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「経営者」の分析によって未来の大型株を探す、野村アセット・田中啓章氏が実践する成長銘柄の発掘法

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田中氏が中小型株の成長銘柄を探す際、どのようなポイントで選ぶのか。「まず大前提として、他にはないユニークな事業を持っており、なおかつその領域に集中してビジネスを行っている銘柄を重視します。他のビジネスにあまり手を出さず、自社の強みを磨いている企業とも言えますね」。

あわせて、近い領域で事業を行う大企業の動きも注視する。「小さな会社がユニークな事業を作っても、大企業が後から参入して状況が一変することは常にあり得ます。ですから、大企業がそのビジネスに加わる可能性がないかを細かに確認しています」。

徹底した財務分析も欠かさない。中小型株は企業規模が小さい故に「財務が脆弱な場合も少なくありません」とのこと。この点のリスクについても入念に調べていく。

これらに加えて着目するのが、先述した「経営者」だ。企業調査を行う際に、経営トップやその配下の役員を含めた“マネジメントチーム”の顔ぶれ、考え、戦略を入念に分析するという。

データで見えた「若い経営者」を擁する企業の強さ

田中氏が運用する「日本次世代経営者ファンド」は、まさしく経営者に着目して作られた投資信託。これからの日本を担う若き“次世代経営者”を発掘し、その中から企業価値をより高め、成長が期待できる会社へ投資する。

同ファンドが定義する次世代経営者とは、以下の通り。――原則として若い経営者のうち、「長期目線の経営」「新しいビジネス機会への挑戦」「構造改革等による企業体質の改善」等を通じて、次世代の日本を担うと考えられる経営者のこと――。

ここで言う“経営者”には、経営陣なども含まれる。「40代以下の代表者」「30代以下の代表を除く役員」など、若さの基準は複数用いられるという。そういった次世代経営者が率いる企業をリストアップし、投資先を選定していく。

経営者の若さを重視した背景には、ある調査結果があった。「少し古いものになりますが、2013年〜2021年の当時の日本企業について、経営者の年齢を軸に長期業績を分析したところ、経営者の年齢が若い企業が伸びている傾向にありました。株式のリターンも同様に高かったのです」。

若い経営者、特に自分で会社を立ち上げた創業者は、その後10年、20年と自社の経営に携わる可能性がある。その分、長期目線の経営になりやすい。これも「上記の調査結果を生んだ要因の1つでは」と、田中氏は指摘する。

年齢に加え、先述した「新しいビジネス機会への挑戦」や「構造改革等による企業体質の改善」など、その経営者の振る舞いや実績をもとに選定していく。「当社には資産運用先端技術研究部という部署があり、数千社のデータベースを分析しながら、該当する経営者を見つけていきます」。

2022年4月に設定した同ファンドは、2025年3月末時点で43.3%の上昇率(設定来)となっている。ファンドの組入銘柄(投資している銘柄)は60以上あるが、そのうち時価総額5000億円未満の銘柄が9割以上を占める。まさに中小型の成長銘柄に投資するファンドである。

「中小型株が長期で成長することは、その企業のビジネスが社会に求められ、広まっていったことを意味します。投資家としてこの道のりを支援することは、広い意味で社会への貢献につながるのではないでしょうか。それも投資の意義だと思っています」

中小型株は値動きが激しく、特に個人投資家は手を出しづらいイメージもある。それに対するアドバイスとして、「長期投資のスタンスを徹底して、日々の大きな変動に慌てないことが大切です。それらの値動きは短期利益を狙う投資家によるものが中心で、本質的な企業価値とは関連していないケースが多いですから」と田中氏。あわせて複数銘柄に投資し、一銘柄の値動きで大きな影響を受けないようバランスを取ることが大切と言う。

経営者の思考や戦略を分析し、長く大きく育つ銘柄を探していく。田中氏が口にしたこの着眼点は、中小型株と向き合う上で大切なポイントかもしれない。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2025年5月現在の情報です

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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