投資信託のトレンドが分かる!
2024年9月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2024年9月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「前月を下回る資金流入超」
資金流出入額は約9,550億円の流入超と、前月(約1兆1,150億円の流入超)を下回り、今年に入って最も少ない水準となった。
資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、「外国株式型」(約7,330億円)、「複合資産型」(約760億円)、「国内株式型」(約580億円)となった。高値警戒感から、内外株式の利益確定売りや戻り売り等が出たものと考えられる。このほか、不動産投信型(約28億円)は15ヵ月ぶりに資金流入超となった。
資産別の資金流出では、流出額の大きい順に、「国内債券型」(▲約65億円)、「エマージング債券型」(▲約29億円)となった。
個別ファンドでは、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ)(約1,470億円)が1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ)(約1,200億円)、次いで3位には「アライアンスB・米国成長株投信 D」(アライアンス)(約640億円)がランクインした。流入上位ファンドの顔ぶれに大きな変化はなかった。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「海外資産が上昇」
9月の金融市場は、米国や中国の金融緩和などを好感して海外資産のリターンがプラスとなった。このほか、中東の地政学リスクの高まりから、金価格も上昇した。
株式市場は、主要国を中心に上昇した。
月上旬の米国株式は、低調な経済指標を受けて景気後退懸念が高まったことで下落した。月中旬は米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を50bps引き下げ、景気に後れをとらない姿勢を示したことで上昇した。月下旬は経済指標の改善や中国の景気刺激策により上昇幅を広げた。
欧州株式は、月上旬は米国の景気後退懸念につられて下落した。月中旬は欧州中央銀行(ECB)やFRBによる利下げが好感され、上昇に転じた。月下旬は中国の景気刺激策が好感され、ストックス欧州600指数は一時過去最高値を更新した。
日本株式は、月上旬は米国の弱い経済指標により景気後懸念が高まったことや、円高の進行による輸出関連企業の業績悪化懸念から下落した。月中旬は植田日銀総裁が追加利上げを急がない姿勢を示したことで円安に転じ、国内株式も反転した。月下旬は自民党総裁選で金融緩和路線の継続が見込まれる高市氏が優勢となったことで円安・株高となり、日経平均株価は一時3万9000円台を回復した。その後、金融政策の正常化や財政再建に前向きな姿勢を示していた石破氏が勝利したことで、国内株式は急落した。
債券市場は、国内金利、米国金利ともに低下した。米国10年国債利回りは、月上旬はISM製造業景況感や雇用関連指標が低調だったことで低下した。月中旬はFRBが大幅に利下げしましたが、中立金利の見通しが上がったため、上昇に転じた。月下旬は堅調な経済指標を受け上昇を続けたが、月間では下落した。
日本10年国債利回りは、月上旬は米国の低調な経済指標を受けたリスク回避の動きなどから低下した。月中旬は米連邦準備理事会(FRB)による大幅な利下げにつられて低下した。その後、日銀総裁が、「経済が予想通りに推移すれば、金融緩和の方針を見直す」旨の意向を示したことで、金利の下げ幅が縮小した。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに円高が進行した。米ドル・円は、月上旬は低調な米経済指標による景気後退懸念の高まりなどの影響で円高・米ドル安となった。月中旬は実際に大幅利下げが行われたが、中立金利見通しが上がったことで円安・ドル高に反転した。月下旬は自民党総裁選で金融政策正常化に前向きな石破氏が勝利したことで、円高・ドル安となった。
ユーロ・円は、月上旬はユーロ圏実質GDP改定値の下方修正やECBの追加利下げ観測の高まりにより円高・ユーロ安となった。月中旬は世界的なリスク回避姿勢の後退や中国の景気刺激策により円安・ユーロ高に反転し、月下旬は石破氏の勝利により円高・ユーロ安となった。
これらを背景に、当月は海外資産を中心にプラスとなった。月前半は米国の低調な経済指標を受けて景気後退懸念が強まったものの、各国の金融緩和政策により株価は高値を更新した。ただし、以前インフレ懸念はくすぶっており、各国の中央銀行は今後の利下げに慎重な姿勢を示している。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数、設定額ともに増加」
当月の新規設定は21本と前月(13本)から増加し、設定額も約1,370億円と前月(約310億円)から増加した。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「野村日本新鋭成長株ファンド」(野村)(約477億円)、次いで「グローバル・オポチュニティ・パートナーズ・ファンド」(AM-One)(約312億円)となった。
1位の野村日本新鋭成長株ファンドは、わが国の金融商品取引所に上場されている株式に加え、金融商品取引所に上場されていない株式等を投資対象とする投資事業有限責任組合等の出資対象事業持分等を主要投資対象とする。2位のグローバル・オポチュニティ・パートナーズ・ファンドは、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが運用を行い、世界の金融商品取引所に上場している株式の中から、質の高いと考えられる割安な銘柄に厳選して投資する。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、9月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)