【三宅香帆の本から開く金融入門】

インボイスがよくわかっていない個人事業主のための解説書『60分でわかる! インボイス&&消費税 超入門』

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インボイスってよく聞くけど……?

インボイス、と聞いて「なんだかよくわからないけど面倒なもの」という印象だけを覚える人は多いのではないだろうか。私自身がそうである。しかしぼんやりとした印象はある割に、インボイス制度がはたしてどのように自分たちの生活を変えるのか、どのように自分に影響を及ぼすのか、その内容はよくわかっていない。

本書はインボイス制度について解説し、消費税が経理上どのように変更されるのかを伝える一冊である。

そもそもインボイス制度変更とは、令和5年度税制改正によってなされたものである。どのような点が変わったのかといえば、主に四つある。

1.消費税の納税額の計算方法に「2割特例」が追加された(簡易課税の計算方法が変わった)
2.税込1万円未満の課税仕入が「領収書や請求書の保存が不要」となった
3.税込1万円未満の返品時の適格返還請求書は不要
4.インボイス制度の登録申請、取り消しの期限変更

……これだけ読んでも、何が何やらわからないかもしれない。だからこそ本書のような、インボイス制度の解説書が必要なのだ。

フリーランスで働いている人は、本書をぜひ読んでみてほしい。

インボイス制度変更によって何が変わり、何が必要なのか、理解できるからだ。

インボイス制度変更で消費税計算の仕組みが変わる?

著者の土屋裕昭氏は、税理士であり、土屋会計事務所代表である。彼は本書で、インボイス制度の変更とはつまり、「消費税の計算方法の仕組み」を変更する制度なのだと語る。

たとえばこれまでの制度であれば、仕入れたものを事業者側が売る時に、仕入れた先方が消費税を納めているかどうか関係ないまま、仕入れた際の消費税は差し引いたぶんを納税していた(仕入れにかかる消費税は差し引いたうえで、実際の納税額を決定しているということだ)。

しかし今回の制度変更によってこの仕組みが変更された。もし仕入れ先がインボイス登録してなければ、納税の際に、仕入れにかかった消費税を差し引いくことができないのだ。

だからこそ、インボイス登録していない仕入れ先と取引することが控えられるのでは、と言われている。さらに、インボイス登録を経ると、これまで免税事業者でいられた消費者が納税しなくてはいけないということになる。

個人事業主や経理担当者こそ読んでほしい一冊

インボイス制度変更について、なんだかよくわからないもの、という印象のままだと余計に理解が難しくなる。本書の良い点はインボイス制度変更による計算の仕組みがどうなっているのか、そして実際にフリーランスが請求書をつくる際にどのような処理が必要なのか、具体的にわかりやすく伝えてくれる点である。制度変更の全体像が概観できるのである。

それゆえに、どのような事業者はいつインボイス登録をするのが良いか、その判断ポイントも含めて記載してくれている。自分は登録すべきかどうか迷っている人も読むべき本であると思う。

さらにインボイス登録をする際の手続きについても詳しく書いてくれている。案外登録の手続きが複雑であることを知らない人も多いかもしれない。登録の具体的な手順も伝えてくれるところが、本書の魅力のひとつである。

制度変更は複雑で、敬遠してしまう人も多いかもしれない。しかし、このような本を一冊読んでおくと、制度の仕組みそのものが理解できて、自分がどのような手続きを取る必要があるのか分かってくる。

フリーランスで、自分の経理仕事に不安を持つ人。インボイス制度変更によって自分の税金や書類整理に不安を覚えている人。本書をぜひ読んでほしい。インボイス制度変更について詳しく綴った良書である。

著者/ライター
三宅 香帆
京都大学大学院人間・環境学研究科卒。会社員生活を経て、現在は文筆家・書評家として活動中。 著書に『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』などがある。フリーランスになったことをきっかけに、お金の勉強を始めている。

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