プロが語る!資産形成のすゝめ

配当方針も多様性の時代

業績連動?安定性?プラスαの工夫が肝心

提供元:ちばぎん証券

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企業の配当金に対する関心が高まっています。
東証がまとめた決算短信集計結果によりますと、2023年度の金融業を含む東証上場全社の配当金総額は約20兆円。5年前に比べて約4割増の急拡大です。今年度も多くの企業が増配を表明しており、配当水準は一段と切り上がるものと考えられます。このところ特に目立つ動きとして挙げられるのは、減益でも増配する企業の増加です。配当と言えば利益に連動するものと考えられがちですが、そのイメージは少し変化しつつあるようです。

企業が配当を増やす背景には、東証やアクティビスト(物言う株主)が資本効率の改善を強く求めていることがあります。持ち合い株なども批判の対象で解消に向けた動きが進んでいますが、企業にとっては株主構成が流動化するなか、受け皿づくりが急務です。配当重視のスタンスを示し、長期保有の傾向が強い個人株主を増やす狙いがあるのは間違いないでしょう。また、そもそも増益基調の下では手元資金が積み上がり、株主還元を拡充しなければそれだけで資本効率が低下する恐れが生じる、そんな切実な事情もあると考えられます。

もちろんこうした動きは、投資家にとって歓迎すべきものです。
QUICK資産運用研究所によりますと、配当をテーマとする国内株投信は10月末現在、30カ月連続で流入超過が続いているとのこと。また、24年に始まった新NISAではNTTやJTなど配当利回りの高い大型株が人気を集めているようです。配当株投資は着実に根付きつつあるということができるでしょう。

投資家のみなさんが配当に期待することは複雑で様々だと思います。
「多いに越したことはないけれど…」
「安定が一番、減配は嫌」
「会社がもうかった時はド~ンと増やして欲しい」などなど。
配当への関心は高まっていますが、希望に沿った銘柄を見つけ出すことは案外大変なことかもしれません。そうした時に参考にしていただきたいのが、各々の企業が掲げる配当方針や配当基準です。

現在多くの企業が採用している配当基準に配当性向があります。配当性向とは、配当の原資である当期純利益に対して配当をどのくらいの割合で出すかを示す指標です。企業にとっては利益の変動に応じて配当を決める合理的な指標ですが、株主の立場で考えると配当がブレやすく、長期で安定指向の投資スタンスには向かないとの指摘もあります。
そうした観点で近年目立つのが「累進配当」、「株主資本配当率(DOE)」、「配当金の下限」など安定性を備える基準を取り入れる動きです。

累進配当とは、毎年増配するか、最低でも横ばいを維持し続けるというもので株主還元強化を目指す配当政策の一つです。日本経済新聞社が算出している「日経累進高配当株指数(10年以上連続して累進的な配当を続ける銘柄を母集団に予想配当利回りが高い30銘柄で構成)」は年初来の上昇率が約30%の高パフォーマンスを誇りますが、構成銘柄で最長の累進年数は武田薬品工業の42年。まさにレジェンド的な存在です。
また、DOEとは株主資本に対して配当をどのくらいの割合で出すかを示します。配当性向に考え方は似ていますが、利益と違って株主資本は変動が少ないため、配当額が安定しやすいということができます。ただ、今後利益が増加した場合、配当金がどの程度増えるのか見通しにくいのが難点です。

もとより配当方針や基準に「これ」といった正解はありません。業績連動と安定性のバランスを考慮し、株主に寄り添った基準をいかに設定するか。そこに企業の意志が反映されると感じます。さらに進化系として代表的な指標に独自のアレンジを加え、株主に報いようと工夫を凝らす企業も見受けられます。

以下にいくつか実際の例を紹介します。
大林組(1802)…普通配当の目安をDOE3%程度から5%程度に引き上げ。併せて特別配当や自己株取得などによる戦略的な株主還元を機動的に実施。
大和ハウス(1925)…配当性向は35%以上、かつ一株当たり配当金額の下限を145円として業績に連動した利益還元を実施。
味の素(2802)…累進配当を導入。併せて本業の利益から税負担などを差し引き、発行済み株式数で割った独自の指標に連動させる基準を導入。
青山商(8219)…配当性向70%もしくはDOE3%のいずれか高い方。
東海東京FHLD(8616)…配当性向50%以上もしくは年間配当24円以上のいずれか高い方。

いずれも業績連動と安定性を両睨みし、株主の期待に応えようとする姿勢がうかがえます。
さらにPBRや株価と配当が連動する制度を導入した企業もあります。
日鉄鉱業(1515)…配当性向40%。併せて年度末時点のPBRが1倍未満の場合は年度平均株価の3%を年間配当の下限とし、PBRが1倍以上の場合はDOEの3%を下限とする基準を導入。

もちろん配当方針だけで最終的な投資判断を下すことはできません。ただ、企業の株主還元姿勢を知る貴重な情報であることは間違いないと思われます。配当方針に注目することで、これまで素通りしていた新たな投資対象が見つかるかもしれません。

(提供元:ちばぎん証券)

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