~コンテンツは日本の新たな輸出産業へ~
日本のIPが世界を魅了
提供元:岡三証券
「アニメ」と「ゲーム」、日本が誇る2大コンテンツの活躍の場が広がりつつあります。3月18日に東京ドームで行われたメジャーリーグの開幕戦MLB東京シリーズ2025では、日本の人気コンテンツ「ポケモン」とコラボしたオープニングセレモニーが大きな反響を呼びました。また、4月13日から10月13日まで開催されている大阪・関西万博でも、人気アニメ「機動戦士ガンダム」のガンダム像の実物大展示が話題となっています。
アニメやゲームの知名度向上が追い風に
背景には、(1)ネットフリックスなどの動画配信サービスの普及や、(2)ゲーム市場の成長などが挙げられます。(1)に関しては、視聴可能地域や視聴者層が拡大したことで、アニメやゲームなどの知名度や人気が世界的に高まったと考えます。例えば、国内のアニメーション関連市場は2023年に前年比14%増の3.35兆円となり、過去最高を更新しました。内訳をみると、海外での売上高が約1.72兆円で、全体の約半分を占めています。
また、(2)に関しても、スマートフォンの普及やオンラインプラットフォームの拡大、eスポーツの人気化などを追い風に、世界のゲーム市場は2023年の約4,300億ドルから2029年には7,000億ドル近くまで拡大する見込みです。
日本はゲーム産業に関して一日の長があり、ビデオゲームでのヒット作品も多く生み出しています。サウジアラビアの政府系ファンドが日本のゲーム関連株へ投資しているように、足元では、海外政府機関が日本のゲーム関連企業と関係を強化するケースも増加しています。「アニメ」と「ゲーム」、日本が誇る2大コンテンツの価値は、今後一段と高まることが期待できそうです。
コンテンツIPの価値向上がビジネス拡大のヒントに
「アニメ」と「ゲーム」の人気化は、企業が保有するコンテンツIP(知的財産)の価値の上昇を後押しするでしょう。政府もこれを好機と捉え、2024年6月には「新たなクールジャパン戦略」を発表し、ゲーム・アニメなどのコンテンツ産業を含むクールジャパン関連産業の経済効果について、2028年までに30兆円以上、2033年までに50兆円規模を目指す戦略を掲げました。日本由来のコンテンツの海外売上高は、2022年に4.7兆円に達し、すでに鉄鋼や半導体といった産業の輸出額に匹敵する規模にまで成長しています。今後は、官民での連携が進むことで、コンテンツは将来的に日本経済の成長を牽引する産業へと変化しそうです。
追加関税への影響が限定的な点にも注目
かつて、コンテンツの「賞味期限」はTVや映画等の販売期間などに大きく左右され、事業の展開余地には限界がありました。ただ、動画配信サービス等の普及などがコンテンツの「賞味期限」の長期化を実現した結果、IP価値向上につながったと考えます。近年は、IPの価値向上を事業成長の好機と捉え、関連事業を強化する企業も増加しています。コンテンツ産業における「変革」は始まったばかりと言えそうです。
また、コンテンツIPビジネスをグローバルに展開する上で障壁として注目されるのが、トランプ米大統領が掲げる関税政策の影響度合いです。ただ、通常、デジタルコンテンツに関しては課税対象を特定するのが難しいという背景から、WTO加盟国間では関税を賦課しない「電子商取引モラトリアム」という慣行が運用されているため、関税のインパクトも軽微に留まりそうです。市況や為替の影響を受けにくく、高い市場成長が見込めるコンテンツビジネスに強みを持つ企業は、更なる業績成長と市場価値拡大が改めて期待できそうです。
図表:日本のアニメーション関連市場規模の推移
岡三証券株式会社 投資戦略部 日本株式戦略グループ 大下 莉奈
投資情報部配属後は、日本株・米国株のストラテジスト業務に携わる。
現在は日本株を中心に、テレビやラジオをはじめ様々なメディアに出演、雑誌や新聞等でコメント。