「問題を抱える投資信託」を見極めるポイントがある!?

購入時にチェック! 投資信託の説明書「目論見書」の読み方

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特定の投資信託の情報が掲載され、購入前でも見ることができる「目論見書」。投資信託を選ぶヒントになる資料だが、情報量が多いため、なかなか読み切れないという人も多いのではないだろうか。

そこで、マネーコンサルタントの頼藤太希さんに、目論見書に書かれている内容とチェックするべきポイントを教えてもらった。

「交付目論見書」を構成する4つの要素

「目論見書には、投資信託の購入前に確認する『交付目論見書』とより詳しい情報が記載された『請求目論見書』があります。投資信託を選ぶ際には『交付目論見書』に記載されている情報で十分なので、今回は『交付目論見書』について解説していきましょう」(頼藤さん・以下同)

交付目論見書には、「ファンドの目的・特色」「投資のリスク」「運用実績」「手続・手数料等」と、大きく4つの内容が記載されている。

(1)ファンドの目的・特色
「その投資信託が投資する資産や目指す成果、目的を達成するために実践する具体的な投資方法などが記載されている欄です。例えば、『日本を含む先進国および新興国の株式市場の値動きに連動する投資成果を目指す』と書かれていたら、世界中の株式に投資するインデックス型投資信託だということがわかります。『米国の株式市場の値動きに連動する投資成果を目指す』と書かれていたら、米国株のインデックス型投資信託です」

海外の資産に投資する投資信託の場合は、この欄に「為替ヘッジの有無」も記載される。為替ヘッジとは、為替レートの変動による値動きの影響を軽減することだが、その分コストが発生する場合がほとんど。為替ヘッジのない投資信託を選ぶことでコストを抑え、為替レートの変動による利益も得られるというわけだ。

(2)投資のリスク
「その投資信託に投資することで、発生するリスクが書かれています。リスクとは、値動きの要因となるもののことで、次のようなものが挙げられます」

●価格変動リスク:株や債券、投資信託が市場で売買されることで価格が変動する可能性。
●金利変動リスク:金利上昇によって債券が下落する可能性。
●為替変動リスク:為替レートの変動によって利益や損失が生まれる可能性。
●信用リスク:株式を発行する企業の破綻などによって株価が下落する可能性。
●流動性リスク:株や債券、投資信託の市場での売買が少なくなることで損失が生まれる可能性。
●カントリーリスク:政治や経済の情勢が急変した際に損失が生まれる可能性。

(3)運用実績
「その投資信託の運用が始まった日から目論見書が発行された時点までの基準価額や純資産の推移、分配金の状況、組み入れている資産、年間収益率などが記載されています。基準価額や純資産の推移はグラフで表示されるため、ひと目でその投資信託の状況がわかるでしょう」

(4)手続・手数料等
「購入時手数料や信託報酬、信託財産留保額など、その投資信託を購入・運用する際に発生する費用がまとめられています。2024年4月から、総経費率の記載も義務付けられています。実際に運用中にかかった費用の合計値を示す指標です。基本的には総経費率のほとんどを信託報酬が占めるため、総経費率と信託報酬があまりにも乖離している投資信託は避けたほうがいいといえるでしょう」

●購入時手数料:投資信託を購入する際に一時的に発生する費用。
●信託報酬:投資信託を保有している間ずっと発生する費用。
●信託財産留保額:投資信託の解約時に発生する費用。

「コストも大切な情報ですが、この欄に記載されている『繰上償還』の条件も要注目です。繰上償還とは、その投資信託の運用が途中で停止され、保有口数に応じた金額が換金されること。つまり、投資家の意思に関係なく運用が打ち切られるということです。どのような状況で繰上償還となるのか、必ず確認しておきましょう」

必ずチェックしたい「基準価額」「純資産総額」の推移

交付目論見書に記載されている内容はわかったが、いい商品を見極めるポイントはあるのだろうか。

「交付目論見書だけでいい商品を見つけることは難しいかもしれません。交付目論見書は、あくまで投資信託の説明書に過ぎないからです。ただ、その投資信託の現状を知ることはできます。ポイントとなるのが、『(3)運用実績』に記載されている基準価額と純資産総額です」

●基準価額:純資産総額を投資信託の口数で割ったもの。その投資信託の値段を示す。
●純資産総額:投資信託が組み入れている株や債券などの資産の合計金額(時価総額)。

「基準価額・純資産の推移を表すグラフを見ることで、その投資信託が好調に推移しているかどうかがわかります。純資産総額のグラフが右肩上がりなら運用成績が伸びている、基準価額のグラフが右肩上がりなら投資家から人気があることの証明となり、その投資信託は運用しやすく、利益も出やすい循環が期待できるといえます」

ただし、交付目論見書の内容だけで判断するのは、早計だという。

「交付目論見書は、その投資信託のリスクや運用方法を説明するもので、ほかの投資信託との比較は掲載されていません。複数の投資信託を比較するなら、証券会社のホームページなどを見たほうが有益な情報を得やすいでしょう。購入したいと思う投資信託が見つかったら、最終的にその投資信託をより詳しく知るために交付目論見書を見る、というイメージでいいと思います」

交付目論見書から「問題」を見極めるポイント

交付目論見書からいい商品を見抜くことは難しいが、「問題を見つけることはできる」と、頼藤さんが教えてくれた。

「問題を抱える投資信託の特徴は明確なので、そのポイントさえ知っていれば、交付目論見書から発見できるといえます。その特徴は、次のようなものが挙げられます」

●基準価額・純資産総額が減っている
「基準価額と純資産総額がともに減っている投資信託は、資金流出が続いていることを意味します。つまり、今後成績が伸び悩んだり、運用しにくくなったりする可能性が高いということです。年間収益率もマイナスになっているものは、トータルリターン(分配金なども含めた利益から投資コストを差し引いた総収益率)が低いということになるため、リターンを得にくく、繰上償還も考えられます」

●信託報酬(総経費率)が年1.5%を超えている
「アクティブ投資信託であったとしても信託報酬が年1.5%を超えているものは、比較的コストがかかるといっていいでしょう。手数料を支払っている分、相応のパフォーマンスを出せていれば問題ないという意見もありますが、信託報酬は保有している間ずっと発生する費用なので、できるだけ低いものを選びコストを抑えることが、リターンを高くするためには重要です」

●償還日が設定されている
「償還日とは、運用期間の終了日のことで、『(4)手続・手数料等』の欄に記載されています。償還日が設定されていると長期投資ができないだけでなく、自動的に換金されるので、償還日のタイミングに資産がマイナスになっていた場合はその損失が確定してしまうということです。できるだけ損失を回避するためにも、償還日が設定されていない投資信託を選ぶほうがいいでしょう」

投資信託の説明書である「交付目論見書」。チェックするべき項目を押さえることで、かなり有益な情報を得られそうだ。気になる投資信託の交付目論見書を開き、頼藤さんが教えてくれたポイントを見てみよう。

(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
頼藤 太希
Money&You代表取締役。マネーコンサルタント。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計130万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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