日本に必要とされる「いい会社」を応援する
「株式投資で社会を良くすることは可能」と言い切る理由、鎌倉投信・五十嵐和人氏は100年先を見据えて運用する
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工業用ネジ大手の「個性価値」に着目して投資
では、「いい会社」とはどのようなものか。鎌倉投信のホームページにはこう書かれている。――「これからの日本に本当に必要とされる会社」、そして「社員とその家族、取引先、地域・自然環境、顧客・消費者、株主を大切にし、持続的で豊かな社会を醸成できる会社になろうと経営努力をしている会社」――
上記を大前提として、投資先の判断では、さらに細かくいくつかの視点で企業を見ていく。その1つが「本業を通じて社会課題を解決する会社、本業を通じて社会に貢献する会社かどうか」ということ。
「課題先進国と言われる日本で必要不可欠な要素であり、投資の観点で考えても、社会課題の解決こそが収益機会であり、そこにリターンの源泉があると思っています」
併せて、その会社が固有の独自性(個性)や優位性、創造性を有しているかという点についても入念に確認する。同社ではこれを「個性価値」と呼んでおり、人財を活かせる会社かどうかという「人」視点、持続的社会を創造する会社かどうかという「共生」視点、日本の巧みな技術・感動的なサービスを提供する会社かどうかという「匠」視点の3つを重視する。
具体的な投資先の例として、五十嵐氏は、京都府綾部市に本社を置く日東精工を挙げる。1938年に同地で創業し、工業用ネジの大手となった同社。自動組立機や計測・検査装置などの事業も手掛けている。
株価チャートを見ると、必ずしも派手に上昇している銘柄ではない。しかし、この会社には確かな個性価値があるという。それは、創業から一貫して、綾部という「地域のための会社」であることだ。
今では海外拠点も持つ日東精工だが、創業のきっかけは、綾部の人々の働く場所を作ることだったという。綾部はもともと養蚕の町で、女性の働き口はあったものの男性はそれがなく困っていた。そこで会社を作ったのが始まりだったと五十嵐氏は話す。今も「綾部のための会社」という意識を持ち続けており、実際に、たくさんの地域の方が従業員として働いているという。
「大切なのは、その意識があるからこそ、この地域のために会社を生き残らせなければならない、成長しなければならないという強い経営の意志を持っていることです。綾部に住む多くの方々の働く場を失くすわけにはいきません。それこそが会社の強さであり、個性価値になります」
地域の人のためにあり続ける。その思いが会社のモチベーションになり、成長の推進力となる。上述した「共生」視点の個性価値を持つ企業の一例だという。
なお、「結い 2101」の投資先は、ほとんどが時価総額5000億円以下の中小型株だ。しかしそれは、大型株に「いい会社がない」ということではない。「大型株は為替の変動や外交政策といったマクロ経済全体のリスク、いわゆるシステマティック・リスク(※)の影響を受けやすいといえます。長く安定的な運用を目指す上では、これらのリスクはなるべく取りたくありません。そういった理由から、大型株は少なくなっています」。
※分散投資でも回避しきれないような、マーケット全体に広がるリスク