2024年に生まれ変わるNISA プロが語る!資産形成のすゝめ

新NISAで株主優待トレンドに変化!?

企業側が再び「株主優待」に注目する理由とは

提供元:auカブコム証券

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株主優待のトレンドに変化!?

株主優待は企業から株主へ商品やサービスを提供するもので、いわば個人投資家へ向けたプレゼントといえます。

消費者でもある個人投資家に店舗やサービスを知ってもらい来店のきっかけにしてもらう、個人投資家とコミュニケーションを取りたいなどの理由で優待を導入している企業も少なくありません。

一方で、100株保有する投資家も10万株保有する大口投資家も、同じ株主優待の内容が贈呈される例もあり、公平性の観点から大口の投資家からは配当に集約してほしいとの意見も多く存在しています。

また、2022年4月の東証再編以降は、株主数の上場基準緩和もあり、廃止を決定する企業が相次ぎました。特にJTやオリックスなど、充実した株主優待を設定していたことで個人株主が多かった人気銘柄については、株主優待廃止ニュースは大きな話題となりました。

株主優待の代わりに増配や自社株買いを強化するなど、別の株主還元策に集約することで、廃止による株価への影響がない銘柄もありますが、株主優待を楽しみにしている個人投資家からは「残念」・「寂しい」との声も聞かれます。

しかし、足元ではこうした株主優待廃止のトレンドに変化が起こっています。2024年からの新NISA開始を転機に、上場間もない新興銘柄以外にも株主優待を新たに導入する企業が目立っています。

2023年12月~2024年6月末までの株主優待の導入件数は、導入が51件・廃止が41件です。廃止のうちTOB(公開買付)や株式交換によるやむを得ない廃止が19件で実質の優待廃止は22件となり、TOBなどを除くと導入が29件も廃止を上回る結果となっています。

変化の背景は「新NISA」と「政策保有株解消」

株主優待の導入が足元で増加した理由として、2点挙げられると考えています。
1つ目は新NISAの開始、2つ目は政策保有株(持ち合い株)の解消です。

新NISA開始に伴い企業側が個人株主増加を意識し、100株あたりの購入金額を低くするための「株式分割」のほか、「株主優待」の導入を発表する企業が散見されました。

株式分割については2023年7月にNTTが1対25の分割をし、100株でも2万円以下で売買できるようにしたことで株主数が急増した例があります。NTTの説明会資料では、分割前の個人株主数92万人から分割後は186万人に倍増し、さらに40代以下の若年層割合も1割から4割に急増したと開示しています。このように、分割の効果は大きいことが分かります。

そして、株主優待導入の好事例についても発表されているケースがあります。

無印良品を展開する良品計画の資料では、新NISA開始について言及しているほか、3年以上継続(中長期)保有する株主が株主優待導入前の2022年8月末時点の5%から2024年2月末時点では約20%まで高まっていると明示しています。

株主優待を導入した結果、中長期で株式を保有する割合が急増し、優待を目的として保有する個人投資家が安定株主になっていることがわかります。こうした分析・開示を行っている良品計画では、優待を継続することが予想されます。また今年の8月末の株主から優待の割引率を5%から7%に拡充するとも発表しており、優待を拡充してさらに個人の長期安定株主を増やしたいとの意向も読み取れます。

2つ目の背景として「政策保有株」、いわゆる持ち合い株が問題視され、その解消のために代替株主を探る動きが出てきていると考えられます。企業側は政策保有株の解消で、代わりに安定株主である個人を意識し、個人投資家へ向けたプレゼントである株主優待を導入することで、個人に株式を長く保有してもらおうと考えているわけです。

このような背景から企業側が個人株主を意識し、前述した株式分割のほかに株主優待を導入する動きが出てきています。

直近で株主優待を導入した大手企業

最後に、昨年12月以降に株主優待を導入した大型株3銘柄をご紹介いたします。

※2024年8月5日終値、QUICK・各種WEBサイト等を基にauカブコム証券投資情報室作成
※2023年12月~6月末までに株主優待を導入した銘柄の内、時価総額上位3銘柄
※株主優待は一部を掲載しております。株主優待の最新情報や詳細は、企業のWEBサイト等をご確認ください

ソフトバンクは2024年9月に1対10の株式分割を実施予定で、株主優待は分割後100株から受け取ることができる内容で導入を発表してきています。分割後は1万8,000円程度(2024年8月5日現在)から投資が可能かつ株主優待を受け取ることができるようになるため、前述したNTTの例のように株主数も増加すると予想しています。
ソフトバンクの開示資料では、新NISAが始まることに加え、若年層を含む新たな投資家層に長期で株式を保有してもらい、投資家層の拡大を目指すとあります。同社についても、新NISA開始が株主優待導入のひとつ転機になっていることが分かります。

セブン&アイ・HDは2024年4月に優待導入を発表しました。
こちらも優待導入の開示資料では新NISAについて言及するほか、中長期的に多くの株主に保有してほしいこと、またファンを増やしたいとの理由を明示しています。
セブン&アイの共通券は、セブンイレブンやイトーヨーカドー・デニーズ・赤ちゃん本舗・ロフトなどでも利用でき、小売り大手だけあり、使える店舗が全国幅広いのが魅力です。また、WEBサイトの中のIRページもわかりやすく、個人投資家層の拡大を意識している様子が伺えます。

最後に三井不動産です。同社は2024年3月に1対3の株式分割と株主優待の導入を発表しました。多くの株主に長期で株式を保有してもらいため、そして商業施設を利用してほしいなどの理由からの導入です。
株主優待は分割後の100株から、25年3月末は半年以上継続保有で、三井不動産が運営する「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」、公式の通販サイト「&モール」で利用できるポイントを100株毎に1000ポイント贈呈するとしています。

また、長期で保有するとポイントが上乗せになるため、三井の商業施設や通販サイトを利用する方にはピッタリの優待です。
3分割して100株では約12万円(2024年8月5日現在)の投資資金で株主優待の対象となるのも個人投資家には嬉しいポイントです。

新NISAをきっかけに、企業側も再び注目する株主優待。
まずは、詳しい情報が掲載されている企業の「IRサイト」を覗いてみてはいかがでしょうか。

(auカブコム証券)

著者/ライター
藤井 明代
auカブコム証券 投資情報室 投資アナリスト
大手ネット金融会社を経て、2013年にカブドットコム証券(現auカブコム証券)入社。前職在籍中は個人投資家として国内株式等の売買を経験し、株主優待に魅了される。個人投資家としての経験を活かし、株主優待や初心者向け情報発信を行う。
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