち天気予報ビジネスにも注目ができます。

気象観測をしている上場会社はウェザーニューズ(4825)とALiNKインターネット(7077)の2社です。

ウェザーニューズは海運会社や航空会社、鉄道会社向けに気象情報を提供しているほか、放送局への気象予報士派遣なども担っています。また個人向けには天気予報アプリの販売もおこなっています。

ALiNKインターネットはウェザーニューズと比較すると小規模ではありますが、天気予報専門サイトを運営しており、特に登山などのアウトドア向け天気予報に強みを有していますが、一般の方向けの天気予報アプリの販売もしています。

④インフラ整備

コンクリート製の構造物は50年以上経過すると脆くなるとされていますが、現在の日本のインフラは高度経済成長期のころに整備されたため、インフラの更新代替期を迎えています。また、前述した異常気象や大地震がインフラを襲う危険もあります。特に、政府の発表によると首都直下型地震は今後30年間で70%の確率で発生するとされており、この場合約2万3000人も亡くなるとされています。同様に南海トラフ地震も今後30年間で70%の確率で発生するとされており、こちらは32万人もの方が亡くなると予想されています。

このような自然現象に対応するため、政府は様々な対策を行っています。

これに関連する事業として、建設会社ではインフラ修繕を専門に行っているショーボンドホールディングス(1414)が挙げられます。また、建設機械メーカーでは世界でナンバーワンのタダノ(6395)という会社があります。

その他には、産業用ドローン製造業者では国内唯一の上場会社であるACSL(6232)や、作業服を製造しているワークマン(7564)、非常食を製造しているのが江崎グリコ(2206)などにも着目できます。特に、江崎グリコの商品であるビスコは、賞味期限が5年間と長いため非常食として大量に購入する自治体もあります。非常食は定期的に買い替える必要があるため、今後も定期的な需要が見込まれます。

⑤半導体関連

半導体業界はインテルやサムスンに勢いがあり、日本の半導体業界は遅れていると言われていますが、実は半導体の材料に着目すると日本の会社が高いシェアを有しています。

東京エレクトロン(8035)は、半導体製造時に各部品に薬品を塗布するための機械シェアが90%と世界ナンバーワンです。また、ディスコ(6146)は半導体の基盤を加工する機械のシェアが70%と同じく世界ナンバーワンです。そのため、両社ともに世界の半導体業界において重要な位置づけとなっています。

その他に、半導体の部品に塗布する薬品を製造している会社として、東洋合成工業(4970)がありますがこちらも世界シェア70%です。さらに、半導体の基盤に塗布した薬品を洗い流すための薬品を製造しているステラケミファ(4109)も、世界シェア70%となっています。

グローバルニッチトップ企業

ここまで、成長企業を見つけるための5ポイントについて解説しましたが、魅力ある日本企業は他にもたくさんあります。

その1つが、日本に数多く存在するグローバルニッチトップ企業です。非常にニッチな分野ですがその分野では圧倒的なシェアを誇り世界展開している会社のことです。ライバル会社が参入する余地がないため、その分野での地位をしっかりと確立できるという強みがあります。

日本電子(6951)は電子顕微鏡の世界シェアが70%です。半導体やその他バイオ関連の開発には電子顕微鏡は必要不可欠であるため、今後も大きな需要が見込まれます。また、フコク(5185)は自動車のワイパーのゴムの部分を製造しており、世界シェアが45%です。さらに、古野電気(6814)は商船用レーダーの世界シェアが40%です。

このようなグローバルニッチトップ企業は以下関連リンクの経済産業省のホームページに取り上げられていますので、他にもどんな上場会社があるのか是非チェックしてみてください。

お話を伺った方
田宮 寛之
東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日本経済新聞グループのラジオたんぱ(現・ラジオNIKKEI)に入社。株式、債券、為替などの金融マーケット取材を担当。1991年に退社。米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクとなる。
2007年、株式雑誌の『オール投資』編集長に就任。2009年、就職・採用・人事などの情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げて編集長となる。2011年~13年には『週刊東洋経済 就活臨時増刊号』の編集長を兼務、2014年から「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職。
これまで取材してきた業界は自動車、化学、食品、住宅、生保、損保、証券、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、人材ビジネスなど。
最近は学生の就職活動に関する執筆や情報配信、講演が多い。全国の大学や大学関連団体などを対象に年間約70回の講演を行っている。

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