夫も妻も「有期給付」に変更。子どもは受け取りやすくなる…?
男性も女性も要注目!「遺族年金制度」見直しの影響
年金の被保険者が亡くなった際、その遺族に支給される「遺族年金」。亡くなった人が国民年金に加入していれば「遺族基礎年金」、厚生年金に加入していれば「遺族厚生年金」が支給されるが、それぞれに受給要件が異なる。
「遺族基礎年金」が支給されるのは、「子のある配偶者」または「子」。ここでいう「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子どもを指す。
一方、「遺族厚生年金」は「子のある配偶者」「子」に加え、「子のない配偶者」にも支給されるが、性別や年齢によって要件が異なる。「子のない配偶者」の場合、夫を亡くした妻が30歳以上であれば無期限で支給されるが、妻が30歳未満の場合は5年間の有期給付となる。妻を亡くした夫の場合、夫が55歳以上であれば60歳から支給開始となるが、55歳未満の場合は支給されない。
「遺族厚生年金」の要件は、遺族年金制度が制定された昭和の時代から大きく変わることなく続いてきたため、共働きが増加している現代社会に合わず、男女差も大きい。見直しを求める声が多く上がっていたことから、厚生労働省 年金局が議論を重ね、2024年12月に遺族年金制度の見直し案が示された。
「遺族厚生年金」は男女ともに有期給付の変更
今後、「遺族厚生年金」の受給要件がどのように変わっていくのか、厚生労働省 年金局の担当者に聞いた。
「男女差が大きかった『子のない配偶者』の受給要件を見直しました。見直し後は男女を区別することなく、施行から段階的に60歳未満のすべての方に対して、配偶者が亡くなってから5年間『遺族厚生年金』を給付するという形を検討しています」(年金局担当者・以下同)
性別に関係なく「子のない配偶者」全員が対象となる一方、原則5年間という期限付きの給付となる。
「現行の要件でも、30歳未満の『子のない妻』は5年間の有期給付となっています。若年層であれば女性でも就労できる可能性が高いことを考慮した期限でしたが、現代は就労の可能性に係る男女差が縮小していることを踏まえ、生活を立て直す期間として5年間の有期給付とする方向で考えています」
ただし、5年後に必ず給付が打ち切られるというわけではない。5年が経過しても十分な生活再建に至らない場合は、支給継続となるという。
「支給継続につながる要素としては、大きく2つ考えています。ひとつは障害です。障害を抱えていて就労が難しい場合は、給付を継続します。ただし、65歳までの間に受け取れる年金は1人ひとつまでと決まっているので、遺族年金と障害年金のいずれか金額が大きいほうを受給していただく形になります。もうひとつは収入。前年の所得が基準に届かない場合は、給付を継続する予定です」
収入に関しては、国民年金保険料の免除制度をもとに基準を設定する予定とのこと。また、収入が基準を超えた場合も、収入に応じて支給される「遺族厚生年金」が段階的に減っていく仕組みになるそう。
「基準を超えた時点で支給が打ち切られる制度だと、『年金が受け取れなくなるから働かないでおこう』というような働き控えにつながり、生活再建を阻害しかねません。収入が伸びるにつれて徐々に支給額が引き下がっていく仕組みにすることで、働けば働くほど収入が増え、生活を立て直す後押しになると考えています」
継続給付の支給イメージ