かぶオプコラム
【かぶオプコラム】第13回:株を買わなくても利益が出る驚きの指値買い
提供元:株式会社シンプレクス・インスティテュート
【かぶオプコラム】
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第12回:ちょっとお得な指値買い戦略「ターゲット・バイイング」とは
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「このコラムでは、株式投資をより効率的にしてくれる仕組み『かぶオプ』について連載でお伝えしてゆきます。」
前回に引き続き、今回も「ターゲット・バイイング」についてお話しします。「ターゲット・バイイング」とは、株を買いたいときに、買いたい銘柄のプットを売って、プットの売り代金を受け取りながら株を買う方法のことでした。ターゲット・バイイング戦略では、必ず株が買えるわけではありません。株が買えるのは、取引最終日にプットが行使された場合のみです。つまり、取引最終日の株価の終値が売ったプットの行使価格を下回った場合にのみ、株が買えるという仕組みです。
では、プットを売ったけれど、株を買えなかった場合どのような結果になるのでしょうか。具体例で考えてみましょう。例えば、2024年12月13日にファーストリテイリング(9983)の株を買いたいと考えたとしましょう。この日のファーストリテイリングの終値は53,240円でした。もう少し安い1株52,000円でこの株を買いたいと考えたとします。そこで、週明け12月16日に1月限行使価格52,000円のプットを1枚1,230円で売りました(プット1枚は株100株の取引に対応します。)。ターゲット・バイイングを実施したということです。この結果、株が買えるかどうかは、1月限取引最終日である2025年1月9日のファーストリテイリングの終値によって判定されます。
さて、年明け1月9日のファーストリテイリングの株価の終値は52,100円となりました。この価格は、売ったプットの行使価格(52,000円)よりも高い値段です。終値が52,100円であれば、プットの買い手はプットを行使して市場価格の52,100円より低い52,000円という値段で株を売却する必要はなく、プットの権利は放棄されます。となればプットの売り手には株を買う義務は発生せず、ターゲット・バイイング戦略をして株は購入できなかったという結果となりました。
ではこの場合、単に「ファーストリテイリングの株が買えなかった」というだけのことでしょうか? ここでのポイントは、ターゲット・バイイングの結果、株が買えなかったからといって損はしておらず、むしろ利益が出ているという点です。なぜなら、12月16日に売ったプットの売り代金はすべて実現益として受け取ることができているからです。
この例では、1,230円のプットを1枚売ったので、1,230×100株分=123,000円を実現益として受け取ることができました。株を買ってもいないのに利益が得られるなんて、驚きだと思いませんか? この取引では、プットが権利行使された場合にはファーストリテイリングの株を100株購入することになるので、プットを売るためには52,000円×100=5,200,000円の元手が必要です。その元手に対し、1か月弱で1,230÷52,000=2.3%(年率換算36%)の収益が得られたと考えると、とても効率のよい取引であったと言えるのではないでしょうか。
株を買おうと思った時に、通常の指値買い注文では、買いたい株の値段が買い指値より高い場合は、株価が下がるまでただ待つか、指値の値段を高く訂正してより高い値段で株を買うしかありません。買い指値をして株価が下がるのを待っていても、いつまでも下がらずに株が買えないこともあります。しかもその間は株の買い代金が拘束されるので、その分の資金は寝ているだけです。
ところが、ターゲット・バイイングなら、プットを売るので、株が買えても買えなくてもプットの売り代金は確実に利益として受け取ることができます。プットの取引最終日まで待っている間、株の買い指値をしながら、株の購入代金を運用しているのと同じような取引になっています。株が買えない場合でさえ時間と資金を無駄にしないのがターゲット・バイイング戦略です。
このターゲット・バイイング戦略を使って株が買えるまでプットの売りを継続し、株が買えたら、今度はカバード・コール戦略で株を売れば、株を買うときも、売るときも、プットやコールの売り代金を利益として受け取りながら株を売買することができます。
かぶオプのことを知れば知るほど、株式投資にはまだまだ収益を得るチャンスがたくさんあるということに気が付かれたのではないでしょうか。株式投資といえばキャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(配当益)が収益源だといわれていますが、実はかぶオプを組み合わせることで得られる第3の利益があり、これに注目した投資家がこの戦略で株式を効率よく運用しているのです。
これまでのコラムでは、かぶオプの基本戦略を4つ(コール買い、プット買い、カバード・コール、ターゲット・バイイング)をご紹介してまいりました。次週からは、かぶオプの特性を踏まえた戦略のコツなど、応用編の話題についてご紹介する予定です。これまでの内容についてもう少し詳しく知りたい方は、下記の参考書籍もご参考になってください。次回も引き続きどうぞお楽しみに。
■参考書籍
『「かぶオプ」の教科書』(ビジネス社) 安藤希著
(株式会社シンプレクス・インスティテュート)
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