ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者様にインタビュー

サイバーエージェントの福利厚生制度:女性社員の自分らしい働き方を独自の制度「macalonパッケージ」「CAramel(カラメル)」で応援!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在の制度までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者様にセキララに語っていただきました。

今回は、インターネットテレビ「ABEMA」などのメディア事業やインターネット広告事業を中心に躍進を続ける日本を代表するIT企業「株式会社サイバーエージェント」のユニークな福利厚生制度をご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。御社は女性活躍の推進に非常に力を入れておられます。女性活躍の推進に至る背景や時期を教えていただけますでしょうか。

当社で女性活躍を推進している主な制度に「macalonパッケージ」と「CAramel」の2つがあります。

まず、2014年に「macalonパッケージ」の制度が誕生したのですが、当時は、社会的にも女性の活躍がテーマになっており、当社でもママ社員が100名を超えてきた状況でした。それまでは、ママ社員の働き方や要望、困りごとなどに対して、個別に対応していたのですが、女性活躍推進が注目されてきたといった時代背景もあり、女性活躍を後押しするような制度に関する提案が、当社が年に1回実施している「あした会議」の場でありました。

「あした会議」というのは、役員がリーダーとなって事業責任者や女性、若手の社員などの中からチームメンバーを選抜し、チームごとに中長期的な会社の課題解決案や新規事業案を提案して、社長の藤田が決議し、良い案は実行に移すというものです。

その時は決議に至らなかったのですが、女性に関する制度の必要性を感じた藤田から人事に対し、制度設計に関するオーダーがありました。

――なるほど。御社は年齢層の若い社員が多いというイメージがあったのですが、ママ社員も増えてきていたんですね。

そうなんです。最初に検討したのが、「妊活」を支援する制度です。設立初期は20代の社員が中心の会社でしたが、その当時は設立から16年がたち、子供を持つ社員も増えていたその一方で、不妊治療に取り組む社員のケースもでてきていました。また、世間でも女性の人気芸人さんが不妊治療に取り組むことを発表されていた時期でもあり、「妊活」をキーワードにした制度の設計を進めることになりました。

ただ、妊活のみを対象とした制度だと、特定の社員にだけメリットがあるような制度になってしまいます。妊活に限らず育児中の社員のほか、あらゆる立場の女性社員が利用でき、社員が働く環境に安心して長く働くことができるような制度にしたいと思い、さらに制度の中身を考えていきました。

そうやってさまざまな立場にある社員が使える切り口で中身を考えていったのが「macalonパッケージ」の特徴です。

――「macalonパッケージ」の具体的な中身を教えていただけますか。

2014年には、「妊活休暇」「妊活コンシェル」「エフ休(Female休暇)」「キッズ在宅勤務」「キッズデイ休暇」の5つの制度をパッケージにしてリリースしました。

「妊活休暇」は、不妊治療中の女性社員が治療のための通院等を目的に、月1回まで取得可能な特別休暇です。

「妊活コンシェル」は、妊活に興味がある社員が会社の費用負担で専門家による個別のカウンセリングを受けられる制度です。妊活をしたいという社員だけではなく、将来的に出産を希望しているけれど、今取り組んでおくべきことや準備しておくべきことを相談するケースもあります。また、女性社員だけでなく、夫婦で不妊治療に取り組みたい男性社員も利用できます。この場合はもちろん奥様が社外の方でも利用できます。

「キッズ在宅勤務」は、子どもの急な発病や登園禁止期間など、子どもの看護時に育児中の社員が利用できる制度で、「キッズデイ休暇」は、子どもの入園、入学式や参観日といった学校行事に半日休暇が取得できる制度です。子どもの学校行事は平日に開催されることも多いのですが、1日有給を取るほどでもないというケースもあり、年に半日休暇2回の取得が可能としています。

「エフ休(Female休暇)」は、女性特有の体調不調などの際に取得できる休暇です。実際に生理が原因で体調不良になったとしても男性上司や職場に言いにくいというケースがあると思います。女性が取得する休暇は、通常取得の有給休暇も含めて全て名称をエフ休とすることで、利用目的がわからないようにし、取得理由の言いづらさや、取得のしづらさにも配慮しました。

――とても充実した内容ですね。

ありがとうございます。その後、2016年には、待機児童が社会問題にもなりました。認可保育園や認証保育園に入れないと、認可外保育園という選択を考えなくてはいけなくなりますが、認可外保育園は、高額なところも多く二の足を踏んでしまう社員も多いと思います。そこで、保育園に入れず仕事復帰ができない社員を対象に認可保育園と認可外保育園の保育料の差額を会社が負担して社員の復職を推進する「認可外保育園補助」を追加しました。

また、同年に「おちか区ランチ」といって、同じ市区町村に住むママ社員同士が集まって情報交換するためのランチ代を会社が補助する制度や、パパママ社員に情報を特化した「パパママ報」も立ち上げました。
2022年には、女性社員を対象に採卵、凍結保存などの卵子凍結に関する費用について一人40万円を上限に補助する「卵子凍結補助」を追加し、現在は9つの制度から構成されています。

――時代背景やその時のニーズに合わせて新たな制度を追加しているのですね。大変充実した内容だと思いますが、制度を導入する上でご苦労された点はどんなところでしょうか。

実際に制度を考える際に、さまざまな案が出ますが制度はあるけれども、利用されない、利用しづらいとなると、その制度自体が形骸化してしまいます。

また、特定の社員だけが休暇が増える、補助がもらえるというようになってしまうと、制度の対象とならない社員の「しらけ」を生みかねません。

「しらけ」が生まれると、社内の雰囲気も良くないですし、その制度を利用することにも抵抗感が生まれてしまうと思います。いかに「しらけ」を生まないようにするか、新しい人事制度を立ち上げる際に、当社の人事では「しらけのイメトレ」を徹底して行っています。「macalonパッケージ」の制度設計の際も、必ずしも全員が子供を望んでいるとは限らないということを前提に、あらゆる立場の社員が利用できるものを意識しました。

また、新しい制度を開始する際には、理解を深める目的でセミナーや勉強会を開催しています。

――確かに、特定の社員の方だけが得する制度になってしまうと、制度を利用できない社員の方との間に歪みを生みそうですよね。素晴らしい配慮ですね。実際、制度の利用率はいかがですか?

開示できないデータもありますが、「卵子凍結補助」は、月数件の申請がある状況です。

「エフ休(Female休暇)」の取得率は女性社員の約7割、「妊活コンシェル」も毎月の予約枠に対する申込割合は、7割程度となっています。「キッズデイ休暇」の延べ取得件数も1600件を超えており、非常に多くの社員が利用しています。

多くの社員に利用してもらうために、「しらけ」をうまないなどの配慮に加えて、制度のネーミングにも徹底的にこだわりました。制度設計に関わったメンバーで100くらい案を出し合い、最終的に「ママ(ma)が、サイバーエージェント(CA)で長く(long)働けるように」「macalon(マカロン)」と名付けられました。

――ネーミングも素晴らしいですねでは、もう一つの制度「CAramel」についてもお伺いします。「CAramel」が導入された背景や時期について教えていただけますか。

「CAramel」は、社内の有志メンバーで構成される女性活躍推進組織として2017年に発足されました。

先ほどお話した「あした会議」で女性活躍推進に関するプロジェクトの提案があり、その場で決議されて導入に至ったものになります。

――「CAramel」というネーミングにも意味がありそうですね。

はい。「CAramel(カラメル)」の名前の由来は、部署の垣根を超えた社員同士の横のつながりを作り、「絡める」ことからきています。

キャリアが充実する重要な時期と出産適齢期が重なるなど、ライフステージの変化がキャリアにも影響しやすい女性ではありますが、キャリアの築き方自体に正解はなく、人それぞれいろんな働き方やキャリアの築き方があると思います。

実際、社内にはいろんな働き方やキャリアを築く女性社員がおり、同じ部署の先輩、後輩といった自分の身の回りの女性社員だけでなく社内を横断して女性社員同士の関係性を構築することで、女性社員の「十人十色の働き方を応援する」プロジェクトとして、スタートしました。

――なるほど!部署の垣根を超えて社員の方たちをつなげるから「CAramel」なんですね!具体的にはどのような活動をされているんですか?

10人から20人の有志の女性社員で運営しており、メンバーの選抜は、「CAramel」運営メンバー自らが行っています。周囲から応援され、信頼が厚いメンバーをスカウトして「CAramel」の活動に巻き込むことで、彼女たちを起点に様々な企画に多くの人を巻き込み、それが組織や活動の認知拡大にも繋がっています。

活動の内容は、年ごとに変わります。社員の声などもヒアリングして、その時の課題に対して勉強会の実施や女性社員と役員との接点作り、事業部や職種を横断した先輩女性社員とのランチ会など、様々な取り組みを行っています。

――事務局の社員の方は本業がありながら活動されているんですよね?大変ですよね。

そうですね。通常の業務が忙しいからといって「CAramel」の活動に対してコミットできませんとなってしまうと、このプロジェクト自体も形骸化していってしまうと思います。

ですから、いかにこのプロジェクトが女性社員だけでなく、会社にとっても実益につながる施策を実施し続けることが大切だと思っています。

実際、「CAramel」主催のイベントに対するアンケート結果を見ると、満足度100%という結果が出ています。この満足度の高さが7年間も継続している秘訣と言えるかもしれません。

――「macalonパッケージ」も「CAramel(カラメル)」も本当に素晴らしい制度だと思いますが、こうした制度を導入したことで社外の評判の変化を感じることはありますか?

私自身、新卒採用の面接も担当しているのですが、「macalonパッケージ」導入前の時など、一昔前は、IT企業=ベンチャー=ハードワークといったイメージを持たれていたと思います。当時は、女子学生から「女性社員が長く仕事を続けられるんですか」「出産をしても働き続けられますか」といった質問を受けることもありましたが、現在は皆無になりました。

当社では女性社員が結婚・出産しても活躍できる会社であることがかなり浸透してきていることを実感しています。

――私はまだIT企業=ハードワークといったイメージがありましたが、本日お話を伺ってイメージが変わりました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

当社では、人材こそが会社の重要な経営資源であるととらえ、「挑戦と安心はセット」という考えの元、社員が自身のキャリアや働く環境に安心感を持ち、長く働き続けられる制度を整えてきました。またこれに加え、社員の才能開花に取り組むことで、「働きがいがある」と答えた社員は87%にも及びます。

社員ひとりひとりのキャリアプランやライフプランは様々ですが、それを互いが理解しあい、また家族をはじめとする周囲の人にも応援してもらえるようにすることが、優秀な社員が長く活躍し続けられることにつながると実感しています。

今後も会社が目指す未来に向けて、社員が働きがいのある職場を作っていきたいですね。
これからも引き続き頑張りますので、ぜひ、ご期待ください。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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