完全失業率とは?推移・計算方法や失業率上昇が与える影響を解説

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失業率が上昇する主な要因

失業率が上昇する主な要因は、以下の通りです。

・景気が低迷する
・労働力人口が減少する
・求職者側と求人側の需要と供給にズレが生じる

各要因について、解説します。

景気が低迷する

景気の低迷が、失業率の上昇につながる主な要因のひとつです。

景気が低迷すると、企業が人件費の削減を目的に人員採用を抑制し、失業率が上昇することがあります。例えば、日本における2008年の完全失業率は3.8〜4.1%の間で推移していましたが、リーマンショックをきっかけに、2009年7月には5.4%まで悪化しました。

なお、失業率は遅行指数で実際の景気動向に比べて遅れて変動するため、景気動向と一緒に確認する際には注意が必要です。

労働力人口が減少する

労働力人口の減少も、失業率の上昇につながる要因です。失業率を計算する際は分母に労働力人口を当てはめるため、完全失業者数に変動がない状況で労働力人口が減ると、失業率は高くなります。

完全失業者数が200万で、労働力人口が6,500万人のケースと労働力人口が6,000万人のケースを比較してみましょう。

労働力人口が6,500万人の場合、完全失業率は約3.1%です。それに対し、労働力が6,000万人に減少すると、完全失業率は約3.3%まで増加します。

求職者側と求人側の需要と供給にズレが生じる

求職者側と求人側の間で生じる需要と供給のズレも、失業率の上昇につながることがあります。

求職する人・求人する企業それぞれが存在していたとしても、双方が相手に高い条件を求めていると、なかなか雇用契約にまで至らないことがあるでしょう。求職者は職に就いていない状態で自分に合う条件を求めて求職活動をしていると、その間は完全失業者とみなされるため失業率の増加につながります。

なお、求職者と求人側の需要と供給の関係を示した指標のひとつが、有効求人倍率です。有効求人倍率について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

有効求人倍率とは厚生労働省が発表する指標!計算をわかりやすく解説

失業率の上昇が与える影響

失業率の上昇が与える主な影響は、以下の通りです。

・購買力低下につながる
・国・地方自治体の税収が減少する

それぞれ解説します。

購買力低下につながる

失業率が上昇することで、国内の購買力低下につながることがあります。購買力とは、モノやサービスを購入できる力のことです。

失業者は賃金を得られない分、使えるお金が減り購買力が低下する可能性があります。失業率の上昇により失業者が増えると、国内全体の購買力が低下してさらなる景気の低迷にもつながりかねません。

関連して、生活が苦しくなる人が増えることも失業率の上昇による影響です。

国・地方自治体の税収が減少する

国や地方自治体の税収が減少することも、失業率の上昇が与える影響です。

失業者は給与所得が発生しない分、その間に国や地方自治体が徴収する所得税・住民税が減ります。また、失業者の購買力が低下することで、徴収する消費税も減るでしょう。税収の減少が続くと、国や地方自治体の財政が悪化します。

さらに、賃金額を元に算出した社会保険料の収入が減ることも失業率上昇が与える影響です。

国や自治体による失業率改善政策の例

国や自治体では、失業率を改善するために様々な政策を立てています。失業率改善に関する政策の具体例は、以下の通りです。

・事業者に助成金を交付する
・雇用機会を創出する
・求職者が訓練する機会を整える

それぞれ解説します。

事業者に助成金を交付する

事業者に雇用維持を促すための助成金を交付し、失業率改善を図ることがあります。

具体例のひとつが、経済上の理由で事業活動を縮小せざるを得ない事業主に対して、雇用維持を図るための休業や教育訓練などにかかる費用を助成する「雇用調整助成金」です。雇用保険の適用事業主であることや、売上高の減少が一定基準を超えていることなどの要件を満たす場合に、利用できます。

雇用機会を創出する

雇用機会を創出することも、失業率を改善するための政策のひとつです。

国や地方自治体自身が雇用を増やしたり、地元の企業に仕事を新たに委託したりすることで、雇用の創出につなげることがあります。以前は不景気が訪れた際に、公共事業を増やすことで雇用の安定化を促すケースもありました。

また、地方自治体が地元に企業を誘致することも、失業率の改善につながるでしょう。

求職者が訓練する機会を整える

求職者が職業訓練する機会を整えることも、失業率の改善に寄与する政策の例です。求人側から必要とされているスキルや知識を求職者側が身につけていれば、雇用につながりやすくなります。

例えば、厚生労働省は求職者の動向や今後人材が必要とされる分野などを把握したうえで、毎年度全国職業訓練実施計画を策定しています。

失業率とは労働力人口のうち失業者の占める割合

失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合のことです。景気が低迷したり、求職者側と求人側の間で需要と供給にズレが生じたりすると、失業率が上昇する可能性があります。

失業率が上昇すると、購買力の低下や税収の減少などにもつながりかねません。今後は、景気や社会情勢を見極める材料として、失業率にも注目してみましょう。

参考:総務省統計局「なるほど統計学園 13統計用語辞典」
参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)2月分結果」
参考:総務省統計局「世界の統計2025 第12章 労働・賃金」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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