プラチナ宝飾品の需要

提供元:ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(World Platinum Investment Council, WPIC)

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サマリー

宝飾品はプラチナを使う重要な分野の一つで、需要全体の約25%を占めていますが、WPICの四半期毎の需給データにあるように、プラチナ宝飾品の需要は2014年の93.3トンをピークに、2023年には57.5トンまで減りました。

この減少は、長い間プラチナ宝飾品の最大の市場だった中国 (2014年の需要は62.2トンもありました) の不振によるものです(図1)。

しかし、下落一方だったプラチナ宝飾品の需要は現在落ち着いており、2024年は前年比で5%の増加、2025年は前年比で2%の増加が予測されています。これによりプラチナ宝飾品の需要は61.7トンに達する見込みです。

この需要回復の主な要因は、過去10年間で中国以外の地域の需要が成長したことにあります。中国以外の地域の需要は、2014年は31.1トンでしたが、2024年は49.8トンの予測で、中国の需要低迷を補っています。中国市場も回復の兆しが見られ、僅かですが2025年は増加する予測です。

図1.2014年〜2025年(予測)の中国とそれ以外の地域のプラチナ宝飾品需要

出典: 2014年-2018年はSFA (オックスフォード)、2019年-2025年予測はメタルズフォーカス、WPICリサーチ

WPICは2年〜5年先の最新予測として、プラチナ宝飾品の需要は2023年から2028年に年平均で 2.0%伸びるとしています。推定52.9トンとされるホワイトゴールド宝飾品の需要の一部がプラチナ宝飾品需要に移れば、さらに増える可能性もあります。ホワイトゴールドの需要の5%がプラチナの需要に代われば、プラチナの需要は2025年〜2028年の間に年平均で年間需要の1.3%に当たる3.1トン増えることになります(図2)。

図2.プラチナ宝飾品の需要(koz)

出典: 2023年-2025年予測はメタルズフォーカス、それ以降はWPICリサーチ

中国のプラチナ宝飾品需要

2014年に93.3トンあったプラチナ宝飾品の需要が2023年には57.5トンに減ったのは、中国の需要減退に主因があることは既に述べたとおりですが(図1)、中国国内のプラチナ宝飾品の需要はこの時期、62.2トンから12.4トンに減りました(年平均マイナス14%)。

中国市場も、婚姻率の低下や消費者の好みの変化など世界的な変化が需要に影響を及ぼしていることは明らかです。旅行や外食などの体験型消費や、車、ワイン、美術品など宝飾品以外の贅沢品への支出が増加するなど、消費者の自由裁量支出をめぐる競争は激しくなっています。

それに加え、中国ではカラットゴールド(k-gold)と呼ばれる純金のゴールド宝飾品の人気が高いこともプラチナ宝飾品の需要に影響しています。カラットゴールドは加工時間が短くて価格も地金に近いため、投資目的で宝飾品を購入する消費者に人気があります。また、中国伝統文化と現代の流行を融合した「国潮」と呼ばれるトレンドもゴールドの宝飾品の人気を後押ししています。逆にプラチナ宝飾品は買い戻し時の差額が大きいことが不利とされています。

中国以外の地域のプラチナ宝飾品需要

中国以外の地域のプラチナ宝飾品需要は2014年から2023年にかけて年平均3.9%で伸び、中国市場の需要低迷を補ってきました。これには高級品市場の成長と、積極的なプロモーションによって大きく伸びたインド市場が背景にあります。地域別に見ると、米国市場の需要は好調な経済のおかげで順調に伸び、欧州では 高級ブランドが腕時計などにより多くのプラチナを使うようになってきています。インドでは市場開拓の取り組みと輸出向けの製品製造が急速な市場拡大を支えています。

注目すべき点は、中国とそれ以外の地域の需要が変化し、それまで中国に過剰に依存していたとも言える需要の地理的分散が再調整されて、バランスが取れてきたことです(図3)。

図3.2014年以降のプラチナ宝飾品の需要は地理的に分散化

出典: 2014年はSFA (オックスフォード)、2023年はメタルズフォーカス、ワールド・ゴールド・カウンシル、Silver Institute

プラチナ宝飾品市場は中国市場への依存から脱皮したことで転換期を迎えたと言えます。中国以外の地域の需要が確実に伸びて2021年から2023年の間の需要が概ね安定し、2024年は前年比で5%、2025年は2%の増加が見込まれています。プラチナ宝飾品需要の地理的なバランスは、「その他の国」つまりはインド市場が需要に占める割合が非常に大きいゴールドとシルバーの宝飾品と明らかに異なっています。

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