ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者にインタビュー

オムロンの健康経営の取り組み:心身の健康に欠かせない5つの項目「Boost 5」を掲げ、社員の健康づくりを応援!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在の制度までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者にセキララに語っていただきました。

今回は、工場の自動化を中心とした制御機器事業、ヘルスケア事業、駅の自動改札機や太陽光発電用パワーコンディショナーなどの社会システム事業、電子部品事業、データソリューション事業など多岐にわたる事業を展開しているオートメンションのリーディングカンパニー「オムロン株式会社」のユニークな取り組みをご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――本日はよろしくお願いします。御社は今年を含め8年連続で健康経営優良法人ホワイト500に認定されるなど、健康経営に注力されています。早速ですが、御社が健康経営を導入された時期や背景について教えていただけますか?

2017年に「オムロン健康経営宣言」を制定し、そこからオムロングループの健康経営がスタートしました。

当社グループでは企業理念に「ソーシャルニーズの創造」を掲げ、さまざまな社会的課題の解決に取り組んでいます。 オムロンで働く社員の健康が経営の基盤と考え、皆が豊かで充実した生活を送れる環境をオムロン一体となって作り上げています。

当社の健康経営の活動方針には3つの軸があります。

1つめは、「イノベーションを起こす人と組織をつくる」ということです。社員が前向きにチャレンジできる環境を作り、社員のパフォーマンスを上げます。

2つめは、「心身が健康で、社員が自分の人生を楽しんでいる状態をつくる」ということです。社員には仕事だけでなく、健康に意識して生活も充実してもらい、人生を積極的に楽しめるようにします。

3つめは、「オムロンを卒業しても社会で活躍し続けられる社員でいっぱいにする」ということです。健康を維持、向上していくことで、将来にわたって活躍できるようになり、その結果、高齢化が社会的な話題になっていますが、社会に貢献できるような充実した人生を送ることができるようにします。

この3つの活動方針に沿って、健康経営の活動を推進しています。

――具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。

「Boost5」という取り組みをしています。健康経営がスタートした2017年に当社グループの統括産業医が発案したものです。

Boost5とは、疾病予防や改善にとどまらず、職場で集中力を発揮するとともに、私生活も存分に楽しむ豊かな人生に直結する要素として、全社共通で測れる指標を独自に設定しています。「運動」、「睡眠」、「メンタル」、「食事」、「タバコ(禁煙)」の5つの項目をBoost 5と呼んでそれぞれ改善を図ろうという取り組みです。

――心身ともに健康を維持する上でどれも欠かせない要素ですね。5つの項目ごとにそれぞれ活動をしているのでしょうか。

毎年注力テーマを決めていまして、それに基づいてイベントを実施しています。

健康経営がスタートした2017年には、第1弾として「睡眠」をテーマに、睡眠不足が生産性を下げるという根拠に基づいて、質の良い睡眠をとり、パフォーマンスを上げてもらうことを目的にイベントを実施しました。

――毎年テーマを変えていらっしゃるとのことですが、テーマ選定はどのように行なっているのですか。

Boost5の指標ごとに目標を設定し、そのうちの3項目以上を達成した人の割合を8割にすることを目指しています。どの項目をクリアすると3項目の達成者が増えるかを毎年分析し、テーマを決めます。

「食事」をテーマにした年は、低糖質に注目したセミナーを開催し、社員食堂とコラボメニューを提供しました。

また、「運動」については、毎年、当社グループ全体で「オムウォーク」というウォーキングイベントを開催しています。スマホのアプリと連動させて、活動量や歩数をカウントしてもらいます。たくさん歩いた人は、抽選でカタログギフトがもらえるといったインセンティブがあります。

他にも会社の施策に合わせてテーマを決めることもあります。2020年に休憩時間を含む就業時間内の全社禁煙化が決定したので、2019年の注力テーマは、「タバコ(禁煙)」でした。タバコ(禁煙)は推進していくのが難しいテーマではあるのですが、次年度から全社禁煙にすることが決まっていたので、そこに向けて喫煙者と非喫煙者のサポーターが協力してタバコ卒業を目指すイベント「卒煙マラソン」を企画しました。全部で300名程度の社員が参加しました。3回開催して、卒煙マラソン達成率も8割を超えました。

――実際、参加された方達のアンケート結果や満足度などはいかがでしょうか?

アンケートは、毎回とっていて、9割以上の社員から満足しているとの回答をもらっています。次回も参加してくれる社員がほとんどですね。

また、社内の総括的に「健康経営浸透度」を測っているのですが、この数字が年々伸びておりまして、2023年は93.7%が健康経営について認知しているという結果でした。また、Boost5の3項目の達成度も2023年は72.6%となり、項目ごとの達成者も少しずつ増えています。

さらにメンタルヘルスについても、かなり数値が上がってきています。毎年メンタルヘルスセミナーを開催したり、認知行動療法に基づいた教材でeラーニングを実施したりする成果が出ていると思っています。

――どの項目もきちんと成果がでていて素晴らしいですね!対面イベントの他にもウェブセミナーや動画コンテンツもたくさんあるようですね。

コロナの前までは、対面イベントを中心に開催していたのですが、コロナ禍になってからは、ウェブセミナーを開催したり、動画コンテンツを制作したりしました。

例えば、理学療法士による体の使い方のポイントを解説したラジオ体操動画を配信したり、ウェブセミナーで、看護職がお昼休みや始業前の15分程度を利用してミニ健康講話を行いました。更に、運動不足を解消できるエクササイズを看護職が紹介するショート動画を制作しました。コンテンツは、いつでも見られるようにアーカイブも残しています。

オンラインを活用し始めると、今までは規模の大きな事業所でしかセミナーなどを開催できなかったのが、日本全国の小規模拠点も含めて全社的に展開できるというメリットもありました。

――動画コンテンツに出演されているのは御社の看護職の方ですよね?看護職の方が動画の制作までしているのですか?

社内に看護職が30人ほどいて、それぞれ専門部会を立ち上げています。健康経営担当の部会もあり、1年分のコンテンツを作っています。基本的に動画のコンテンツ内容、出演、編集も看護職が担当します。それぞれの看護師の得意分野や興味のある分野をコンテンツにしていることが多いです。

ただ、動画の制作は素人ですので、調べたり、得意な人に教えてもらったりしながら、どこにテロップを入れて、背景はどうしたら良いかなど、試行錯誤しながら制作しています。

動画以外にも健康に関する情報を「豆知識」として定期的に社内のSNSで発信しているのですが、豆知識も含めるとコンテンツ数は、200から300程度あると思います。

――そんなにあるんですか!拝見しましたが、クオリティが高くてびっくりしました。外部の方も見られるようにしたらチャンネル登録者数がすごく増えそうですね。

そうですね。コンテンツは、何年も作ってきているので、たくさんあるのですが、実は、特定の社員しか目にしないという状況があります。どのようにして全社に広めていくかがここ数年の課題になっています。

これは、動画コンテンツに限った話ではありません。イベントの開催を楽しみにしてくれている社員も一定数いるのですが、参加者が毎回固定しています。一定数いる無関心層にも情報を届けたいのですが、なかなか難しい状況です。

――他社の取材の際にも健康活動への参加率を上げることの難しさをよく聞きます。現在はどのような方法で周知しているのですか。

事業所ごとに食堂や廊下、エレベーターホールなど多くの方の目に留まるような所にサイネージを設置したり、トイレの中やエレベーターのボタンの横など、日常動線の中に掲示をしたりすることで、情報発信を工夫しています。

社内のSNSでも健康経営の情報発信をしています。

色々と試行錯誤する中で、どこかに接点を持ってもらえるよう、引き続き工夫していきたいと思っています。

――本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

オムロンはこれまで、社員の健康づくりを全社的に推進してきました。そして、その取り組みは人的資本経営へと進化を続けます。それは、従来の「健康づくり」から「一人ひとりが能力を発揮し続ける基盤づくり」へのトランスフォーメーションです。オムロンは事業をつうじて取り組むべき社会的課題を3つ設定しています。「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」です。これらの社会的課題の解決に挑戦し、価値創造にチャレンジする人財へ積極的に投資を行います。今後のオムロンにどうぞご期待ください。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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