アクティブETFの開拓者に聞く

【前編】三井住友トラスト・アセットマネジメントが世に送り出すのは“面白い”アクティブETF

【三井住友TAM】過去17年間の運用実績が積み上げられた「日本好配当株ETF」を上場

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2023年9月7日に東京証券取引所での上場が解禁されたアクティブETF(上場投資信託)は、インデックス(指数)に連動せず、運用会社やファンドマネージャーが運用方針に沿うように組み入れ銘柄や資産配分を決め、リターンを追求していくETF。

現在(2024年7月時点)までに上場されているアクティブETFは11本。そのひとつが、2024年3月に上場された三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMT ETF日本好配当株アクティブ(170A)」。好配当(予想配当利回りが相対的に高く、将来的にも株主還元の拡大が期待できる)銘柄が組み入れられたETFだ。

配当に着目したアクティブETFは他社からも出ているが、「SMT ETF日本好配当株アクティブ」の特色について、三井住友トラスト・アセットマネジメント経営企画部 主管の上坪淳一さんに聞いた。

ETFは運用会社と投資家の目指す先が一致しやすい商品

――まずは、三井住友トラスト・アセットマネジメントの運用会社としての特徴から教えてください。

「信託銀行の運用部門がルーツにある運用会社で、2024年3月末時点の運用資産残高が約94.2兆円と、日本で一番大きな資産を運用しています。この資産の大部分が機関投資家の資産なのですが、機関投資家に活用していただけるようなクオリティの高い商品を提供してきた成果だと捉えています。

個人投資家に向けたビジネスは公募投資信託が中心で、ETFは2024年7月末現在で、アクティブETFを含めて2本上場しています。ETFを多く扱ってこなかった会社なので、過去から積み上げてきたレガシーのようなものがない一方、前例のようなものもないので、白い紙に新しい絵を描くように面白いETFを展開していけると考えています」

――ETFはいままさに展開しているところなのですね。そのなかで、上坪さんはどのような仕事を担当されているのでしょう?

「当社に入ったのは5年ほど前なのですが、それ以前はブラックロックやウィズダムツリーといった外資系運用会社に勤め、10年ほどETFを担当してきました。その経験を活かし、当社では新たにETFビジネスを立ち上げる役割を担っています」

――15年近くETFに携わっているのですね。

「そういうことになりますね。ETFビジネスの担当になった頃、日本ではETFがまだあまり知られていなかったんです。当時、ETFをお客様に説明する際によく伝えていたのが、『ETFは“運用の民主化”である』ということでした。個人投資家も機関投資家も同じ条件、同じフィー(信託報酬)、同じ開示内容で投資できる商品だからです。いまでも、投資家が望んでいるものを投資家の種別に関係なく提供できる商品だと考えています。

また、ETFは市場に直接上場するもので、販売会社などを介して販売するものではありません。そのため、運用会社がこれこそ世に出すべきだと思う商品を出すことができ、運用会社と投資家の目指す先が一致しやすいプロダクトではないかと思っています」

――運用会社と投資家の目指す先が一致しやすい点は、実は大きな魅力ですよね。そんなETFを三井住友トラスト・アセットマネジメントでも展開していこうと?

「はい。ただ、ETFの分野では後発になるので、厳選したプロダクトで展開していくことを意識しています。投資家から見て面白いと思えるETFを提供し、ユニークなことをやっている会社だと言われるような運用をしていきたいという希望を抱いています。アクティブETFは、そのためのいい手段になるのではないかと感じています」

「配当の継続性」と「企業の成長性」を重視したアクティブETF

――アクティブETFの上場が解禁したときは、どのように感じましたか?

「世の中がどのような反応を見せるか、予想が付かなかったので、2023年9月に上場が解禁されたときの投資家の皆様の強い関心や資金の流入には驚きました。現在は低コストのインデックスファンドを着実に買っていくスタイルが投資の王道になっているので、ここまでアクティブETFが注目を集めたのは驚きでしたが、同時にインデックスファンド一辺倒ではないもっと広いフロンティアがあるのではないかという気持ちも湧きました。

金融業界の方々とも『まだつかみ切れていないニーズがあったのかもしれない』という話になり、私自身も思いを新たにしましたし、社内でも『新規参入者である我々こそアクティブETFを出すべきだろう』という話が出ました」

――その流れで組成されたのが、2024年3月に上場された「SMT ETF日本好配当株アクティブ」だったのですね。

「同じタイミングに、社内で『長年実績を積み上げてきた日本株のアクティブファンドを、世の中にもっと提供していこう』という流れが起こっていたんです。その勢いや積み重ねてきたアクティブ運用のノウハウを活かし、我々が持っているとっておきの日本株のアクティブ運用をETFで出そうという話になり、『SMT ETF日本好配当株アクティブ』ができました。

『SMT ETF日本好配当株アクティブ』は、国内の予想配当利回りの高い銘柄に投資するETFです。一般的に高配当株は割安株(バリュー株)優位の相場に強く、成長株(グロース株)優位の相場には弱いといわれますが、このETFは景気が割安株優位のときはもちろん、成長株優位のときにもTOPIXに負けない成果を出せるという特徴があります」

――なぜ、高配当株でありながら、成長株優位の相場でも運用を好調に推移できるのでしょう?

「単純に予想配当利回りの高い銘柄を集めているわけではなく、将来にわたって同じように配当を出し続けるかどうかという点を重視しているからです。ファンドマネージャーやアナリストが企業を訪問し、役員や財務担当者と対話したり調査したりするなかで得た情報をもとに判断し、配当の継続性がある銘柄を選定しています。

また、予想配当利回りが高い銘柄に加えて、将来的に株主還元の強化が予想される銘柄も組み入れることで、成長株優位の相場に備えています。これから株主還元が強化され、成長が期待できる銘柄は、成長株優位の相場でも強いからです」

――「継続」と「成長」がキーワードになっているんですね。これらの要素は、数字の情報だけでは判断できない部分といえそうです。

「おっしゃる通りで、人の手をかけて付加要素を足すことで初めて可能になる運用だと考えています。当社には約140人のファンドマネージャー、約50人のアナリストがいます。このリソースをフル活用し、その結果として得た成果を投資家の皆さんに届けていくことが、アクティブファンドを運用する我々が提供できる付加価値です」

アクティブETF初の「ファミリーファンド方式」を採用

――「SMT ETF日本好配当株アクティブ」は2024年3月に上場した新しい商品ですが、成長株優位の相場でもTOPIXに負けない成果を出せるということは、どのように検証していったのでしょう?

「『SMT ETF日本好配当株アクティブ』は、アクティブETFでは初となるファミリーファンド方式を採用しています。当社には既に日本の高配当株に投資する投資信託(マザーファンド)が存在し、『SMT ETF日本好配当株アクティブ』はそのマザーファンドに投資する形で運用します。

このマザーファンドは2007年から運用を始め、約17年の運用実績が積み上がっています。その結果として、TOPIXを超える成績を収めてきたことをご紹介することができます」

(出所:「SMT ETF日本好配当株アクティブ」サイトhttps://www.smtam.jp/fund/detail/_id_700002/#)

――既に実績が積み上がっているという点は、投資家にとっても安心材料になりますよね。

「そう思っています。機関投資家に新設のファンドをご紹介する際、『2~3年トラックレコードができたら検討する』というお返事をいただくことはよくあります。個人投資家の皆さんもきっと同じで、実績が示されているものを購入したいというのが本音だと思うので、過去に積み上げてきたものを見せられることは大きいのではないかと考えています」

――ファミリーファンド方式だからこそのメリットといえそうですね。

「そうですね。同じマザーファンドに投資する公募投資信託も用意しているんですが、『SMT ETF日本好配当株アクティブ』は毎日すべての組み入れ銘柄を開示する一方、その公募投資信託はすべてを開示するわけではありません。それぞれの商品のルールとしてそうなっているだけなのですが、『開示内容に差が出てしまうのではないか』という議論もありました。

ただ、『SMT ETF日本好配当株アクティブ』の組み入れ銘柄は当社のホームページや東京証券取引所の関連ページなどのパブリックな場所で開示され、誰でも見られるようになっています。そのため、公募投資信託の投資家の方々もいままで見られなかった組み入れ銘柄が見られるようになったので、以前よりも条件が良くなっていると捉えられます。これもファミリーファンド方式を採用したETFだからこそのメリットと考えています」

ファミリーファンド方式によって過去の実績を見ることができる「SMT ETF日本好配当株アクティブ」。安心感をもって投資できるといえるだろう。後編では、日本のETF市場の現状や上場予定のETFについて伺う。

(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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