アップル:新型iPhoneを発表 オンデバイスAI普及は電子部品メーカーの追い風に

提供元:野村證券(FINTOS!編集部)

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アップルがiPhone16シリーズを発表

2024年9月9日、アップルは新製品発表イベントを開催し、主力製品である最新スマホ「iPhone16シリーズ」を発表しました。ハードウエア面では、全機種の本体側面に「カメラコントロール」と名付けられた新たなボタンを追加したほか、駆動時間が長くなり、さらにProモデルでは4つの高性能マイクを新たに搭載しました。

ハードウエア以上に強調されたのは、ソフトウエア機能の刷新です。6月に発表した同社独自の生成AI機能「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を全機種に搭載しました。ティム・クックCEOは、「iPhone16はApple Intelligenceのために一から設計した」とし、「刺激的な新時代の幕開けになる」とコメントしました。今後は、周辺調査を踏まえた各種メディアからの報道などにより、iPhone16の販売動向が注目されます。

歴代 iPhone の仕様比較(Pro Maxでの比較)

(注)全てを網羅しているわけではない。野村證券エクイティ・リサーチ部の推定も含む。mAhはミリ・アンペア・アワー。 MPはメガピクセル。Wi-Fi 6Eは高速Wi-Fiの規格。
(出所)会社資料、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成

iPhone16はAI普及の起爆剤となるか

Apple Intelligenceは、スマホなどのデバイス側でのAI処理、いわゆる「オンデバイスAI」が主軸となるAIモデルで、より大きな計算資源が必要な際にクラウド側のLLM(大規模言語モデル)を用いる仕組みとなっています。

2022年11月のChatGPT発表以降、生成AIの主役といえばLLMがクラウド上で推論を行う「クラウドLLM」でした。しかし、大手プラットフォーマー各社は足元で、クラウドLLMだけでなく、オンデバイスAIを実行するための「SLM(小規模言語モデル)」を相次いで発表しています。

iPhone16に先駆け、2023年12月にはグーグルのスマホ「Pixel 8 Pro」、2024年6月にはマイクロソフトのノートパソコン「Copilot+PC」など、オンデバイスAI(SLM)を搭載したデバイスの発売が相次いでいます。オンデバイスAIの普及により、AIは私たちの生活にとってより身近なものになっていくとみられ、iPhone16はその先導役になると期待されます。

大手プラットフォーマーが発表したオンデバイスAI(SLM)

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

AI機能はiPhoneの買い替えを促進

iPhoneの販売台数は、巣ごもり需要の剥落により2023.9期に前年度比で減少し、2024.9期も減少が市場では見込まれています。しかし、Apple Intelligenceが利用可能となる2025.9期は増加に転じると予想されています。Apple Intelligenceの機能を使用するには「iPhone15Pro」以降のモデルが必要となることから、2025.9期は買い替えが活発化すると期待されます。

スマホ市場の成熟化により、iPhoneの販売台数は浮き沈みがありますが、販売単価は継続的に上昇しています。Apple Intelligenceがリリースされれば、新しいモデルへの買い替えが促進され、販売単価のさらなる上昇が予想されます。

アップル「iPhone」の販売実績と市場予想

(注)2024.9期以降は2024年9月10日時点のファクトセット集計の市場予想。
(出所)アップル、ファクトセットより野村證券投資情報部作成

AI普及は電子部品メーカーの追い風に

iPhone16シリーズでは、カメラコントロールボタンが搭載されたことで、コネクターやスイッチといった部品の需要拡大が予想されるほか、Proモデルではマイクが4つにされたことで、高性能MEMSマイクロフォンセンサーの需要にもつながりそうです。そして、AI機能を実行するために従来以上に高い処理能力のある半導体チップが搭載されることから、熱対策がより重要となり超小型電子部品の需要拡大が予想されます。その他、バッテリー容量の引き上げや、機器の省電力化もさらに必要になるとみられ、搭載される部品の高性能化が求められます。

こうした部品の高性能化は、iPhoneの進化を支えてきた日本企業のビジネスチャンス拡大につながると期待されます。また、熱対策やバッテリー容量の引き上げ、省電力化は、iPhone16に限らず、オンデバイスAIを実現するハードウエアにとって、必要不可欠なものとなりそうです。

日本の電子部品・デバイス工業の在庫循環を確認すると、巣ごもり特需の剥落により積み上がった在庫がようやく解消に向かい、出荷が増加するタイミングとなっています。オンデバイスAIの利用開始に伴い、iPhoneを中心に民生機器の買い替え需要が促進されれば、日本の電子部品産業を取り巻く環境はさらに改善していくと期待されます。

日本の電子部品・デバイス工業の在庫循環

(注1)データは四半期で、2018年1-3月期を出発点とし、直近の値は2024年7-9月期時点で7-9月期は7月のみのデータ。赤線は2022年1-3月期から足元にかけての部分。在庫の伸びと出荷の伸びが一致する位置が、図中赤色の45度線。
(注2)電子部品・デバイス工業は生産財のうち電子部品や半導体等集積回路、液晶パネル、シリコンウエハーなど。
(出所)経済産業省より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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