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再生エネ拡大の切り札になるか?

ペロブスカイト太陽電池の将来性に注目

提供元:ちばぎん証券

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2024年5月、「エネルギー基本計画」の改定に向けた議論が始まりました。

エネルギー基本計画とは、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示すもの。2003年に初めて策定され、約3年ごとの見直しを経て今回は第7次の計画となります。

計画の柱は、2040年度に向けた電源構成目標の策定。

現行計画では、30年度に電力消費量のうち再生可能エネルギー(以下再生エネ)を36〜38%、原子力を20〜22%に引き上げ、石炭や天然ガスなどの火力発電を40%程度に抑えるとなっています。これに対し22年度の実績は、再生エネが21.7%、原子力が5.5%にとどまる一方、火力発電は7割超とまだまだ距離があります。

現行の第6次計画が策定された2021年以降、わが国のエネルギーを取り巻く環境は大きく変わりました。ロシアのウクライナ侵略はエネルギー価格の高騰と供給危機を招き、エネルギー安全保障の重要性を一気に高めました。

需要面では、今後日本国内の電力需要が増加するとの観測が台頭しています。これまでは省エネの浸透に加え、人口の減少や製造業の海外移転などを背景に、電力需要は長期にわたって減少すると予想されていました。ところが足元で急速に普及するAIとデータセンターの増加、先端半導体の拡大が電力需要を押し上げるとの見方が強まっているのです。

需要が増えるほど脱炭素の道は険しさを増しますが、世界規模で異常気象が頻発するなか温暖化対策の推進は待ったなし。深まる分断の下でも安定的なエネルギー供給を確保し、同時に脱炭素の取り組みを加速する戦略を構築しなければなりません。

6月に政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」。
2050年の脱炭素社会実現に向けて再生エネを最大限導入する方針が掲げられました。東日本大震災での原発事故で原子力に対する漠然とした不安感が多くの国民に残るなか、脱炭素時代の主力電源は再生エネ。このことに議論の余地はないと思われます。

「骨太方針」で特に注目すべきは、次世代の再生エネと期待されるペロブスカイト太陽電池と浮体式洋上風力への集中的な支援が打ち出されたことです。ここでは「革新技術の開発と社会実装の早期実現に向けた支援や制度的措置の検討、国際的な研究開発体制や国際標準の整備、人材育成やサプライチェーンの構築に向けた支援を行う」とされています。

浮体式洋上風力はまさに「読んで字の如し」。洋上に浮かべた風車で発電する方式で、陸上や海底に固定する必要がないため大規模な風力発電が可能です。一方、ペロブスカイト太陽電池とは、極薄のフィルムやガラスに「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ化合物を塗ったもので、従来の太陽光パネルに比べて厚さは100分の1、重さは10分の1と薄くて軽いのが特徴です。フィルム型であれば柔軟性に優れるため、折り曲げて設置することもできます。
私はこのペロブスカイト太陽電池のポテンシャルに注目したいと考えています。

国際エネルギー機関によると、日本は平地面積あたりの太陽光発電の容量が世界でもトップクラスですが、毎年の伸びは縮小傾向となっています。発電に適した場所がなくなってきていることが背景で、耕作放棄地の太陽光への活用など適地を掘り起こす施策の必要性が叫ばれる所以でもあります。

ペロブスカイト太陽電池であればこれまで重さがネックとなって設置できなかったビルの壁面や建物の屋上、さらに曲面の部分にも貼り付けることが可能になり、設置場所を飛躍的に増やせる可能性があります。近年、エネルギー変換効率も向上してきており、主流のシリコン太陽電池と比べても遜色ない水準になっています。東京電力は昨年11月、千代田区内幸町の再開発事業でペロブスカイト太陽電池を導入すると発表しました。2028年度に完成する地上46階建てのビルの外壁に設置する計画で、ビル全体の発電能力は大型の太陽光発電所に匹敵するとのことです。

ペロブスカイト太陽電池は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した日本発の技術です。ただ現在は、エネルギーの変換効率や耐久性といった開発段階の品質では日本に優位性があるものの、量産による商品化では中国企業が先行していると言われています。今後の官民挙げた取り組みで失地を挽回し、世界の脱炭素をリードする存在に成長することを願いたいと思います。

(提供元:ちばぎん証券)

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