議決権行使とは?株主総会に参加しない際の議決権行使書の提出方法も解説
株主総会における主な議案
株主総会で提出される議案は、内容によって普通決議が必要なものと特別決議が必要なものがあります。
普通決議とは、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、そのうち議決権の過半数の賛成で成立するものです(会社法第309条第1項)。それに対して特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、そのうち議決権の3分の2以上の賛成で成立します(同法第309条第2項)。特別決議は基本的に重要事項を決めるにあたって求められる点が特徴です。
ここから、それぞれの具体例を紹介します。
普通決議の場合
普通決議で決まる議案の例は、以下の通りです。
・役員(取締役・会計参与・監査役)や会計監査人の選任(会社法第329条第1項)
・役員や会計監査人の解任(同法第339条第1項)
・資本金の額の増加(同法第450条第2項)
・準備金の額の増加(同法第451条第2項)
会社法第309条第1項には、定款で定めがある場合を除いて、株主総会の決議は普通決議で実施することが規定されています。
特別決議の場合
特別決議で決めなければならない議案の例は、以下の通りです。
・株式の併合(会社法第180条第2項)
・資本金の額の減少(同法第447条第1項)*一部のケースを除く
・定款の変更(同法第466条)
・事業譲渡の承認(同法第467条第1項)
なお、会社法第309条第2項には、特別決議で決めなければならない部分に該当する条文が記されています。
議決権行使以外に株主に与えられている主な権利
会社法第105条第1項で、株主には以下の権利があることを規定しています。
・剰余金の配当を受ける権利(配当請求権・利益配当請求権)
・残余財産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)
・株主総会における議決権(議決権行使の権利)
ここから議決権行使以外の権利について解説します。
配当請求権
配当請求権(利益配当請求権)とは、株式会社が事業を通じて得た剰余金を株主が受け取る権利のことです。配当の都度、金額などを株主総会の普通決議で決めます(会社法第454条第1項)。
1年間における配当の実施回数は、会社によって様々です。また、業績の悪化や将来の設備資金確保などの理由で、配当の実施が見送られることもあります。
なお、配当を受けるためには、権利付最終日から権利確定日までの間、対象の株式を保有していなければなりません。
残余財産分配請求権
残余財産分配請求権とは、投資した会社が解散・清算する際に、弁済後に残った財産の分与を受けられる権利のことです。ただし、資産よりも負債の方が多い場合は、分配を受けられません。
なお、配当請求権や残余財産分配請求権は権利行使の結果が株主のみに影響を与えるため、「自益権」と呼ばれます。それに対し、議決権行使は株主全体に影響を与える「共益権」です。
その他の権利
ここまで紹介した3つの権利以外にも、株式を1株持っているだけで主に以下のような権利があります。
・定款の書面の閲覧を請求する権利(会社法第31条第2項)
・株主名簿書面の閲覧や謄写を請求する権利(同法第125条第2項)
・株主総会で議案を提出する権利(会社法第304条)
・計算書類の書面または書面の写しの閲覧を請求する権利(同法第442条第3項)
株主が自分の意思を伝えるには議決権行使が必要
議決権行使とは、株主総会で提出された議案に対して、賛成や反対の意思を示すために投票することです。議決権行使書を持参して株主総会に参加することで、議決権を行使できます。
平日で参加できない場合でも、議決権行使書の郵送や電子投票で議決権行使が可能です。株式投資を始めた方は、自分の意思を伝えるために議決権行使をしてみてはいかがでしょうか。
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。