米国利下げに対して新興国通貨は?

提供元:野村證券(FINTOS!編集部)

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2000年以降3回の米国利下げに対して、2回は新興国は追随

FRB(米連邦準備理事会)は2024年9月18日に利下げを決定しました。2000年以降米国での3回の利下げ開始後の主要新興国の政策金利の動向を調べると、2001年、2019年の利下げ開始のケースでは、主要新興国中銀は追随する形で利下げを実施する傾向が見られました。米ドル高に対して通貨防衛のために高金利政策を強いられていた新興国は、FRBの利下げを契機に景気対策のために追随したと見られます。

一方、2007年の場合は、南アフリカやメキシコなどは利上げを行いました。同年は中国など新興国経済は好調で、原油など商品市場は上昇基調にありました。また、米国は利下げを開始したものの、ISM製造業景況指数は安定的に推移するなどセンチメントは維持されていました。ただし、翌2008年に世界金融危機が発生すると多くの新興国は利下げに転じました。

政策金利:米国と主要新興国平均

(注1)データは月末値で、直近値は2024年9月。(注2)米国はFF(フェデラル・ファンド)金利翌日物の誘導目標レンジの中央値。主要新興国はブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、インドの各国政策金利の平均(2005年7月以降はインドネシア、トルコを含む)。
(出所)BIS(国際決済銀行)より野村證券投資情報部作成

米国の利下げ開始後に市場心理が維持された場合は新興国通貨は堅調に推移

米国利下げ開始後の主要新興国通貨の対米ドル騰落率を見ると、2001年、2019年は下落が目立ちました。その背景として、投資家心理の悪化が挙げられます。2001年は米国のIT(情報技術)バブル崩壊、2019年は米中通商摩擦(年後半に基本合意に達する前まで市場センチメントに悪影響)、新興国を巡る地政学リスク(シリア問題)、財政懸念などが下押し要因になりました。

それに対して、2007年は上述のように市場心理が維持され、堅調な推移となりました。今回のケースでも、市場センチメントや商品価格の動向が重要と考えます。米国はソフトランディング(軟着陸)がメインシナリオであり、商品市況は中国経済のもたつきから原油価格は低水準にありますが、追加の景気対策で中国景気の失速は避けられる見通しです。

主要新興国ではブラジルが利上げを開始しましたが、他の国々では利下げ開始の動きが強まっています。利下げは新興国通貨の重石になりますが、景気をサポートする要因でもあります。市場センチメントが維持されるとの前提に立つと、米ドル高圧力の弱まりは新興国通貨を下支えすると見込まれます。

(野村證券投資情報部 服部 哲郎)

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