乙武先生!金融教育、見にきてください ユニコーンラボ後編
乙武洋匡が聞く、ビジコンから生まれた“資本主義”教育ツール「ユニコーンラボ」の現在地
金融教育に必要なのは「知識」よりも「経験」
乙武 先ほど話題に出たアイテムショップもそうですが、「ユニコーンラボ」ではオンラインを活用して、ユーザー同士のコミュニケーションを促しているのも大きな特徴だと思います。実際には子ども同士でどのようなやり取りがされているのでしょうか。
永野 会員限定のスペースなので、わりと平和なやり取りが交わされていて、たとえば「サラダを100円で売ったよ」「え、うちは200円で売ったけど」「だったらうちも200円に値上げしよう」と、子ども同士で情報交換をしている様子はよく目にしますね。
乙武 まさに市場価格のように変動するんですね。そういえば「ユニコーンラボ」のホームページ上では、「おじいちゃんは相場より高く買ってくれる」とか、「酔っ払ってる時のお父さんは何でも買ってくれる」といった声が紹介されていて微笑ましかったです(笑)。
永野 そういうのもありますね(笑)。自然と商売感覚のようなものが身につくのも、このキットの面白いところだと思います。
乙武 たまに水を交換する程度の手間とはいえ、自分で植えて育てているわけですから、野菜に愛着が湧くでしょう。これが広まれば、もっと野菜好きな子どもが増える気がしますよ。
永野 そうですね。だからこそ、少しでも家庭に無理なく根付くよう、実証実験を通して様々な改良を加えました。
乙武 たとえばこの少しファンシーなデザインのカーテンは、栽培のために必要な工夫なんですか?
永野 これは機能面で必要なものではないのですが、LEDライトを照らすものなので、実証実験の際に「眩しい」という声をいくつかいただいて取り付けました。もっとも、1日の点灯時間が16時間なので、開けっ放しのまま朝起きてスイッチを入れて、寝る前に消す人も多いです。
乙武 なるほど、野菜のためではなく、むしろ人のための工夫なんだ。
永野 そうなんです。リビングに置く方が多いので、どうしても目に入りますからね。でも、カーテンを閉めたままにしておけば、ほこりが入りにくいというメリットもあります。
乙武 本当に、聞けば聞くほどよくできたツールですが、開発や実証実験を含め、ここまでの「ユニコーンラボ」の運用を通して、金融教育の必要性について永野さんはどうお考えですか。
永野 金融教育は早いほどいいと感じています。それも、授業や勉強としてではなく、経験として実践しなければ意味がないのではないかと思います。というのも、私の世代がみんな社会人1年目なので、知識はあっても経験がないことで壁にぶつかっている人がすごく多いんです。できるだけ早くから、社会と経済を経験し、そこに自分で工夫をするという体験を積んでおけば、もう少しスムーズに対応できるのではないかと。
乙武 なるほど。たしかに、社会において「知識」より「経験」が物を言うのは間違いないでしょうね。
永野 よく「社会は厳しい」と言われますが、挑戦することを体験的に知っておけば、社会はすごく楽しいものになると思います。もしも「ユニコーンラボ」がその一助になるなら、これほど幸いなことはありません。
乙武 まさしくその通りですね。「ユニコーンラボ」の今後の広がりと展開を、楽しみに見守りたいと思います。本日はありがとうございました。