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産業ロボや乗用車、地場系シェアは50%超

中国が掲げる「自立自強」、国産強化で米国に対抗

提供元:東洋証券

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産業用ロボットで外資の牙城崩す中国勢

米国で第2次トランプ政権が始動した。これまでの公約や言動を見る限り、トランプ大統領の対中強硬姿勢に大きな変化はないと見られる中、中国側も警戒と準備に余念がない。関税率引き上げには、対米ドルでの人民元安への誘導や輸出先の多様化などで対応する構えだが、もう一つのキーワードは「自立自強」だ。これは、各産業分野で国産化や内製化率を高め、自立的な経済発展を目指す動きと定義できる。

中国は2015年5月に発表した「中国製造2025」で、25年までの「世界の製造強国の仲間入り」を掲げ、各分野で国産比率の目標を設定している。例えば産業用ロボットでは「25年に70%」とした。実際には、19年に初めて30%を超え、23年には47.3%まで上昇(国際ロボット連盟(IFR)による)。24年1~9月期では51.6%になったとのデータもある。25年の70%達成は微妙なところだが、ここ数年で着実にシェアを向上させてきた。

中国の産業用ロボット市場では元々、外資系(ファナックや安川電機など)が強かった。ここに近年、中国系最大手の南京埃斯頓自動化(エストン)が割って入ってきた。24年上半期の市場シェアでは大手を抜き第2位に浮上。自動車工場や太陽光パネルの製造ライン向けに製品納入を進めている。また、アフターサービス面での素早い対応などで差別化を図ってきたという。

自動車市場でも地場系メーカーの台頭が目立つ。これまではブランド力が高い日系やドイツ系、米系が人気で、シェア6割超を誇ることもあった。ところが、電気自動車(EV)など新エネルギー車の販売が増え始めた20年以降に中国地場系のシェアが拡大。乗用車分野では22年後半に国産比率が50%を超え、直近24年12月は62.4%まで上昇した。ざっくり言えば「3台に2台は国産車」だ。新エネ車市場では最大手のBYDを筆頭に新興EVメーカーの躍進も目覚ましい。

スタバを抜いた中国企業

スマートフォン市場ではすでに中国地場系ブランドが大部分のシェアを握っている。24年10~12月期では、ファーウェイが18.1%で首位。小米(シャオミ)が17.2%で続き、アップルは17.1%で第3位だ。以下、vivoが16.3%、栄燿(HONOR)が13.6%、OPPOが12.5%といずれも中国企業が並ぶ。かつてシェア上位にあったサムスン電子は今やランク外となっており、「中華スマホ」の全盛期と言えよう。

スポーツブランドでは、安踏体育用品(アンタスポーツ)がナイキを抜いて市場トップになったとされる。中国ではナイキとアディダスの「2強時代」が長く続いていたが、ここ数年でアンタ、李寧(リーニン)、特歩(Xtep)、361度など地場系メーカーが力をつけてきた。自国ブランド推しの「国潮」ブームもあり、若者の間でも「海外産より国産」という意識が高まっている。オリンピックなど世界的なスポーツイベントのスポンサーに名乗り出る企業も多く、中国企業のロゴを見る機会も増えてきた。

意外な分野だが、コーヒー市場でも変化が起きている。これまでは1999年に中国進出を果たしたスターバックスの“天下”が続いていたが、消費者の嗜好や懐具合などに合わせ、風味を工夫したり低価格で商品を提供する中国企業の存在感が増してきた。その代表格が2017年創業のラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)だ。スタバより価格面でおトクで、全てスマホ注文、即時デリバリーも可能というシステムが若者に受け入れられた。23年末のデータだが、ラッキンコーヒーの中国店舗数は1万6218店で、スタバの6975店の2倍以上に上っている。

さて、注目の半導体だが、中国の国産自給率は14年に14%台、23年に23%、27年に27%に迫る見込みとされる。もっとも、これは「中国国内での製造率」を指しているようだ。つまり、海外勢が中国工場で製造した製品もカウントし、「外国企業+中国企業」の合算を自給率と見なしているもよう。純粋な中国資本企業による製造シェア、つまり厳密な意味での「自主製造率」は推定10%程度だ。DRAMの自給率は数%程度、製造装置は10数%程度とされており、さらなる国産化率向上は長い道のりになる。

いずれにせよ、中国当局は「自立自強」の掛け声の下、様々な分野で国産化を推進中だ。米国の対中強硬姿勢の強まりが予想される中、この流れはさらに加速するだろう。その中で力をつけ、世界に羽ばたく中国企業が出てくることも考えられる。

(提供元:東洋証券)

著者/ライター
奥山 要一郎
上智大学外国語学部卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。上海駐在事務所所長などを経て、現在は投資調査部次長。中国株式動向のウォッチや企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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