盛りだくさんな情報をギュッと凝縮した一冊
人気バラエティーから生まれた書籍『カネオくんとまなぶ』は“現代社会”を学ぶツール
NHKで放送されている教養バラエティー『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』。“あらゆる金額を可視化して現代社会を学ぶ!”をキーワードに、マスコットキャラクターのカネオくんがさまざまなアイテムや業界のお金にまつわるヒミツを紹介する番組だ。
その内容がギュッと凝縮された書籍『カネオくんと学ぶ おどろき! 現代社会とお金のヒミツ 数字とクイズで楽しくわかる』が、2024年5月に発売された。宇宙や恐竜、eスポーツといった憧れの世界の話から、ヨーグルトやカニカマ、信号機といった身近なものまで、幅広く取り上げられている。
持ち運びしやすいサイズで、いつでもどこでも読める『カネオくんと学ぶ』は、ボリューム満点の番組をどのようにまとめて収録したのだろうか。翔泳社 書籍編集部の本田麻湖さんに、書籍の企画が始まった経緯やこだわった点を聞いた。
家族の会話を生み出した『突撃!カネオくん』
書籍化の企画が立ち上がったのは2023年3月。その少し前から、翔泳社ではお金に関する書籍を出版する動きがあったそう。
「2022年頃から円安に不況、物価高が顕著になってきましたよね。また、厚切りジェイソンさんの『ジェイソン流お金の増やし方』やリベラルアーツ大学の『本当の自由を手に入れる お金の大学』が話題になっていたこともあり、社内でも『お金の本が注目されているよね』という話が出てくるようになっていたんです。当社はIT系のビジネス書を手掛けることが多いのですが、世のなかの皆さんが注目していることに乗り出すのもありなのかなという思いが頭の片隅にありました」(本田さん・以下同)
そんなときに、本田さんの目に入ってきたのが『突撃!カネオくん』だったそう。
「当時、私の息子が中学2年生で思春期に入ったからか、私や夫とちょっと距離ができ始めた時期だったんです。テレビを見るときも私たちと息子が見たい番組が違って、意見が合わなくなることも増えてきたんです。でも、唯一『突撃!カネオくん』だけは一緒に見ていたんですよ。家族で一緒に見られて、話も盛り上がりましたね。普段はあまりしゃべらない息子も『突撃!カネオくん』を見ているときは『これってそうなってるんだ』って話し始めるから、夫や私も『そうなんだよ』って解説したりして、会話が生まれたんです」
現代社会のヒミツやお金に関することは世代を問わず興味を引く内容で、自然と家族のコミュニケーションが生まれたのだ。
「そんな息子の様子を見ていたときに、ふと『この番組を書籍化できないかな』って考えがよぎったんです。調べてみると他社からも本は出ていなかったので、すぐに番組プロデューサーの河瀬大作さんに連絡を取ったところ、前向きなお返事をくださって企画が動き始めました。それが2023年3月のことですね」
多様なジャンルをてんこ盛りにして出した“カネオくんらしさ”
番組の放送時間38分のなかには、情報がたっぷり詰まっている。その内容を凝縮したのが書籍『カネオくんと学ぶ』だ。
「書籍にする際には、番組のテイストや雰囲気を失わないことと読者に楽しんでいただけることを大切にしました。読者は小学校高学年~中学生とその親御さんを想定し、ただ番組の内容を見せるだけでなくクイズ形式の問いかけを設けるなど、楽しみながら読める要素をちりばめました」
ページのトップにクイズがあり、その答えの解説が1~2ページで展開されるつくりになっているため、興味のある分野やページから見ることができる。画像も多く掲載されており、紙面もにぎやかだ。
「番組の映像を切り取って掲載しているのですが、ページ内の限られた空間でしか見せられないので、一瞬で目を引くような場面、すぐに内容を理解できる場面を載せることを心掛けました。掲載したいシーンが多すぎて、泣く泣くカットしたところもありましたね」
書籍のなかで取り上げられているテーマは、「ロマン」「食卓」「おうち」「お店・町」「働く車」「でっかいもの」というカテゴリに分けられ、ジャンルが多岐にわたっている。
「NHKさんから過去に放送したテーマをいただいて分類したところ、まんべんなくいろいろなジャンルのものがあったんです。最初は『食べ物編』『乗り物編』くらいにしようかと思っていたのですが、それだけでは分けられそうになかったので、てんこ盛りにしようと決断しました。番組でも毎週異なるテーマを扱うので、いろいろなジャンルを入れたほうがテイストも合うと考えました」
そのなかで、本田さんのお気に入りは「食卓」のカテゴリとのこと。
「ヨーグルトがつかないフタの話を掲載したのですが、神社の裏の池で見たハスの葉がヒントになっていたってエピソードに引き込まれちゃいました。あと、カニカマを深く掘り下げているところも『突撃!カネオくん』の面白さですよね。ここで掲載している水産練り物メーカーは石川にある会社で、能登半島地震で被災されたそうなので、改めて書籍で取り組みを紹介することで支援につながったらという思いもあります」
世のなかのあらゆるものが「誰かの努力」でできている
書籍『カネオくんと学ぶ』は、お金に関することだけでなく現代社会の仕組みも学べる内容になっている。
「お金のことだけだと子どもは難しく感じるかもしれませんが、現代社会の流れや身近なアイテムに関することも学べるので、理解しやすくなるのだと思います。書籍『カネオくんと学ぶ』は番組から抜粋した一部を紹介している形なので、興味のあるジャンルが見つかったら自分で深掘りしてみると、さらに面白くなるのではないかと思います。そのとっかかりにしてほしいですね」
また、現代社会の仕組みとともに、もうひとつ感じ取ってほしいことがあるという。
「世のなかのあらゆるものが誰かしらの努力によってできている、ということに気付ける番組であり、書籍なのかなと感じています。普段何気なく食べているポテトチップスやアイスも、当たり前のように存在している信号機やマンホールも誰かがつくっていて、その過程にはさまざまな工夫があります。そこに気付くと、世のなかにはいろいろな仕事があって、たくさんの人が生活を支えてくれているということがわかると思います」
『突撃!カネオくん』の書籍は反響が大きかったそうで、2024年10月28日には第二弾が発売された。
「第一弾と同じように内容はバラエティーに富んでいますが、より見やすいデザインにブラッシュアップしています。第二弾では日直アシスタントの田牧そらちゃんの特集も組んでいて、インタビューもたっぷり収録しているので、ぜひ手に取ってほしいですね」
『突撃!カネオくん』で放送された内容を、改めて振り返ることができる書籍『カネオくんと学ぶ』。大人も初めて知るような情報が詰まっているため、親子で一緒に興味の幅を広げるきっかけになるかもしれない。
(取材・文/有竹亮介 撮影/山本倫子)