今後の上限引き上げ・廃止でどうなる?

在職老齢年金「廃止」で収入が増える人はどれくらいいるのか

提供元:Mocha(モカ)

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60歳以上で年金を受給している人が働く場合、収入が増えると年金が減額される在職老齢年金の制度があります。在職老齢年金制度がこの度見直されることになり、制度が廃止される可能性も出てきました。今回は、在職老齢年金制度が廃止された場合の影響や、今よりも収入が増える人がどれくらいいるのかを説明します。

働く高齢者の年金がカットされる在職老齢年金制度見直しへ

在職老齢年金制度とは、60歳以上の働く高齢者の給与と年金の合計が一定額を超えた場合に、年金の一部が支給停止となる制度です。年金を受け取っている高齢者がたくさん働いて給与が増えると、年金は減額される仕組みになっています。在職老齢年金で支給停止の対象になるのは老齢厚生年金で、老齢基礎年金は減額されません。

2024年度の支給停止の基準額は50万円です。給与と老齢厚生年金の合計額が50万円を超えた場合に、年金減額の対象となります。現在、在職老齢年金制度により、約50万人(在職受給権者の約16%)の年金が減額されています。

2024年11月、厚生労働省が在職老齢年金制度の見直す方向で調整に入ったことが明らかになりました。見直し案では、支給停止の基準額を現在の50万円から引き上げることや、在職老齢年金そのものを廃止することが検討されています。

在職老齢年金の見直しで収入が増える人はどれくらい?

在職老齢年金の見直し案は3つ出されています。それぞれの内容と収入が増える人数、年金額の増える総額は次のとおりです。

<在職老齢年金の見直し案>

筆者作成

在職老齢年金制度を見直すと、国の年金給付額は増加します。制度撤廃の場合には約4,500億円、基準額を71万円に引き上げた場合には2,900億円、基準額を62万円に引き上げた場合には1,600億円の給付増となります。

年金給付額が増えると、年金の財源が減り、将来世代の給付水準が下がることが懸念されます。また、制度見直しにより高所得者の受け取る年金が増えるため、高所得者を優遇する改正に批判的な声もあるようです。

厚生労働省は厚生年金保険料を算出する基準となる標準報酬月額の上限を現在の65万円から引き上げることも検討しています。これにより、高所得者の保険料負担が増えることになります。在職老齢年金を廃止し、高額な保険料を払った人が将来の年金を多くもらえる仕組みになれば、不公平感は少なくなるでしょう。

在職老齢年金が見直されれば働き控えをしなくてすむ

在職老齢年金制度はこれまでも時代に合わせて何度も改正が行われてきました。高齢になっても働くのが当たり前になった今、制度自体の廃止や縮小はやむを得ないでしょう。

内閣府が2023年11月に行った「生活設計と年金に関する世論調査」によると、厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方として、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と回答した人は44.4%にのぼっています。在職老齢年金は高齢者の働く意欲をそぐ制度となっているのです。

現在年金が一部支給停止になっている人だけでなく、支給停止にならないよう働き控えをしている人にとっても、制度の見直しはありがたいのではないでしょうか。今後は高齢者も年金が減るのを気にせず、働きたいだけ働けるようになると思われます。

高齢になっても元気な間は働くのがおすすめ

在職老齢年金制度が廃止されれば、高齢者も働きたいだけ働いて収入を増やせるようになります。厚生年金には70歳まで加入できるので、長く働くことには将来の年金を増やす効果もあります。老後の経済的安定を目指すなら、元気な間は働くつもりでライフプランを考えておきましょう。

[執筆:ファイナンシャルプランナー 森本由紀]

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