出張授業やセミナーを通じて、国民一人ひとりの“幸せ”の実現を目指す!

“金融経済教育の推進”を掲げる「J-FLEC(ジェイフレック)」が設立された理由

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2024年4月、金融広報中央委員会会長、全国銀行協会、日本証券業協会が発起人となり、「J-FLEC(ジェイフレック/金融経済教育推進機構)」が設立された。その名の通り、お金に関する学びの機会を官民一体となって届けていくための団体だ。

これまでも金融経済教育は、学生向けには学校で、社会人向けには金融機関主催のセミナーなどで実施されてきたが、なぜ改めて金融経済教育に特化した団体ができたのだろうか。J-FLEC経営戦略部経営企画課の串田有さんに、J-FLEC設立の経緯や予定している事業について聞いた。

“国民の幸せ”を実現するための金融経済教育を提供する団体

「J-FLEC設立の背景には、2022年に政府が発表した『資産所得倍増プラン』があります。NISAやiDeCoなどの制度を通して、国民の資産形成を支援する政策です。この政策を進めるには、国民の皆さんのお金や投資に関する知識がカギとなりますが、金融広報中央委員会が実施した『金融リテラシー調査(2022年)』では、調査対象3万人(18~79歳)のうち金融教育を受けた人の割合は7.1%にとどまりました。金融経済教育を受ける機会が十分に提供されているとはいえません」(串田さん・以下同)

これまでも学校教育にはお金に関する内容が盛り込まれており、社会人向けのセミナーもさまざまな場で開催されてきたが、金融経済教育を受けたという感覚を持っている社会人はごく一部に限られている。また、いざお金について学ぼうにも、どのセミナーや専門家を頼ればいいかがわからないという声も聞こえてきたそう。

「さまざまな団体が強みを生かして金融経済教育を届けてくれているのですが、受け手からは『どこに行けばいいかわからない』『幅広い分野について基本的な内容から勉強をしたい』という声がありました。そこで関係団体間の連携を強化し、重複している部分を調整しながら、官民一体となって効率的・効果的に金融経済教育を届けていこうという目的で、J-FLEC設立に至ったのです」

J-FLECは、次のミッションを掲げている。

【私たちは、一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイング(※)を実現し、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献します。】

※自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態

「『資産所得倍増プラン』が背景にあるので、投資教育を推進する機関だと思われやすいのですが、投資や資産形成に限らず、国民の皆さん一人ひとりの“ウェルビーイング=幸せ”を実現するための教育を届けていきたいと考えています」

J-FLECは政府の認可法人で、特定の金融機関が運営しているものではない。そのため、J-FLECが実施するセミナーや相談会では、個別商品に誘導されるといったことはなく、中立的な立場から発信されるお金の知識やアドバイスを得ることができる。そのなかから自身のライフプランに合うお金の使い方や資産形成の方法を選択していくことで、幸せと安心感が得られるというわけだ。

「笑顔をイメージしたロゴも、年齢や性別を問わず親しみを持っていただけるようなキャラクター性のあるものを採用しました。やさしくポジティブな印象を抱いていただけるのではないかと感じています」

顧客の立場に立った情報を届ける「J-FLEC認定アドバイザー」

J-FLECでは、講師派遣やセミナーの開催、個別相談など、さまざまな事業を展開していくようだが、その核となるのが「J-FLEC認定アドバイザー」の存在だ。

「世の中にはファイナンシャル・プランナー(FP)や弁護士、税理士、消費生活相談員など、お金について相談できる専門家はたくさんいますが、誰に相談すればいいかわからないと感じる人も多いと思います。専門家のなかには中立的な話をする人もいれば、金融機関の代理店としての業務を行っている人もいて、自分の希望に沿う人を探すのは大変でしょう。そこで、顧客の立場に立ってアドバイスができる専門家を『見える化』する必要があると考え、J-FLEC認定アドバイザー制度を立ち上げることにしました」

J-FLEC認定アドバイザーとして認定されるには、「特定の金融機関に属していないこと」「FP、外務員、税理士などの士業、消費生活相談員などの資格を有していること」「保有している資格に関する業務経験を有していること」といった要件を満たさなければならない。つまり、既にお金に関する相談に乗ったりセミナーに登壇したりした経験がある人が、J-FLEC認定アドバイザーになるのだ。

「今後J-FLEC認定アドバイザーには、出張授業やセミナーの講師、個別相談の相談員などを務めていただく予定です。そのためには人数も必要ですが、質を担保することも重要と考え、J-FLEC認定アドバイザーを対象とした研修も行います。税理士や消費生活相談員の資格を持っている方も、専門分野だけでなく家計管理や生活設計、NISA・iDeCoなどの資産形成支援制度、金融商品などに関する相談に乗る機会も出てくるので、研修で必要な知識を補っていただきます」

J-FLEC認定アドバイザーは1年ごとの更新制で、研修を受けないといったことがあると、認定が取り消されることもあり得るとのこと。J-FLEC認定アドバイザーであることが知識のある証拠となるため、ユーザーは安心して頼れそうだ。

「J-FLEC認定アドバイザーを1000人確保することを目指しているところですが、私たちの想定以上に専門家の方々から『登録したい』というご連絡をいただいています。J-FLECの事業の核になるので、より多くの方と協力し合っていけたらと思っています」

J-FLECが届ける「5つの事業」

J-FLECの事業は、大きく5つある。

(1)講師派遣(出張授業)事業
全国の企業や学校、地域の施設などにJ-FLEC認定アドバイザーを派遣し、金融経済に関する出張授業を展開。学生向けだけでなく、社会人や退職した高齢者など、年齢層別の授業を想定。

(2)イベント・セミナー事業
全国各地で社会人や経営者、教員、親子などを対象にした無料イベント・セミナーを、J-FLECなどの主催で実施。

「講師を派遣するだけでなく、私たちもイベントやセミナーを通して情報を発信していこうと考えています。都市部に限らず、全国で随時開催していく予定です」

(3)「J-FLECはじめてのマネープラン」無料体験事業
J-FLEC認定アドバイザーによる無料個別相談(最大1時間)を実施。対面だけでなくオンラインでも実施するため、全国どこからでも相談できる。

「『J-FLECはじめてのマネープラン(略称:はじマネ)』は、1人につき1回までという制限を設けますが、無料でお金の専門家に相談できる場です。相談内容は家計の見直しといった基礎的なことから、金融資産の運用や住宅ローンの借入などの専門的なことまで、どんなことでも構いません。個別相談の第一歩として活用していただきたいと思っています。また、もっと手軽な電話での無料相談(最大30分)も受け付けます」

(4)「J-FLECはじめてのマネープラン」割引クーポン配布事業
J-FLEC認定アドバイザーによる有料相談を初めて利用する際に、相談料が80%オフ(1時間あたり最大8000円まで割引)になるクーポンを3時間分配布。

「『はじマネ』の無料相談は1回までですが、その後、J-FLEC認定アドバイザーの有料相談でさらに具体的なところに踏み込み、理解を深めていただけたらと思っています。そのためのサポートとして、初回に限り割引になるクーポンを配布する予定です」

(5)学校等への支援事業
金融経済教育に関する研究活動などに取り組む学校を指定し、教育研究費の助成やアドバイスなどを行う事業。

「一般の方に関係する事業は(1)~(4)だと考えています。まずは(1)(2)の出張授業やセミナーなどで一般的な知識を得ていただき、自分の状況や悩みが見えてきたら(3)の『はじマネ』を受けていただく。金融に関する知識がついてきたら、(4)の有料相談でさらに理解を深めていただくというステップを踏むことで、より充実した人生が送れるのではないかと考えています。個人に寄り添った教育やアドバイスを届けることで、日本人の金融行動が変わっていき、個々の幸せにつながると思っています」

J-FLECが金融経済教育を通して目指す場所

J-FLECの事業はただ実施するだけでなく、次のようなKPI(重要業績評価指標)と目標を定め、金融経済教育の効果を追っていくという。

●金融経済教育の提供
KPI:J-FLECにおける講師派遣等の(1)年間実施回数、(2)年間参加人数
目標:(1)1万回、(2)75万人

●金融リテラシーの向上
KPI:「金融知識・判断力」の関連設問の正答率
目標:正答率を欧米並み(70%)に引き上げ(現状の正答率は40~50%)

●金融意識・行動の変容
KPI:(1)生活設計等への意識を持つ割合・取り組み率、(2)外部知見の活用率
目標:(1)(2)の割合を受講前比10%以上向上

「金融経済教育が皆さんの行動につながらないと意味がないので、金融に関する知識や判断力、専門家への相談などの行動の変化を目標に設定しました。実際に皆さんが家計を理解し、行動を変え、幸せな人生を送るところまでつなげられるように、結果を追っていきたいと思っています」

「金融経済教育の提供」の目標は、これまでに金融庁や各業界団体が行ってきた講師派遣等の年間実施回数約5000回、年間参加人数約30万人の倍以上に設定されている。それだけ積極的に取り組んでいくということだ。「金融リテラシーの向上」「金融意識・行動の変容」の正答率や取り組み率は、受講者への調査で確認するとのこと。

「これまでの『金融リテラシー調査』などは、無作為に選んだ方を対象に実施しており、今後も継続しますが、これに加えて今後はJ-FLECが携わる出張授業やセミナーの受講者を対象に『受講前』『受講直後』『受講の9カ月後』の3回、調査を実施する予定です。時間を追ってその人の状況を聞くことで、知識や行動の変化を具体的につかめると考えています」

国民一人ひとりの“幸せ”を実現するための金融経済教育を届け、さらにその効果の測定にも動き出しているJ-FLEC。今後のセミナーや「はじマネ」のスケジュールをチェックし、興味のあるところにアクセスしてみよう。

(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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