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日米金融政策決定会合の決定内容を受けて
提供元:日興アセットマネジメント
2024年9月の日米金融政策決定会合での決定内容を受け、当面の米ドル(対円)と日米株式市場の見通しについて、弊社チーフ・ストラテジスト神山直樹の見解をお伝えします。
<当レポートのポイント>
■日米金融政策決定会合での決定内容は予想通り
■米国景気はソフトランディングを見込む
■米ドル(対円)は140円台前半、米国株は企業収益重視、日本株は為替離れへ
米国と日本の金融政策決定会合が終わりましたが、その評価は?
米国:
FRB(連邦準備制度理事会)は9月17-18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利の誘導目標を0.5%ポイント引き下げました。引き下げ幅はおおむね予想通りで、米長期金利と米ドル(対円)はわずかな上昇という反応でした。
今回の利下げで、“FRBは11月、12月の利下げをそれほど焦らなくてもよくなった”“0.25%ポイント程度の連続利下げ、あるいは12月のみ0.5%ポイントの利下げでよくなった”といった見方が市場で強まっています。つまり、FRBが最初の利下げを大幅に、しかも市場の期待に合わせて決定したことで、今後の金利および為替、株式市場の振れ幅は小さくなると予想します。FRBとしては今後利下げを継続するでしょうから、早めに市場の期待に合わせることで、市場の催促を追いかける形になることを避けたかったのでしょう。
FRBは、会合参加者による今後の政策金利推移の予想で、利下げのペースを24年末までにあと0.5%ポイント程度、その後四半期ごとに0.25%ポイント程度ずつという機械的な引き下げの道筋を示しました。ただし、今回の0.5%ポイントの引き下げで、必要に応じてそのペースを変えることもうまく市場に伝えています。現時点では、来年夏ごろに政策金利が4.5%程度まで低下すると予想しています。
日本:
日本銀行は9月19-20日に開催された金融政策決定会合で、政策金利を予想通りに据え置きました。前回7月の利上げが想定外の早さだったことを受け、その後、米ドル(対円)や日本株の激しい値動きから、利上げを急ぐタイミングではないとみているようです。とりあえず米ドル(対円)や株価を安定させる方向に働くでしょう。今後も賃金上昇がよほど強くならない限り、追加利上げを急ぐ理由は見当たらず、来年夏までに政策金利を0.5%程度まで引き上げるような、ゆっくりとした利上げペースを予想しています。
米国景気に変化はありますか?
コロナ禍という特殊事情で起こった突発的なインフレは、過去に起きた米国の設備投資の過熱に伴う景気過熱とインフレを抑えるケースとは異なり、金融政策が景気に直接影響を与えるかどうかが分からない面があります。しかし、金融政策は市場心理に影響を与えます。インフレ再燃リスクに配慮した高金利(インフレ率よりかなり高い政策金利、次頁参照)から景気に配慮した金利水準への緩やかなシフトは、市場関係者に安心感を与え、ソフトランディング(景気後退リスクを避けて軟着陸)するシナリオを支援します。今回の0.5%ポイントの利下げは、心理的に適切な印象を市場関係者に与えたといえます。
日米金融政策の結果を受けて、米ドル(対円)の見通しは?
米国の長期金利(10年国債利回り)は、今年7月頃までの4%台から、足元では3%台に低下しており、FRBの今後の利下げをかなり織り込んだとみています。他方で、日銀の9月会合後の長期金利はほぼ横ばいです。米ドル(対円)も同様に、米国の緩やかな金利低下と日本の緩やかな金利上昇をある程度織り込んだ水準にあるとみており、来年夏ごろまで140円台前半を中心に推移すると予想しています。
当面の日米株式市場の見通しは?
米国株式:
米国の景気後退はないと想定しており、振れ幅は小さくなるでしょう。景気について、市場で減速(成長率の低下)は予想されていますが、後退(成長率がマイナス)は予想されていません。株式市場は金利の緩やかな低下を背景に、金利水準などよりも企業収益を重視するようになるでしょう。AI(人工知能)・半導体関連企業などの収益が期待できそうか、投資を回収できそうかが、引き続きポイントになるとみています。
また、利下げによりグロース株が再び選好されることはあるとしても、利下げ自体は一時的・心理的な理由であって、収益成長や投資成果がこれまで以上に注目されそうです。仮に景気減速でも、市場の選好がディフェンシブ株などに偏るほど景気が悪化するとはみていません。
日本株式:
円高に弱いと思われていますが、実体経済においては、米国の利下げが早くて大きかったことで米国景気のソフトランディング期待が高まるとともに、日本企業の輸出数量が安定し、結果として国内の設備投資や求人が安定することで、日本企業はリーマン・ショック以来の生産水準を維持するとみています。
能力以下の生産しかしないことでヒト・モノ・カネを余らせていたデフレ的な状態から、ヒト・モノ・カネが不足し、賃金上昇、設備増強、金利上昇に向かうことでデフレ的な状態から脱却し、株高につながるでしょう。国内産業や中小型を中心に日本株の為替離れが始まり、利益成長を伴う賃上げや設備増強が注目される中で、日本株は、円高・金利高とともに上昇するタイミングになるとみています。
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(日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山直樹)
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