スチュワードシップ担当者から見た日本企業の公衆衛生への貢献
アステラス製薬に見る医薬品アクセスへの取り組み
提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント
はじめに
私たちは新型コロナウィルス感染症の蔓延によって世界中で未曾有の苦難に直面し、改めて健康の大切さを意識したはずです。ただ、残念なことにパンデミック(感染爆発)の中で高所得国と低中所得国との間で医薬品アクセス(Access to Medicine、以下ATM)の格差が明らかとなりました。具体的には低中所得国において貧困や保険システムの不備などを理由に最低限必要な医薬品や医療サービスが必要な人々に十分に届きませんでした。
各国政府、医療機関、そして製薬企業を中心とした民間企業は世界の人々に医薬品・医療サービスの提供、さらにそのための医療インフラの整備を行う必要があります。ここでは医薬品アクセス向上に向けた世界の大手製薬企業の活動評価と日本企業の取り組みを解説します。
医薬品アクセス向上に向けた製薬企業の取り組み
2024年11月、オランダに拠点を置く医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)は2024年の医薬品アクセスインデックス(Access to Medicine Index、以下ATMI)を発表しました。同財団は医薬品業界に対して医薬品アクセス向上への貢献を促すことを目的として2年ごとに日本企業4社を含む世界の大手製薬企業20社の評価を発表しています。
具体的には、(1)医薬品アクセスの取り組みが経営戦略に反映されているか(医薬品アクセスに対するガバナンス体制)、(2)研究開発段階から低中所得国への医薬品供給を計画しているか(研究開発)、(3)医薬品を低中所得国へ供給するために知的財産戦略や包括的ビジネスモデル等が検討されているか(医薬品供給)、という3つの評価項目に基づいてATMIは評価されています。
今回発表されたATMI 2024ではスイスのノバルティスが初めて最高評価を受けました。医薬品アクセスに対するガバナンスと研究開発の2つの評価項目で最も高いスコアを獲得。特に低中所得国向け医薬品価格、技術移転など医薬品アクセス向上につながる取り組みを加速し、対象地域を拡大させた点が高く評価されました。
1990年より株式アナリストとしてヘルスケア及び化粧品トイレタリーセクターを中心に日本・米国で株式運用業務に従事した後、2021年より現職。