小切手とは?振出しの流れや手形との違いについても解説

TAGS.

小切手とは、一定金額の支払いを約束する有価証券を指します。利用するメリットは現金を持ち出す手間やリスクを軽減できる点で、デメリットは万が一不渡りを出すとさまざまな銀行取引をできなくなる可能性がある点です。

本記事では、小切手を振り出す際の流れや手形との違い、廃止の見通しについて解説します。

小切手とは

小切手とは、一定金額の支払いを約束する有価証券のことです。小切手を支払銀行に持ち込めば、原則として記載された金額を受け取れます。

ここから、小切手の仕組みや種類、手形との違いについて確認していきましょう。

小切手の仕組み

商品を購入したA社と、商品を販売したB社を使って、小切手の仕組みを紹介します。

1.B社がA社に商品を販売する
2.A社が小切手を振り出してB社に渡す
3.B社が指定された銀行・支店に小切手を持参する(指定銀行・支店以外での取立ても可)
4.B社が現金を受け取る

A社のように、小切手を振り出す人・会社のことを「振出人」と呼びます。また、B社のように小切手を受け取る人・会社が「受取人」、小切手を銀行に持ち込む人・会社が「持参人」です。受取人と持参人は異なる場合もあります。

小切手の種類

小切手の種類は、以下の通りです。

・持参人払小切手(じさんにんばらいこぎって)
・線引小切手(せんびきこぎって)
・先日付小切手(さきひづけこぎって)

持参人払小切手とは、銀行に小切手を持参した人(持参人)であれば誰でも記載された金額を受け取れる小切手のことです。誰でも換金できて便利な分、盗難リスクがあります。

線引小切手とは、表面に二本の平行線が引かれた小切手のことです。小切手に記載された金額を支払う金融機関は、原則自行との取引先にしか対応できません。

線引小切手を現金化する場合、持参人の銀行口座に小切手の金額が入金されます。入金先が明確になるため、盗難リスクを軽減できる点がメリットです。

先日付小切手とは、「振出日」を将来の日付にしてある小切手のことです。振出人が現時点で資金を用意できない場合に、あえて先日付小切手にすることがあります。

しかし、金融機関は先日付小切手を持ち込まれた際でも、正式な小切手として決済しなければなりません。対象の当座預金残高が不足している場合は不渡りになるため、先日付小切手はトラブルにつながる可能性があります。

手形との違い

現金化までにかかる期間やタイミングが、小切手と手形の主な違いです。手形とは、一定期間経過した特定の期日に記載された金額を支払うことを約束した有価証券を指します。

小切手の受取人は、原則としていつでも現金化できるのに対し、手形の受取人は期日まで待たなければなりません。小切手の振出人はいつでも支払えるよう当座預金の残高を用意しておくことが必要です。

なお、手形には約束手形と為替手形があります。約束手形と為替手形の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

約束手形とは?為替手形・小切手との違いや廃止予定について解説

小切手を利用するメリット

代金を支払う側も受け取る側も、現金を持ち歩く必要がない点がメリットです。

現金取引から小切手での取引に切り替えることで、移動中に紛失したり、盗難に遭ったりするリスクも軽減できるでしょう。小切手を持ち歩く場合でも、紛失・盗難のリスクはありますが、支払銀行に連絡することで対象小切手の支払いを止められます。ただし、受取人が小切手を紛失した場合は、振出人に連絡して届出を提出してもらわなければなりません。

また、収入印紙が不要である点もメリットです。一方、手形を利用する場合は、金額に応じた収入印紙を貼り付けなければなりません。

小切手を利用するデメリット

万が一不渡りを出すと、振出人は今後さまざまな取引ができなくなる可能性がある点がデメリットとして挙げられます。

不渡りとは、当座預金口座の残高不足などの理由で、小切手の支払いをできない状況のことです。1回でも不渡りを発生させると、金融機関内で情報が共有されるため、振出人の信用が低下するでしょう。

また、6か月以内に2度不渡りを発生させると「銀行取引停止処分」が下されます。「銀行取引停止処分」を受けると、以降2年間は当座預金取引や融資取引ができません。その結果、一般的に事業を継続することが困難になります。

なお、小切手は手形と異なりいつでも決済できる有価証券のため、取引先に渡す時点で当座預金の残高不足にならないよう注意が必要です。

小切手を振り出す際の流れ

振出人が小切手を振り出す際の流れは、一般的に以下の通りです。

・当座預金口座を開設して小切手帳を受け取る
・小切手に支払金額や振出日などを記載する

それぞれ解説します。

当座預金口座を開設して小切手帳を受け取る

小切手を振り出すためには、まず取引銀行で当座預金の口座を開設します。当座預金とは、手形や小切手を決済するために企業や個人事業主が使うための口座です。

当座預金口座の開設にあたっては、金融機関の審査で承認を得なければなりません。その後、当座勘定取引契約(小切手・手形に関する支払委託契約のこと)を締結し、当座預金口座を利用できます。

また、小切手を振り出すためには小切手帳が必要です。銀行に依頼して所定の手数料を払うことで、小切手帳を受け取れます。

小切手に支払金額や振出日などを記載する

振出人は、小切手に支払金額や振出日などの必要事項を記載します。振出日は、小切手の支払呈示期間に関する重要な項目です。受取人は、振出日の翌日から10日以内に銀行へ小切手を呈示しなければなりません。

また、振出人は小切手に署名(記名押印)をします。さらに、不正利用や偽造防止などを目的として、小切手帳本体と振り出す小切手のミシン目部分に、取引印を使って割印することが一般的です。

小切手の書き方のポイント

小切手には、券面に記載されていない場合に、原則として無効となる項目(必要的記載事項)があることを押さえておきましょう。以下の項目が、必要的記載事項として挙げられます。

・「小切手」であることを示す文字
・支払委託の文句
・金額
・支払人の名称
・支払地
・振出日
・振出地
・振出人の署名

また、小切手の金額には書き方があることもポイントです。金額の前には円記号「¥」を入れ、終わりには「※」や「也」を入れなければなりません。また、金額の改ざんを防ぐため、手書きの際は旧字体の漢数字で記入することも重要です。

小切手の換金方法

持参人は、すぐに現金を受け取るためには小切手に記載された支払銀行の窓口に持ち込むことが必要です。支払銀行の名称・支店名は、小切手の「支払地」「支払場所」に記されています。

支払銀行以外でも、取立委任して口座に入金してもらうことはできます。ただし、手数料がかかるうえに入金まで時間がかかる点を理解しておかなければなりません。

小切手を扱う際の注意点

小切手を扱う際に、振出人は当座預金の残高が不足しないよう注意が必要です。万が一不足していると、金融機関からの信頼を失うだけでなく、さまざまな取引ができなくなる可能性があります。

一方、受取人も小切手の記載内容に誤りがないか、必要な項目は埋められているかを確認したうえで受け取ることが大切です。小切手に問題があると、現金をすぐに受け取れず、資金繰りに影響することもあるでしょう。

今後小切手は廃止になる?

小切手は、今後廃止になる可能性があります。なぜなら、政府が2026年までに小切手の全面的な電子化の方針を示しており、金融界でも2026年度末までに電子決済サービスへの移行を強力に推進しているためです。

小切手の振出人が電子決済サービスに移行するメリットとして、振り出しに関する事務負担やコストの削減、紛失・盗難リスクの軽減などが挙げられます。また、受取人も銀行での手続き負担の軽減や小切手を受け取ったあとの紛失・盗難リスクを軽減できるでしょう。

なお、小切手に代わる電子的決済サービスの代表例は、インターネットバンキングによる振込です。

小切手とは金額の支払いを約束する有価証券

小切手とは、金額の支払いを約束する有価証券です。手形は一定期間経過後、記載された金額を支払うのに対し、小切手は原則として金融機関に持ち込めばいつでも現金化できます。

大口取引で現金を持ち運ぶ必要がない分、盗難リスクを軽減できる点が小切手を利用するメリットです。万が一紛失した場合は、届出を出すことで支払いを止められます。

一方、6か月間に2回不渡りを出すと、銀行でさまざまな取引ができなくなる点がデメリットです。また、政府や金融機関などが2026年までに小切手取引から電子決済サービスを用いた取引に切り替えることを促している点も理解しておきましょう。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード