投信やETFという括りを超えた商品に

「オルカンはなぜ日本の投資シーンを変えたのか」生みの親である三菱UFJアセット・代田秀雄氏が口にした要因

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世界中の投資家に活用されている金融商品の1つがETF(上場投資信託)だ。その名の通り、株式と同様に“上場している”投資信託となる。

ETFは各国の証券市場で取引されており、東京証券取引所にも多数上場されている。では、この「東証上場ETF」に対して“投資のエキスパート”はどんな印象を持っているのだろうか。どういった使い方が良いと考えるのか。そこでお話を聞いたのは、「オルカン生みの親」である三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄氏だ。

近年、金融業界で歴史的なヒットを記録しているのが、投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称オルカンである。この商品はETFにもなっており、多くの投資家に浸透している。そこで代田氏に、オルカン誕生秘話を聞きながら、投信とETFの違いなどについても尋ねてみたい。

東証上場ETFを担当する東京証券取引所 株式部株式総務グループ兼ETF推進部・上場推進部の岡崎啓さんが聞き手となり、上記のテーマを深掘りしていった。

オルカンとS&P500、代田さんが最初に投資するのは?

岡崎 唐突な質問から始めても良いでしょうか。現在、投資の一歩目としてオルカンとS&P500が二大人気となっています。もし代田さんが投資デビューしたばかりだとしたら、どちらを選択しますか。

代田 面白いですね。これはシンプルな話で、許容するリスクと求めるリターンで決まります。S&P500はアメリカへの一国集中投資であり、オルカンはさまざまな国に分散されている。そのため、基本的には前者の方がハイリスク・ハイリターンと考えられます。

私なら、おそらくオルカンを選ぶでしょう。株式への投資はもともとリスクの高い投資ですから、最初に買うものとしては、広く分散が効いて少しでもリスクの低い方がいいからです。まずはそこで投資の知識をつけたり、市場の動きを学んだりして、もう少しリターンを求めたくなったら次の商品にチャレンジする。この流れが良いと思います。

岡崎 投資とは何かを知る期間を作る意味でも、オルカンから入るのは有効かもしれません。

代田 実は現在、「オルカンの歩き方」という書籍の出版を当社監修のもと予定しており、地球の歩き方社と一緒に制作しています。オルカンで投資している国の経済状況や代表銘柄などを載せる予定で、知識の定着をサポートしたいのです。

岡崎 実際に投資している先が本で見られるというのは面白そうですね。もう1つ、代田さんにぜひ聞きたいことがあります。オルカンは投信・ETFのどちらでも購入できますが、実態は投信が圧倒的に多い。少しずつETF購入者も増えていますが、差は大きいと言えます。この違いはどこにあると思いますか。

代田 何でしょうね……。強いて言うならば、ETFの認知度は徐々に上がっているものの、まだ人々のライフスタイルに入り込むまでには至っていない。それが大きいのではないでしょうか。

質問の答えからは少し離れますが、最近、人々の日常会話で「オルカン買ってる?」という言葉が出てきます。その中には、投信やETFを購入しようと考えてオルカンに行き着くのではなく、まずオルカンを買おうと思い、それが投信やETFという仕組みの商品であったということではないでしょうか。だから結果として、特に投信の残高が急増したのだと思います。

岡崎 その通りかもしれません。もはや投信やETFという言葉より、オルカンの方が認知されている。

代田 私たちが目指していたのも、この状況でした。投信を広げようと思っても、投資を始めたばかりの方にその良さを伝えるのは難易度が高い。ですから、投信という言葉から離れたかったのです。

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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