株高による恩恵を受けるのは誰?
提供元:野村證券(FINTOS!編集部)
株価は史上最高値圏で推移しているにもかかわらず、「実感がわかない」と思っている方は少なくないようです。株高の効果として多くの方が認識しているのは、値上がり益を享受した株主が消費を増やすいわゆる「資産効果」です。こうした資産効果は、時間の経過とともに広く国民全体に波及効果をもたらしますが、短期的には「格差拡大」につながるとの誤解を生じさせているようです。
実際に、個人金融資産に占める株式の割合は2023年末時点において12.7%にとどまっています。個人が保有している株式投資信託による株式投資額を含めても個人が保有する株式資産は個人金融資産の約16%にとどまります。
日本株の保有主体(残高ベース、2023年末時点)
この図は、日本株の保有主体を見たものですが、やはり、個人投資家の保有割合は17%弱にとどまります。個人投資家が保有している投資信託による日本株投資額を含めても約22%しかありません。
しかし、皆様の年金資産や保険資産も、その相当部分が株式によって運用され、経済成長の果実をともに享受する仕組みとなっています。積立金管理運用独立行政法人などの公的年金や企業年金では国内の信託銀行を受託者として年金の株式運用を行っており、年金資産が保有している株式は「信託銀行」保有分に含まれています。株価の上昇は、年金財政を好転させるため、将来的な年金給付水準の維持を可能にし、増税リスクを低下させることにつながります。
また、生命保険会社や損害保険会社の株式運用益の増加は、予定利率の引き上げを通じて、保険料の引き下げや契約者への配当金の増額につながります。事業法人が保有している株式の評価益の発生は、企業にリスクをとった投資を促し、また、銀行にとっても株高は信用供与能力を向上させ、景気の向上や賃上げにつながります。企業業績の向上は、税収増にもつながり、生活困窮者への分配の原資となっています。
(野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト 山口 正章)
野村総合研究所に入社後、地域の産業振興計画の策定などに携わり、野村證券への転籍後も一貫してリサーチ畑を歩む。企業アナリストとしては内外の消費関連企業のほか、アジアの大手財閥を多数訪問。野村證券投資調査部外国株式調査課長、野村證券アジア調査部長を経て、2018年に国際金融情報センター調査部長兼中東部長兼中央アジア部長に就任。2022年より現職。